59 ホームセキュリティーありました
「ケント、アレか!?」
「アレだ! アレなんだが・・・アンデッドってあんなに力があるのか?」
「いえ、ゾンビは人より力がありますが、あんな壁は壊せないですよ。それに体は生前より脆いので、あんなことをすれば手だろうと、足だろうと潰れて無くなっているはずです。他のアンデッドにしても、素手であれほどの破壊をして無傷とかありえません」
だよな、吸血鬼にしてもあれほどの力は無いだろうし、グールやワイトなんかも対物攻撃力はあそこまで無いはずだ。
「お館様、鑑定してください」
あ、そうか、鑑定すればいいんだ。
「分かった、鑑定、目の前の敵」
【鑑定:目の前の敵】
名前 :セーコム社 アルソ式・セント1型ニュータイプ
種族 :魔道ゴーレム
年齢 :515(稼働年数)
職業 :自宅警備ユニット
レベル:-
耐久 :300 /500
魔力 :50/400
筋力 :500/800
敏捷 :15/40
知力 :25/35
状態 :経年劣化により耐久低下
スキル:
魔法 :熱光線(魔力ビーム)・電撃(要接触)
ギフト:
所持品:
備考 :魔力低下により省エネモードで稼働中
「アンデッドじゃなくてゴーレムだ。ここの警備をしていたっぽい。500年前から稼動していて燃料不足と経年劣化で、多少性能が落ちているが、それでも力はモーブの3倍近くある」
鑑定、ゴーレムのマスター変更方法
ゴーレムのマスター変更方法=内部の魔石を抜き取り再起動。
無理――――
「弱点は無いんですか!」
「弱点は・・・俺たちより足が遅いのと、魔力が残り少なくて省エネモードになってるから、本来の力が出せないぐらいだ。だから魔法はあまり撃たないと思う」
「後半は弱点じゃないですが、まあ悪い情報でもないですね、それで有効な攻撃は!?」
「知らん! 俺だって、何でも分かるわけないだろ、石壁砕くほど頑丈なら生半可な攻撃はまず効かない。ユニットハウスに入って弓を撃つ手もあるが、その程度の攻撃で倒せるとは思えないんだよ」
ゴーレムがゆっくりと近寄ってくる様子を睨みながら、後方へと下がり同時に対策を話し合う。
「倒せないなら、下に落としてはどうです?」
「下ってさっき塞いだ穴か?」
「それなら下に引っ張って、他の魔物にぶつけるのはどうですか」
「どうかな、あいつはここの警備だから、ここから出るかどうか分からないな」
ゴーレムをトレインして魔物にぶつけるのは悪くない。魔力を消費させられるかもしれないし、逃げるための時間稼ぎにはなるだろう。しかし、地下洞窟はこの遺跡の一部では無いから、この遺跡から出た侵入者に対して、追撃をしてまで持ち場を離れるだろうか。ちなみに今居る地下遺跡も中世ヨーロッパ的に言えばダンジョンである。元々、ダンジョンとは君主のための最終防衛施設を指す言葉であり、その防衛の都合窓の無い堅牢な施設だったが、君主が城に住むようになると、後に地下牢や地下施設をさす言葉になった。魔物が出なくても宝が無くても、古いヨーロッパ的には地下施設はダンジョンといえる。どうでも良いって? まあちょっとしたトリビアだよ。
「いっそ俺たちが、地下洞窟に行こう。下に行って追ってくればよし、追ってこなければ下の魔物をトレインしてこよう」
急いで隣の部屋へ行き、蓋にしたユニットハウスをずらして、室内に帰還用ゲートを設置して、地下洞窟の中へと向う。地下洞窟の入り口は遺跡から落ちた床材や泥が盛ってあり、階段のようになっていた。中は意外と広く通路幅は3m程だろうか。上の遺跡よりも明らかに広いようだ。素性は分からないが、やはり前世の創作物におけるダンジョンと同種なのだろうか。
