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40 隠れうなぎ試食会?

うなぎで三話引っ張ってしまった・・・。

うなぎの罠を仕掛けた翌朝、罠につけた紐を手早くたぐって回収する。池から確り離れ、捕まえたのに池ポチャで逃がしましたと言うイベントを封殺し、それぞれバケツに中身をあけて漁の成果を確認する。


「おお、複数入ってる!」


バケツを見れば40cm程のうなぎ(川うなぎ)が2尾出てきた。


「お館様、こっちは凄く大きいのが入ってました」


黒足の声に彼のうなぎを見てみれば、確かにでかい。60cmを超えるだろう。見た目も鑑定も同じ川うなぎなので、別種ではないようだが・・・。


「大物だな、しかし焼くときは小さいのと、別にしたほうがいいな」

「え、何故ですか、大きいと駄目なんですか」

「いや、駄目ではないよ。でも一般的に大きいと皮が厚くなったり、脂肪が多くなったりするから、他のうなぎと分けて調理したほうが、焼き加減とかうまくいくだろ。それに、サイズによって味が変わるかもしれないから、一番おいしいサイズを確認したいじゃないか」

「なるほど、食べ比べるんですね、楽しみが増えました」


日本で獲れる天然もののニホンウナギでも、50cmを超えるものはめったに無い。養殖の場合は、飼育環境によって成長速度が変わるが、おおむね25cm~30cm程度で出荷する。温水プールなどで飼育すると成長は早いが、ある程度まで育てば成長は緩やかになり、以降は育てても飼育環境を維持するためのコストと売値がつりあわなくなる。屋外の自然に近い環境で飼育した場合は出荷までの年数が3年~になり、こちらも長期飼育ではコストがかかりすぎる。天然の60cm超えとなれば、育つのに8年或いは10年以上となるだろう。

うなぎにはオオウナギという種類もあり、こちらは数年で巨大になり60cm以上からが食べごろとなるが、ニホンウナギに比べ、脂肪が少なく皮が硬いため、まずくは無いががっかりな味であり、日本では養殖されていない。西日本の川などでは少数生息しているらしいが、基本的に日本では商材ではなく、市場に出る事は無い。


「このうなぎと言う魚は、捌く直前まで生きていたほうが、良い魚なんだ。死ぬと内臓の傷みが早くて、すぐ臭くなるし当然よく洗って焼かないと、腹を下しかねん。まあ、死んで二時間以上放置したうなぎなら、美味くないと思ったほうがいいかもな。それと体表を覆うヌルヌルや血液には毒があって、これが目に入ったり傷から体に入ったりすると、炎症になりとても危険だ。もちろん食べても駄目だぞ、腹を下すだけではなく痙攣や嘔吐、呼吸困難なども惹き起こすからな」


ウナギの体は前半分にしか臓器が無いので、最初からその部分を捨てる気で半分に切ってしまえば、残りの後ろ半分は臭いが無く、普通に食えるかもしれないけどね。


「ええーーー、そんな危険な魚なんですか」

「うなぎを捌くときは、手に傷が無いかよく確認する。気になるなら店で売っているビニールの手袋をすればいい。そして、うなぎを捌き終えたら、直ぐに手や道具についたヌルヌルと血を洗い流す。うなぎの血は加熱すれば無害になるから、ヌルヌルや生の血が口や目、傷口につかないようにすれば心配は無い」


たまに聞く話で強壮剤になるといって生で内臓を食べる人が居るらしいが、毒以外にも寄生虫の危険があるので生食は止めたほうが良いだろう。



「意外と大変な魚なんですね」

「そうだな、俺の居た世界でも、ぶつ切りや筒切りという大雑把な切り方をして、煮込んだり焼いたりする料理が多かったと思うし、俺の居た国では生きたうなぎを捌くのは、料理屋の料理人が殆どだった。ヌルヌルして調理がしづらいし毒の問題もあってか、家庭で生きたうなぎを調理して食べるというのはあまり一般的ではなかったな」


うなぎは全員合わせて20尾を超えた。黒足たちは、生きたまま持ち帰り、捌いてみたいというので全て生かしたまま持ち帰る。


「料理屋や飲み屋でうなぎを提供したいから、できれば捌ける人が増えるといいんだが・・・ま、それはまた後日だな。後は、小魚の罠だけどそっちはどうかな」


最悪、調理の包丁技術が高い人に、頼むかな。


「こっちも大量ですね。平均5尾弱で総数68尾ですか」

「そうだな、大体10人分位になるかな。これは予定通り生かしたまま持ち帰って、真水で腹をきれいにしてからだな」


車に積んだ大型の桶に小魚を入れ、うなぎのバケツも積み込み、再び罠を仕掛けて街へ戻る。軽バンは四人乗りなので、ハイ・コボルトの一人は自転車で追走しているが、自転車にも随分慣れたようだ。



