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55 豚に真珠、ゴブリンに魔道具

「それなら魔道具が沢山あるのも頷けるな」

「まあ、ここにあるのは危険性の低いものばかりだから、軍関係の施設ではなさそうだな」


他にめぼしいものは無かったので、次の部屋に移動する。先程と同様に室内を確認しながら室内を歩く、ふとシュテンを見ると彼は左上方向を睨みながら、何か思案している様子だ。


「どうしたシュテン?」

「いえ・・・以前来たときにこの辺に場道具らしきものが、色々詰まれていたような気がしたのですが・・・記憶違いなのか持ち出されたのか・・・」

「持ち出されたって、モンスターにか?」

「僕ら集落の者で無い以上、そうなりますね」


おいおい勘弁してくれよ。どんな効果か分からないが折角の魔道具が無くなるのも壊れるのも困るぞ。


「お館様、隣の部屋に何かいるようです。もしかしたら魔道具を盗んだ魔物かもしれません」

「いや、盗んだといっても、俺たちも遺跡荒らしだから同じ立場だぞ。まあゴブリンか何かだろうから行って確認しよう」



「あれが、旧鼠か?」

「そうですね、そして一緒にいるのが、ゴブリンです」

「それは知ってるぞ」

「そして、あの少し大きいのは、ゴブリンロードです」

「何!?・・・鑑定・・・ゴブリンリーダーじゃないか、脅かすなよ」


能力も他のゴブリンと大差ないし、見た目も殆ど同じだ。こっちを見る馬鹿そうな顔も他と大差ない・・・・・!


「見つかったぞ」

「そりゃ、あれだけ大きな声で話してりゃ、ゴブリンだって気がつくだろうよ」


ゴブリンは棍棒・・・いや、椅子の足か? なにやら装飾のある棒を手にこちらを威嚇している。ゴブリンリーダーの持っている棒が一番質素だが、なんか先端に大きな玉が付いている。モーニングスターか?玉が微妙に光ってるし・・・あれ、なんか嫌な予感してきたぞ。


「シュテン、あの玉つきの棒が何か分かるか」

「いえ、あれは見たことがありませんね」


そして、ゴブリンリーダーがモーニングスターもどきを振りかざしながら、仲間に何か叫んでいる。雰囲気的に“お前らやってしまえ”と言っているようだが、モーニングスターの光がやばい感じになってる。


「全員、今すぐ物陰に隠れろ!」


俺が叫んで机の陰にかがむと、俺の叫び声を聞いて、皆も直ぐに動いた。そして、パンと破裂音がしてゴブリンの悲鳴が室内に響く。手榴弾だったのかと思いながら、ゴブリンを確認すると・・・。


「あれ、案外ダメージ低い?」


倒れて呻いているものもいるが、死んだり部位欠損したりしたやつは居ないようだ。

旧鼠は部屋の隅からこちらを伺っている。いつの間に逃げたんだ?素早いだけでなく俺の動きで察して逃げたのか?中々に抜け目無いな。


「今のうちに、ヤルぞ」


ゴブリンをサクッと倒して部屋の隅にいる旧鼠へと向う。旧鼠はナイフのような金属片で切りかかってくるが、構え全く成っていない。はっきり言ってゴブリンの方がましな感じだ。

歯をむいて威嚇してくる旧鼠に、十字槍で袈裟懸けに切りつけるとあっさり倒れた。思ったより手応えが硬かったけど、今ので死んだ? 案外弱いのかな。


「あ~~逃げられましたね。それは分身みたいなものですよ」

「はぁ?」

「よく見てください、血がまったく出ていないでしょう。旧鼠はそれほど強くないんですけど、狡賢いし魔力で自分の複製を作って敵を欺くのが得意なんですよ。ほら、死体に偽装した魔力が霧散して姿が崩れてきましたよ」


見れば旧鼠の姿が崩れ、そこに現れたのは室内にあった襤褸布ぼろきれや、家具の残骸だった。くっそ、ごみ分身てか?なんか腹立つな。


「本物はどこへ行った?」

「もうこの部屋には居ないと思いますよ、姿を隠して移動するのも得意ですし」


忍者なの?妖怪なの?


