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38 魚釣り

この話は、35話の酒場と名物料理の数日前の出来事となります。


話は数日前にさかのぼる。


「例の自転車ができたんだが、見てくれんか」


宿や食堂を作っていたある日の朝、ドルトンがやってきて俺に自転車の完成を、告げた。


「もうできたのか、相変わらず早いな。水車の方はどうだ」

「水車は水路本線から、畑や住宅に供給するための物が完成間際じゃな」

「畑の水路は掘り終わってるよな、水車が完成したら水を送ってみてくれ」


池から引いてきた水路は、流れが緩やかで水面を地面から50cm以上低く設計してあるから、居住区の生活水(洗濯・園芸用)や畑用に配水する浅い用水路へは、汲み上げが必要になる。まあ、これについては稲作をしているわけではないので、将来的には地中配管による上水道が完備されれば、給水路から排水路に変える予定だ。

現在は、水を入れた貯水タンクを住宅街に設置しているが、店から離れ過ぎたり個人の家に設置すると、売却判定がなされ毎朝の商品補充がされなくなってしまう。対応策として、店の能力が及ぶ位置に貯水タンクを大量に設置し、住民は必要に応じてポリタンクなどで家庭に持ち帰っている。しかし、それでも川から桶で汲んでいたころを思えば、格段に便利で楽らしい。


まあ、それはともかく、自転車の件だ。


「木材の継ぎ目が隙間無く確りしている、流石だな」

「いや、ワシは鍛治が本職で木工は自宅を作った程度なんじゃが。・・・なあ、これは自転車でいいんじゃよな」

「作っておいて、いまさら何を言うんだ。というか、誰でも家が建てられるって、大工必要ねえじゃねえか。まああれだ、これは何処からどう見ても正真正銘、水陸両用自転車だ、聞かなくても分かっているだろう」

「や、やはりそうじゃったか・・・」


あれ、なんか妙にへこんでいる。どういうことだろうか。


「どうした、何かまずかったのか」

「新しい自転車じゃし、試運転にはワシも同行するつもりじゃった・・・じゃからワシが作ったんじゃが、正直ワシは水が苦手じゃ。それに水桶は作った事があるが、船なんぞ作ったことが無いからな・・・正直浮かぶかすらわからん・・・」


おう、ずいぶん弱気だな。水が苦手なことを、軽くカミングアウトできるほど、自転車に乗れないことが残念なのか。


「つまり、新しい自転車に乗れると思ったら、実態は船だと気がついてへこんでいたという事か。別に無理につき合わせる気は無いから、大丈夫だぞ。気になることがあったら後で報告するから」

「すまんな、自分が水の上に浮かぶと思うと・・・何故か膝が震えるんじゃ」

「そ、そうか、まあそう気を落とすなよ。きっと種族特性的な越えられない何かなんじゃないか」

「そうじゃろうか」

「ああ、きっとな」

「じゃあ、おれはレオノールでも誘っていってくるわ」

「浸水には十分注意するんじゃぞ」

「そう心配するな。ライフジャケットを着るから最悪でも俺は水に浮くさ」


俺はドルトンと別れて水路へ向かいながら電話でレオノールを呼び出し、池に向かうことを説明する。二人で水路へと向かうが、俺は自転車に乗りレオノールは歩きだ。この自転車は車体の下に車軸があるのではなく、車軸に車体が吊られている形なので、陸上では車軸の負担が大きいため、一人しか乗れない。


「大丈夫そうだな・・・じゃあ乗ってくれ」


水路進入用のスロープから水路に入り、水密性を確認する。ドルトンは自信が無いようなことを言っていたが、浸水も無いようなのでレオノールを乗せ、水路を池へと進む。


「側面の水車の様な車輪で水の上を進めるんですね」

「外輪船という船なんだ、あえて自転車のように陸を走れるようにしたのは、車両には結界がつくはずだからだよ」


この水陸両用自転車は、平底の和船に外輪を付けた形になっていて、ペダルをこぐことで、外輪を回して推進力を得る構造になっている。まず平底にした理由は、竜骨と助骨からなる西洋船の構造を図面におこして説明することができなかったのと、和船の構造図をネットで見つけたからだ。そして外輪船の理由はスクリューが構造的に難しかったのと、外輪に車輪機能を持たせ地上を走行できるようにすることで、車両認定され結界が付与されるからだ。外輪である前輪が船体中央よりやや前についていて、運転手は低い位置に座り、足を前方に出す形でペダルをこぐ。舵については丁字ハンドルの下部から後部車輪に向け、座席の下に二本のシャフトを配し(Ⅱのような形)更に舵との接続部分で、シャフトをクロス(X)させたパーツを挟んで、ハンドルと舵の向を逆転させ、向いたい方向へ舵をきるようにしている。フロントステアリングの車が、前輪を左に向ければ左に曲がるが、後輪ステアリングでは右に曲がるのと同じだ。また、船の舵を前方に取り付けた場合、船の動きが非常に不安定になるため、ステアリングを後輪とし、スポーク部分をふさいで板状にして、簡易な舵としている。