それから数分が過ぎたが、ゴーレムが追ってくる様子は無かった。ヨルンにそっと戻って様子をみに行かせると、遺跡の穴前に陣取って、俺たちが出てくるのを待っているようだと言う。近寄ると石を投げられ少しあせったそうだが、それでも降りてくることは無かった。
「やはり、ゴーレムの警備範囲は上の遺跡限定のようだな。それと、地下へは投石をしたが、遺跡内では俺の出した石壁は壊しても、その後の投石はなかった。これは、もしかしたら遺跡を壊しかねない行為を、自粛しているのかもしれない」
「魔法を撃てるのにか」
「たぶんその辺の攻撃判断は、マスターの指示で行われるんだろう。だから今は近接攻撃以外してこないと思う。シデンは先行して魔物が居たら釣ってきてくれ、種類は何でもいい。黒足は後方の出口に向けて大型ゲート3番を起動して待機していてくれ」
「わかりました」
「はい」
やがて、シデンが戻ってくると、数引きのゴブリンを釣ってきたと言う。
「前方から来る魔物を黒足のゲートに送るからな。なるべく出口付近に展開できるようにしてくれ」
「はい」
「・・・・よし、ゴブリンが走って来たから、ゲートを展開する。3、2、1、ゲートオープン」
走ってきたゴブリンは、その勢いのままにゲートに飛び込み消え、数瞬後に後方で物音とゴブリンの叫び声が聞こえてきた。
「うまく行ったな、改めてスマホを設置して、討ちもらしが後方から来ないように、ユニットハウスで塞いでおこう」
その後は、前を警戒しながら、ダンジョン内を進む。ダンジョンは泥がむき出しになっているが、通路の断面形状は地球のトンネルのように、球状の一部が平らになったような形をしている。丸ではないという事は、アリやワームといった生物が掘った穴ではないと考えて良いのだろう。しかし、そうなるとここには地球の創作物にあったような、ダンジョンコアやダンジョンマスターとやらが、存在するのだろうか?
「なあ、ヨルンとシデンは、ダンジョンについて何か知っているか」
ダンジョンを奥へと進みながらこの世界のダンジョンについて聞いてみる。創作物によっては、ダンジョンの中に外の世界のような空間がある場合もあるし、昆虫が掘ったアリの巣のようなものもある。この世界で周知されているダンジョンが、一体どんなものなのか気になるところだ。
「いえ、僕はダンジョンについては、何も分かりません。好奇心旺盛なリリパットとはいっても、ダンジョン探索をしようなんていうのは、僕の父親ぐらいですから」
「俺は噂程度には聞いたことがありますよ。ダンジョンは“昔の魔法師が作った魔法や魔法陣の暴走事故で発生した、特殊な魔道具だという説があり、この説は魔法王国時代に定説とされていた”という噂話です。もちろん噂の真偽は不明です。昔のというのも、500年前の人たちにとっての昔なので、事実だとしてもその原因となった事故がいつの話なのか分かりません」
昔の噂という噂か、なんともいい加減だな・・・。しかし、地球でも古代シュメール人は“我々の知識は遠い星ニビルの住人である神から与えられた”という記録と多く神の像を残している。ここまでが事実か分からない過去の人類が信じていた部分で、発見された都市の址や彫刻など、その後の人類と比べても隔絶した高度な文明であったと、考えるに足る遺物がのこされていた事から、何らかの高度文明の影響を受けていたこともありえるというのが、後の推論だな。つまり、人類は宇宙人によって開発された生物説だ。進化論的にもサル的生物が、何故人間への進化をしたのかは分かっていないし、その進化の過程は一足飛びで、あまりにも不自然と主張する学者も一定数居るらしい。かの漫画の人類はゾア○イド(生物兵器)素体説は案外真実かもしれない。・・・・大分脱線したな、まあこの世界は進化が急すぎるので、例え人類が全て滅びても、翌日には新たな人類が誕生している可能性があるから、ダンジョンが先人類による産物というのも、ありえるかもしれない。
