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58 地下施設に佇むモノ

「ケントは特別強いって訳じゃないからな。むしろ魔法は使えないし、肉体的にも一般的な人族よりましな程度だ。だが、あの手この手と次々出してくれる戦術は、身体能力を補って余りある。ひどい言い方をすれば“小細工を弄して相手を嵌める”という戦い方がうまいとも言える。おかげで、俺たちは無理な戦いをしなくて済んでいるから、殆ど怪我も無く安心して戦えるぞ」


話し、流れてなかった。それ褒めてんだろうけど、なんか悲しくなるぞ。


「いいから先に進むぞ」


ユニットハウスと石壁を送還し、部屋を出る。通路はゴブや他の魔物が居るということも無く、しんと静まり返っている。前回この遺跡に入った時の経路を思い出しながら、未踏エリアを確認していく。


「あ、ちょっと待ってください。そこの壁についている金物は燭台しょくだいじゃないですか?以前探索した古城で同じようなものを見たことがあります。魔石があれば明るくなるかも知れませんよ」


ヨルンが通路の壁にある小皿がついた金物を、指差して説明してくれる。見れば5m間隔位で通路に金物が固定されている。言われてみれば、燭台っぽいな。しかし燭台って蝋燭や油を使うもんじゃないのか。


「燭台って蝋燭を乗せるんじゃないのか? まあ、確認してみるか」


脚立を出して、小皿を覗き込む。あ、小皿の上面に魔法陣が描いてある。確かに照明用魔道具っぽいな。この魔法陣は、当然記録だな。


「小皿に魔法陣が描いてある、ヨルンの予想通りのようだな。小さな魔石を乗せてみる」


小皿に小指の爪程の魔石を乗せると燭台が光りだした。明るさは60Wの電球ぐらいかな。色は電球色よりやや白い温白色という感じだ。


「魔石の大きさによって光る時間が変わりますが、どの位の魔石を乗せましたか」

「俺の、小指の爪位だよ」

「それなら二、三日ってところですかね。今回の探索では十分な大きさでしょう」

「ヨルンが以前探索した古城というのは遠いのか」

「ええ、この森からだと片道、4日と言うところですかね」


現代日本の小学生でも、一日20km程は歩けるので、道の悪さや装備品重量を加味しても、最低20~30kmは歩けるだろうから、100km位は離れているということかな。興味はあるが飛空船が出来るまでは行けないか。


その後階段を見つけ下の階に降りる。またも狭い通路が延びている。通路幅は2m程かな。二人並んで歩くには問題ないが、近接で戦うとなると敵の位置によってはまた戦いにくくなる。


「また狭いな・・・まあ、剣もあるから今回は少し楽か」

「天然洞窟や見通しが悪い場所ならば、剣を持つべきですが、直線通路なら接敵する前に、弓で数を減らしたほうが楽ですよ」


燭台に魔石を設置しながら進んでいく。

地下三階はまっすぐ通路が続いているが扉は無く、30m程で丁字路に突き当たり左右に分かれている。右の通路を覗き込むと向って右の壁が崩れ、穴が開いているが先へと進む通路は、崩れた天井や壁で塞がっている。左の通路はしばらく進むと再び左に折れ曲がっている。途中に扉の類は無いようだ。


「右から調べよう。通路にはバリケードを設置しておく」

「中から物音はしません」

「入ってみよう。既に光が中から見えているだろうから、もし中に何かいたら、見つかっていると思って行くぞ」


そっと中に入ると、ここもごちゃごちゃとした家具の残骸が転がっているが、魔物の姿は見えない。


「特に危険は無いか?」

「いや、待ってください。家具の残骸が左右に避けてあって、通路が作ってありますし、床に無数の足跡も残っています。ここは何か頻繁に出入りしているようですよ」


そっと奥へと歩みを進めれば、室内の床に大きな穴が開いている。通路や足跡もそこへと向っているようだ。


「下の階とつながっているのかな」

「今は物音も臭いもありません」


そろりそろりと近寄って穴を覗き込むと、穴の先は人工物ではなく、泥がむき出しになった通路になっている。天然洞窟か巨大な蟻の巣のようだ。もしかしてここがシュテンの言っていた天然洞窟だろうか。