「おお、結構いい感じで水路をさかのぼれるな、これなら川でも使えるかもしれない」


障害物の回避などで、細かい操船が必要な時に使うための、オールも常備しているので、船の前部で漕いでもらうこともできる。


「船で、ゆれると船酔いといって、酒にひどく酔ったような、気分が悪い状態になることがあるんだけど、レオノールは気分が悪くなったりしていないか」

「今のところなんともありませんが、そんなに気持ち悪くなるのですか」

「うん、人によるけどね。ゆれるのが駄目な人はすぐ気分が悪くなって嘔吐したりするけど、逆に平気な人は全然気にならないらしいよ。そういえば車に乗っても誰も気持ち悪くならないな、皆揺れに強いのかな」


やがて、池へと到着するが・・・・。


「もうだめだ、疲れたし足痛い。よく考えたら街からこの池まで3kmはあるはずだ、少し休むから念のため岸に寄せるよ」


普通の自転車なら、陸を走ったほうが疲れないが、この水陸両用船は車輪が木製なので乗り心地が非常に悪い、その上くそ重たい車体(船体)を動かすのだから、陸は水上以上にきつかったりする。水路でちょっと乗ったら、送還して歩いてくればよかったかもしれない。

オールで岸に寄せ、栄養ドリンクと言う名の回復薬を飲み、しばし休む。

池と言う表現は発見したリリパットやドワーフの表現なのだが、実際ここが池なのかどうかというと、凄く微妙だ。というのは、俺の感想としては池と言うには大きい。直径で2km位あるんじゃないだろうか。はっきり言って俺の地元の山にあった湖よりでかい。水中に水草などが確認できるが、水の透明度は高く何メートルも下まで見通せ魚の姿も確認できる。


汗をかいた体に池の上に吹く風が気持ちいい。最近気温が上がってきたような気がするが、季節としてはどうなんだろうか。


「この世界って、これから暑くなるのか?」

「そうですね、もう少しすると暑くなりますよ」


スマホによると、今は6月の終わりだけど、日本に似た感じなのかな。冬はどうなんだろう。



「お館様、水中を蛇が沢山泳いでいます。水生の蛇なのでしょうか」


俺が四季はあるのかな?などと考えていると、レオノールが水中を覗き込みながら告げてくる。


「ん? 蛇は泳げるけど、水中では呼吸できないから、頭は水から出すんじゃないかな。もぐってもそんなに長い間ではないはずだよ」


レオノールが指し示す方向を見てみれば、確かに水中でうごめく長い影がある。


「う~ん、鑑定、水中の長い生き物」


【鑑定:水中の長い生き物】

水中の長い生き物=川うなぎ 蒲焼にすると美味。淡水中で産卵する魚のため海に行く必要が、ありません。


おお、うなぎの稚魚のシラスウナギって海にいるもんな。確か太平洋で産卵して、川に上って5年以上過ごして、また産卵で海に行くんだよな。そして、明らかに俺への説明と思われる鑑定さんは、最近どうしたのかね。


「レオノール、うなぎだ。この魚獲るぞ、こいつは焼いて食うと美味いんだ」

「そうなのですか、じゃあがんばって獲りましょう」


日本基準では、6月というのは旬ではないが、食べてみないと分からないしね。


作戦その1 釣る。


「召喚、釣り道具」


レジャー用品売り場の釣竿など釣り道具一式を、取り出し池にたれる。餌は店の商品で缶詰のミルワームだ。みみずよりキモいが、我慢する。

タナなどは分からないな・・・!そういえば、秘密の仕掛け集とかいうアプリがあったはずなのにこの間無くなってたな、必要な時に無いアプリってどうなのよ。


待つこと5分・・・。


「きた!」


竿が引かれたが、うなぎのあたりなど分からないので、とりあえず上げてみると何かがかかっている。

そして・・・。


「私も、かかりました」

「おお、がんばれ、こっちはもう少しで上がる・・・あれ、うなぎじゃないぞ」


上がったものはどう見てもうなぎではない。これはなんぞと、鑑定すればウグイ(ハヤ)らしい。


「この魚、俺の世界にもいたけど、川がきれいじゃなかったし、人気の無い魚だから食べたことは無いけど、うまいのかね?」


鑑定によれば美味いらしいが、昔釣りに行った時の記憶では外道といわれていて、誰も見向きもしなかった。川で釣ったナマズや鯉を捌いてくれた親戚の小父さんが、見向きもしなかったぐらいなんだが、味はどうなんだろう。


「私も食べたこと有りません。あ、こっちも上がりました、同じ魚でおそろいですね」

「じゃあ、せっかくだし持ち帰るか、バケツ・・・いや、クーラーBOXに水と一緒に入れておくか」


こんなときにバケツを使うと、きっとひっくり返すようなイベントが発生するからな。


「よし、ジャンジャン釣っていこう」

「はい」


2時間ほど経過した。ウグイに加えサツキマス、ナマズ、フナ、ハクレン(レンギョ)などが釣れ、総数も30尾を超えた。


「うなぎ、釣れませんね」

「だなあ・・・もしかしたら時間が悪いのかも・・・」


魚によって釣れる時間が、決まっていたりするのは良くあることだ。


「最初、うなぎは何処に居たんだ?」

「あの辺りの水草の中からわ~と出てきましたよ」


水草?それ、もしかして潜んでた場所を、オールで掻いてしまったのか? それなら釣れないよな。


「一度船を下りて、別の方法を考えよう」


思ったより長くなったので途中で切ります

話は次回に続きます


次回8月19日 20時です

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