「普通の獣とは違うということか・・・」

「とりあえず先に進みましょう」

「ちょっと待ってくれ、室内で戦うのには、可燃物が多すぎて松明は危ないから消したほうが良いし、魔物が物陰に隠れると分かりにくいから、広範囲型のランタンを出す。シュテン含めて全員広範囲を使ってくれ」


ライトを変えて再び移動する。広範囲に明かりが漏れると敵に発見されやすいが、こっちも隠れた敵を見つけやすいので、差し引き0と思うことにする。


「そういえば、無くなった物をゴブリンは持っていたか」

「いや、あの爆発したやつ以外、何も持ってなかったな」


爆発した手榴弾っぽい物は、鑑定によれば防犯用の破裂玉というものらしい。魔石を核に鉄粉や鉄くずを周囲に纏わせた玉に、投擲用の柄を取り付けたもので、魔力を込めた後、数度振るとスイッチが入りその何秒か後に玉の外装が飛散する仕組みらしい。鉄粉や鉄くずを数メートル飛ばすだけの物で、暴漢や侵入者などへの威嚇と制圧用に作られたフラッシュバンモドキだろうか。


「隣は少し小さい部屋で、道具類はありません」


言われてついていくと、六畳程の部屋だ。崩れた家具と布団らしき布の残骸が落ちている。仮眠室だろうか?めぼしい物は無いので次に進む。


「テーブルの残骸と椅子の残骸・・・食堂か?」

「厨房が無いから会議室じゃないかな」

「部屋にある物といえば、壊れたテーブルと椅子に壁にかかった額縁か」


家具はことごとく駄目だな、500年で壊れたというより破壊されている感じだから、魔物の仕業だろうか。そん室内には、色あせた絵の入った額縁が一枚残っている。壁にかかった高さは2~1mの間だろうか。うん、この額縁は怪しいな、鑑定・・・。


「この額縁持っていこう。これ魔道具だ」

「どういう物だ、使い方は分かるか」

「TVモニターだな。対になったカメラの映像を映せるらしい」

「なるほど、魔道具だから壊れてなかったのですね」

「・・・あ、またお客さんみたいですよ」


額縁を魔法の袋に入れていると、部屋の外からゲギャゲギャとゴブリンの騒ぎ声が聞こえてきた。


「ここで戦うほうが良いな。シデン釣ってきてくれ」

「はい、ちょっと行ってきます」


部屋を出て行ったシデンがダッシュで戻ってくる。


「ちょっと数が多過ぎました。20匹以上います」

「こっちも6人居るんだから、その位ならどうということも無いだろ」


モーブは部屋に入ってくるゴブリンに向けて、金テコを構える。まあ、この部屋はそこそこ広いので、存分に戦えるだろう。

だが、部屋に入ってきたのはゴブリンではなく火の玉だった。


「うわ」

「なんだ」


モーブは火の玉を避けたが、そのまま飛んで行った火の玉は壁に着弾し、火の粉を撒き散らす。幸いテーブルや椅子の残骸は離れていたため延焼しなかったが、小さな炎はまだくすぶっている。


「これは火の玉を撃ち出す魔道具による攻撃です。あの炎は簡単には消えないので、確実によけてください。踏んでも消えずに靴底が燃えてしまいます」


何!?それは欲しい。魔法の苦手なものが使える魔法武器なら、街の防衛に役立つはずだし、多少壊れていても術式が手に入るはずだ。


「その魔道具はどれだ」

「先端に白い魔石が付いている1m程の杖です。振ると火や水の玉が出るはずです」


ゴブリンの集団に目を向けると、それらしい杖を持ったゴブリンが、1,2,3,4・・・おいおいおい、集団の半数近くが持ってるじゃないか。あれ全部が火の玉を撃ち出したら防ぎ切れやしないぞ


「魔法はまずい、召喚ユニットハウス。全員逃げ込め」


全員がユニットハウスに入ると、ゴブリンは既に全て部屋の中に入っているようだ。


「召喚、ストーンウオール」


かっこよく言ってみたが、ドワーフに作ってもらった単なる石の壁。正確には土から作ったものだが、銭湯作りで試作してもらったものだ。その石壁をゴブリンが入ってきた入り口を塞ぐように召喚し、ハウス用のスマホゲートを起動したら、ユニットハウスを施錠して俺たちは一旦ゲートで脱出する。一時間ほどしたら戻ればいいかな。


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