「この地下洞窟をダンジョンとした場合、さっき入ってきた場所以外に出入り口が無くても、ダンジョンに魔物が増える事ってありえるのか」
「ありえますね、魔物は交配によって増える以外に、何らかの条件下では自然発生すると考えられています。閉ざされた建物内にゴブリンが居たという話もあり、例え全て駆除してもその“何らかの条件”が満たされていれば、何れまた増えるでしょう」
「おい、前方から来るぞ」
モーブの警告に、俺は無言でゲートを展開する。そして、現れたゴブリンをゲートで飲み込みながら話を続ける。
「・・・その自然発生した魔物は大人と子供のどっちだ」
「え、そこまでは知りませんが、赤子じゃ死んでしまうでしょうから、それなりに育っているんじゃないですかね」
「育ったゴブリンが生じるのか?それは本当に生まれているのか?」
「どういうことです」
「つまりだ、見方によっては“俺と俺の拠点はある日突然森に生じた”と言えないか?本能だけで生きる生物以外は、成体ならそれ相応の知識も必要だろ。俺としてはそれが自然発生するよりは他の理由の方が理解できる」
「そんな・・・・」
ん?黒足が目を見開いて驚愕している・・・どうしたんだ?
「・・・お館様は・・・お館様は魔物だったんですか!」
「ちげーよ!!」
そっちの発想は思いもしなかった。
「そうじゃなくて、俺が言いたいのは魔物もどこからか、転移して来ているんじゃないかって事だよ」
走り回るネズミをゲートに飲み込ませながら、黒足の発想を否定する。
「冗談です。しかし転移ですか、そうなるとどこから来ているのでしょう」
「(冗談かよ!) そうだな、異世界ではなく、他の星やこの星の他の場所から、転移してるんだろうな」
「ケント、あれはちょっと戦ってみたい。一匹もらうぞ」
モーブが金テコを握って、突撃していく。前方にはやや不恰好な人型の石像。ストーンゴーレムかガーゴイルのようなもんか。
「ああいうのなら、自然発生もありえそうだけど、生き物はなあ・・・それとも成体に適当な知識を与えて生み出すのか? ゴブリンが馬鹿とはいえ、個体差はあるし武器を使う奴や投石するやつも居る。それも与えられた知識や本能とは考えにくい」
「ではまさか神様が?」
「いや、転移の原因が昔の魔法師なんじゃないか。どこかに魔法陣があって、そこに入ると条件の合う場所に飛ばされるとか、或いはどこかに居る条件に合う魔物を召喚するとかそんな感じでさ」
「なるほど、ありそうですね・・・あ、モーブさんそれ、倒せそうですか」
「・・・・少し硬いな。しかし、これが倒せないようじゃさっきの奴なんて全く歯が立たないだろ」
モーブが石像型魔物を金テコで殴るたびに、辺りにがっこんがっこん鳴り響いているが、石像魔物にダメージが入っている様子が無い。むしろ金テコが曲がっているように見える。
「モーブ、これを使え」
言って、俺はミスリルコーティングの剣をモーブに投げる。今、俺が使っている十字槍もミスリルコーティングだが、同じように作ったいくつかの武器の一つだ。まあ、作ったのは俺じゃなくてドルトンだけどな。ミスリルは銀に魔力を通して作るが、半溶解状態のミスリルは鍛造できず鋳造になるし、ミスリルとして鋳造された刃物を研ぐには魔力を通しながら研ぐ必要があり、その難易度は単に溶かして鋳造するのとは比較にならない。結果、包丁やナイフ、日本刀のような鋭い刃先を持つ刃物は作れず、なんとなく尖った形状という剣になってしまった。それでも、ミスリルは鋼より硬いので、力さえあれば大概のものは切れる。ドルトンは○| ̄|_の姿勢でしばらく固まっていたが、俺的には“神がかった技術のドワーフなんて居ないんや”と認識を改めることになった。
次回9月29日20時です