事務所へ戻り、動画サイトでうなぎの捌き方を見る。


「この方、すごいですね」

「そうだな、他の動画の人と比べて、別格だな」

「しかも、早くて丁寧ですね・・・あれ、この方お館様と同じ苗字ですが」

「ん? いや、俺とは全く関係の無い方だよ、俺の居た国じゃ全員苗字があったから、同じ苗字の人は結構居るさ」


既にDVDなどをみて、地球のことを知っているから、黒足たちは動画を見てもあまり驚かなかったが、一本のうなぎ捌き動画を見て目を見張っている。まあ、俺も同じ気持ちだよ。なんせその方の動画は全く血を出さないでうなぎを捌くのだ。


「このレベルになるには、何年かかるのでしょうね」

「わからないなあ。で、捌けると思うか?」

「まあ、出来はかく捌けるでしょう。ですが、売り物としてはどうでしょうねえ」

「客がうなぎを知らなきゃ売れるだろうが、それをよしとするのは自身を貶めるようだな」

「他の種族の方は知りませんが、コボルトで捌けそうな方を、一人だけ知ってますよ」

「奇遇だな、俺も一人だけ思い当たる人が居る」


「それで、私のところに来たのね」

「はい、肉の加工をされているレオーネさんなら可能かと思いまして」

「あらまあ、私ったら期待されちゃってるのね。良いわ義息と甥っ子の頼みですもの、その動画というのを見せてもらえるかしら」



「凄いわね、こちらの方が捌くとうなぎから血が出ないのね、内臓に一切傷をつけなければ良いのね」


動画を見終えたレオーネさんが感想を漏らす。


「いいわ、何匹か失敗すると思うけど、いいかしら」

「失敗といっても、多少形が崩れるだけですよね、それならそれで問題の無い食べ方をしますよ」

「わかったわ、やってみる。でも、とりあえず5匹でいいわ、後はケント君が処理しちゃって」

「え、俺がですか。俺捌けませんよ」

「包丁じゃなくて魔法みたいな力で何とかできるでしょ」

「いや、やってみないとわかりませんが」

「じゃあ、やってみて、はい」


ダン

音と共にうなぎの首が切り落とされる。いきなりだね、この人は。


「えっと、資金化」


目前に擬似モニターが展開され、うなぎの情報が表示される。

変換対象:川うなぎ

魚肉:状態D3級(内臓含む)

備考:骨があり食べにくい。

=600G

・・・・いや、それ、筒切りですよね、そうじゃなくさっき見た動画みたいに捌いた状態は無理ですか?

ブイーンという音と共に画面の表示が更新される。

変換対象:川うなぎ

魚肉:状態A5級(キモ付)

備考:背開きになって骨が全部切除されている。

=1200G


そうそれで、お願いします。

目の前のうなぎが光り、動画で見たような背開きの切り身が出現する。


「あら、きれいな仕上がりね。でもなんで内臓や取り除いた骨や頭までがあるのかしら、しかも何か包丁入れてあるわね」

「たぶん肝吸いや肝焼きのためですね。肝というのは普通肝臓を指すんですけど、うなぎの場合内臓全てで肝とよんでますね。ただ、胆嚢や、胃や腸の中のものは取ったほうがいいという判断でしょうか、洗ったようにきれいですし。骨は焼いて食べるんです、他の部位も食べるためですね。・・・頭はちょっと手順が違うんですが、食べられます」


関東では捌いた時に頭を落とすが、関西では頭をつけたまま焼いて後から落とすらしい。大阪ではこの焼いた頭をなべに入れ、出汁をとるのに利用しているとか。

まあ折角だし頭だけ焼いてスープの出汁にしてみよう。


「じゃあ、ある程度持って行っちゃっていいわ、残りは捌いてみるわ。でもこれどうやって食べるのかしら」

「一度焼いて蒸して、たれをつけてまた炭火で焼くんですよ。今工事している飲み屋がまもなく完成なので、その時にイベントにして皆で食べましょうか、それまでには数も増えますし。捌いたら送還して保存しておきますよ」