「どうする?」

「ここは一旦塞いで別の道を調べませんか」

「そうだな、他の道に魔物がいた場合、挟み撃ちされる事になるかもしれない」

「小屋で塞いでおけば出てこられないだろう」

「そうだな」


穴を塞ぎ、部屋を調べる。部屋の中は壊れたテーブルや椅子などが転がっている、それは今までの部屋となんら変わらない。


「特に何も無いですかね」

「そうだな・・・まてよ、この部屋はどこが入り口なんだ」

「その崩れた所では?」

「扉は見あたら無いぞ、壁の崩れた部分もそう大きく無いし、見る限りこの部屋に入る扉が無い」

「隠し扉か?」

「転移なら出るための魔法陣があるそうだけど、何も無いな」

「ならば、どこかの石を押すと壁が上がるとか、壁がぐるっと回転するとか、そういう隠し扉があるんじゃないか?」

「そんな仕掛けがあるものなのか?」

「いや、俺のいた世界の物語だとそんな仕掛けがある」

「この石壁が動くのか?そんな仕掛けをどうやって壁に仕込んでいるんだ。それなら魔法なり魔道具を使うんじゃないか」

「罠も無いような、この施設にそんな物があるとは思えませんね」

「石壁にどうやって仕込んでるんです?石壁が回転したら崩れませんか」

「ドワーフを助けに行ったスプリガンの棲家も魔道具だったぞ」


むう。某バイオならそんな、わけの分からない仕掛けも普通にあるが・・・ここじゃ、そんな仕掛けより魔法の方が現実的って、地球の常識は異世界の非常識なのか。


「まあ、もうひとつの通路を言ってみようぜ」


戻って通路を進み、角を曲がると30m程で行き止まりになっている。


「これどっかに入り口あるよな」

「鑑定すれば分かるんじゃないか」


鑑定か、まあそうかもしれないけど、なんか謎解きを安易に攻略しているようだな。


「どこか、風が通る隙間とか無いか」

「部屋に吸気用の穴があれば風が流れるかもな」


むうう・・・・・鑑定、石壁

【鑑定:石壁】

石壁=石で作られた壁。

・・・・・つかえねえ!

過去に無い無駄でつまらない回答だ。

くっそ、鑑定、鑑定、鑑定、鑑定・・・・隠し扉=押すと開く


!!


「あったぞ!・・・・・・ここだ、この壁を押してくれ」

「本当にあったのか?」

「あったよ、ここ、この辺りが扉でここの石を、押しながら、この辺りをこう押すとほら、こうやって中に向って壁が開く」


皆が懐疑的な視線を向けてくる中、俺が壁を押すとその部分がするっと中に動いて入り口が出来た。

振り返って皆を見れば少々バツの悪そうな顔をしている。


「ふ。どうだ、言った通りだろう」

「あ、ああ、すまなかった。俺たちが悪かった。分かったからドヤ顔やめろ」

「お館様の言うとおりでした」

「すいませんでした」


俺は、ふんふんふ~んと、よく分からない鼻歌を歌いつつ隠し部屋に入る。室内は先程の部屋と略同じ大きさだな。床に足跡は無く穴も開いていない。

そして、LEDライトに照らされたその室内には、襤褸切れの様なボロボロの服を着た一人の女性が立っていて、その目が動いて俺に向けられた。

女性を見た瞬間俺の思考は停止し、おそらく瞬きも何秒か止まっていたのではないかと思う。そして、視線があった瞬間我に返って次に俺がした行動は・・・・叫ぶことだった。


「うぎゃ~~~~~~~~~~~~」

「なんだ!?」

「なんです?」

「「お館様!」」

「公王様!」

「も、戻れ、すぐ戻れ」


そして、後ろにいたモーブを押し出すように部屋の外に出ると、すぐに扉を閉めようとするが、取っ手がないので扉を引けない。


「しょ、召喚、石壁、召喚石壁」

「なんだ、何を見た」

「め、目が合った・・・」

「魔物ですか?それにしては、随分驚かれて・・・」

「違う、いや違わないのか? かくボロボロの服を着た人のような何かが、部屋の中に立っていた。そして俺に気がついて顔を向け、目を動かして視線が合った。あれはきっとゾンビだ」


生きた魔物や妖精のような生物はまだ良いが、アンデッドのそれも元人間とか正直駄目だ。死体が、のそっと起き上がったり歩いてきたりとか、居ると分かっていればまだ心の準備が出来るかもしれないけど、いきなり目撃して視線が合うとか想像の埒外だよ。


ゴン


「だから、お前が最初に行くなと、いつも言っているだろうが。そんな風に入ったら敵が居て襲われましたじゃ、俺たちも守りきれないんだぞ」


「す、すまない以後気をつける」


ゴンゴン


「それで、中にアンデットが居るのか、兎も角もう一度中に入って」


ゴンゴンゴンゴン


「さっきから聞こえる、このゴンゴンゴンゴンって音は何だ」

「お館様!その石壁が叩かれてませんか」

「え!?」


言われてみれば背中から何やら振動が伝わって・・・・


「あ、石壁にひびが・・・」


嘘だろ!!コンクリート以上の強度を持つ、厚さ200mmのドワーフ製石壁が二枚だぞ。何でひびが入るんだよ。


「撤退! ここからすぐに離れろ」


ゴンゴン、ゴゴゴーーーン。バカン!ガラガラガラ。

俺たちが隠し扉の前から離れた直後、轟音と共に石壁が室内から打ち砕かれ、50cmはあろうかという石の固まりが飛び散る中、隠し部屋から先程の人型の何かが現れ、俺たちに顔を向ける。


そして、ぐぽーんという感じで、その目が赤く光った。



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