「いいわね、でも皆でといっても焼き方が分からないわ」

「では、明日の朝池から上げたら何匹か練習で焼いてみますか。ついでに肉も少し焼きますか」

「そう、ありがとう。必要なお肉は言ってくれれば用意しておくわ」

「それではですね・・・・」


俺は必要な肉の部位を伝え、最後に明日の事は内密にとお願いし、レオーネさんと別れた。



「そういうわけで黒足、明日は極秘でうなぎの蒲焼練習会だ」

「はい。しかし、何故極秘なんです?」

「それはな、いきなり街中でうなぎを焼くと、その匂いで街中大騒ぎになるからだ」

「はぁ・・・」


む、こやつ蒲焼テロの危険を欠片も理解していないな。


「とにかく秘密だ、手伝いを頼むので俺はレオノールを連れて行くが、お前は部下の三人だけ連れてきてくれ。後でみんな食べられるんだから、設営にかかわる少数だけだからな、余計に人数増やすなよ」

「分かりました」


そして、キャンプ用品の炭台や炭を追加で商品化し、あわせてトングや皿などの数も確認しておく。この辺りは家から持参してもらうのもいいだろう。



池について二時間程。誰も居ない早朝、昨日話した通りのメンバーで池にやってきて再びうなぎと小魚を回収し、炭をおこしコンロと蒸し器を用意してレオーネさんが捌き終えるのを待つ。


「随分うまくなられましたね」

「そうかしら?まだ、血が出ないように切るのは成功してないのだけど」

「いや、それが簡単にできてはプロの立場は無いですよ」


捌いてもらったものを焼く。ここからは俺の作業だ。


「うなぎを皮の方から焼き、次に身を焼く。皮は火を弱めにして焼かないと皮が縮んでしまうので注意が必要らしい。次に、焼いたうなぎを蒸し器にかける。蒸時間は大きさによって違うので一律ではないが、15分目安に様子を見て、やわらかくなっていれば、たれをつけて本焼きになる。本焼きは、先ずたれにつけて火にかけ裏返しながら表面が焼けてきたら、再びたれにつけ、更に様子を見て三度目のたれをつける。この辺りの感覚は熟練者じゃないと分からないな」


俺は鑑定さんで、たれをつけるタイミングを聞いて焼いている。鑑定の神様?ありがとうございます。


顔を上げ、皆を見渡すとずらっと並んだ瞳がうなぎを凝視していた・・・なんで人数が倍に増えてるんだ。


「この匂いは暴力的ね」

「確かにこれは、街で焼いたら大騒ぎです」

「いやあ、魚を獲ろうと思ってうけですか、孫たちと仕掛けにきたら凄くいい匂いがして、驚きました」

「漁に来たんですけど、皆さん同様匂いに釣られて・・・」

「私も漁師に付き合ってうけを仕掛けに来たんですけど、早起きはするものですね」


「あ~皆さん・・・食べますよね。あまり量は無いですが、用意するんで食べていってください」


増えていたメンバーは、先日釣りをした面子に、クシミールさんの娘で兄妹の母親の・・・あ、名前が出てこない、戦争直後だったしなあ・・・後で誰かにこっそり聞こう。


「近いうちに、飲み屋で出す料理の試食会をするつもりなんだけど、ここに居る面子で屋外会場の設営指揮をしてくれませんか、この焼き台は俺が用意しますんで、火熾しや食材の準備をしていただければ、後は勝手に皆焼いて食べるでしょうから」

「はい、言って下されば何でも協力しますよ」

「いいわよ・・・このお肉の串焼きもおいしいわね」

「ありがとうございます。店が完成してからなので二日後位で考えてます」

「たれ付の焼肉も、以前食べたものよりおいしいです。鉄板と網の違いですか?それとも炭ですか」

「炭は食材の表面だけでなく内側から熱を伝える効果があるんだ。だから鉄板とは熱の伝わり方が違うから焼け方が違ってくるんだよ」

「そういえば、小魚はいつ料理しますか」


小魚か・・・あれは飲み屋でも出せるけど一度に全部出してもしょうがないよな。


「飲み屋の後に、機会を設けるよ。店に観賞魚の餌が売ってるから、遅くなるようなら餌をやってもいいよ」

「小魚の食べ方ですか、わしらは煮つけか焼いて食おうかと思っとりましたが、違う食べ方があるのですか」

「後で一緒に料理しましょう。おかずにも肴にもなりますよ」


食堂用のメニューには、いくつか人間の町から買いたい物があるから、それを入手してからだな。


宿に食堂、飲み屋に商店街、対外的に街を開く街開きまでもう一分張りだな。



小魚は少し間をおいてからになります。


次回8月23日20時予定です

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