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36 BBQ大会

「うん?これは何じゃ」

「先日、池に行った時みかけて、簡単なわなを仕掛けたら意外とうまくいってな、結構な数を捕獲できたんだ。これは開いて、たれをつけて焼いたものを小さく切って乗せた、うなぎのひつまぶしという料理だ。俺の国ではうなぎの減少もあって高価な料理だったんだが、池にはうじゃうじゃいたから、安価で提供できると思って作ってみた。上に載ったうなぎと米を一緒に食べてくれ。付属のスープは椎茸でだしをとったスープだ、単体で飲んでもまずくは無いが、このスープをひつまぶしにかけて食うと、それまでと違う味わいになると思う」



まあ、正しくはうなぎではなく“川うなぎ”といい、産卵で海に行かないため、地球のうなぎとは別物らしい。俺にとってはなんとも都合のいい生き物だ。十数匹を捌いて商品化して増やしたんだが、それは言わないでおこう。捌いた方法も例の資金化でえられる、うなぎ魚肉を“切り身ではなく背開きで”と念じたら、希望の形になった。たれについては、俺は素人だし材料も限られるので醤油、砂糖、日本酒を煮詰めて作ったが、どうにかそれっぽいものになった感じだ。まあ日本で金が取れるようなものではないな。今後うなぎを焼きながらたれにつけるを繰り返して、たれを育てていくしかないだろう。


「ほう、スープをかける料理など聞いたことが無い。他の者なら一笑にふすがそこは異世界料理・・・・試さねばならんな。・・・・・・・うまーーーーーーーー・・・頼む」

「これは、美味いですね。この街にくるまでは塩と香草くらいしか知りませんでしたが、醤油ですか?すごい調味料です。米の淡白な味わいに、柔らかく濃いめの味付けをした肉が一体となり、口いっぱいにうまさが広がります、これはとてもおいしい。そして、このだしをかけると、濃いめのたれが薄まって物足りないかと思いきや、これはこれで、最初からこのような料理だったと思えるほどに、違和感がありません。口内を蹂躙するうまみが、まるで味の洪水のようです。見た目から最初は蛇肉かと思ったのですが、全然違う食感です、口の中で解けていくような柔らかさを味わっていると、至福の一時です」

「うなぎって、あのぬるぬるして捕まえにくい魚ですよね、あれってぶつ切りで煮るかそのまま焼くかだと思ってました。いや、今日は驚かされてばかりです」


ドルトンが、一口食べたと思ったら、一気にがっつき瞬時にお替りを要求してくる。まあ予想の範囲内だし、元々少なめによそっているから、すぐお替りを出してやる。そして、ガイアンとヨルンが、それぞれに感想を述べてくるが、ガイアンはどこで食レポを覚えてきたんだ。


「おおお、確かにスープをかけると別の料理になるな。しかしこれは良い、食事や飲んだ後の最後の一杯を、どうしようと思ったら、まさにこれが正解じゃ」


・・・飲んだ後の炭水化物は太るぞ。

できれば醤油も作ってみたいが、大豆はエルフとドワーフが栽培していたが、小麦が無いんだよな。大豆と塩だけで作る、たまり醤油を試してみるか。


「ひつまぶしで、ここの料理は終わりだが、まだ物足りないなら外の連中に混ざってくれ」


そして、店の外に出る。


「おお、なんじゃこの騒ぎは」


店の外では、いくつものグループがバーベキューを楽しんでいる。


「俺が立っていた焼き台は、煙が外に流れるから匂いを嗅いだ者は、食べたくてたまらなくなる。店に客を呼び込むために、あえて人が通る道路に面した場所で焼いているんだ。なのに試食会だからと、店にいる俺たちだけが楽しんでは、皆に悪いからな。こうしてバーベキュー大会になっているわけだ」

「ニャルタニャン、焼き魚があるにゃ」


七輪の上でウグイ(ハヤとも呼ばれる)を焼いている様子を見て、殿下が声を上げる。川に近い街に住んでいるだけに、焼き魚も好むようだな。


「デンカーさん、皮は塩がついてますから、剥がしてくださいね。塩分の取りすぎはいけませんよ」


殿下は、焼いていたエルフから焼き魚を受け取るが、塩分の取りすぎを注意される。殿下はケット・シー以外がいる場所では、冒険者のデンカーを自称しているので、この街の多くの者が同様の認識をしている。


「バーベキュー用の金網と焼き台のセットが大小あわせて21台。それと七輪もあったから、増やしてバーベキュー大会にしてみたんだ。皆、気がつかなかったろうけど、俺が焼く様子をちょいちょい見に来て確認していたぞ」

「いつの間に準備をしたんじゃ」

「道具を増やして使い方を説明したのは俺だけど、この場を仕切っていたのはブライアンとエルフ村長で、食材の用意と調理指示はレオーネさんだよ」


既に、にゃんこ二人は焼き魚に夢中で、他の者も気もそぞろではあるけど、状況を把握すべく辛うじてこちらに意識を向けている。


「何で、ワシらに秘密にしとったんだ」

「いや、深い理由は無い。食べ物だけの話なら、ここで一緒に食べても良かったんだが、それだと店としての様子がわからないから店で提供した」

「おーい、ドルトンここでツノシシの焼肉食べないか」

「ちょっと待て、今話をして・・・いや、おぬしが仕切っておったとはどういう事じゃ」

「よし、話は終わりだ。後は銘銘楽しんでくれ。俺も飲みなおす」

「ブライアンどういう事じゃ」

「たまには、俺もお前を驚かしてみたかったんだよ、悪気は無いからそう怒るな。それより、この酒を飲んでみろ」


走っていったドルトンとブライアンの会話が聞こえてくるが、まあ、あっちはあれで仲がいいから問題は無いな


「レオノール、今日は給仕ありがとう。俺たちも飲みなおそう」

「はい。でも楽しかったですよ、なんか食堂を始めたばかりの・・・夫婦みたいで」

「そうか、それは『にげろ~~~~~~』」


ピューーーーーン パァーーーーン

・・・・・こら、誰がロケット花火を飛ばした!花火は食事の後でと言ったろうが。俺の鼻先を飛んでいったじゃねえか。俺が、声のしたほうに顔を向けると数人のリリパットが・・・・。


「あいつで~す」

「あいつが犯人で~す」

「僕たちは見た、二人の秘密“焦げたひげ”・・・・みたいな~?」

「ち、違うにゃ、にゃーは頼まれたにゃ、火を付けて欲しいとリリパットに頼まれたにゃ。ニャルタニャンも何か言うにゃ・・・・にゃ、にゃーー、おみゃーにゃんで先に寝てるにゃーーーー、ニャルタニャン起きるにゃ、ニャーは今疑われてるにゃ、ピンチにゃーーーー」


あ~大体わかった。全ての元凶はリリパットだな。だが、ニャルタニャンは寝ているのではなく気を失ってるぞ、たぶんひげが焦げてるあたり、ロケット花火がなんだかわからず、飛び出す直前まで至近距離で見てたな。


「よし、そこのリリパットは三日間お菓子抜きだ。それと殿下、ニャルタニャンは寝ているのではなく気を失ってますのでどこかで休ませたほうが良いかと。先ほどの店の座敷を使ってください。二階の客室に毛布がありますので使ってください」

「では、私が運びます」

「助かるにゃ、恩にきるにゃ」



「だんだん形になってきたな」


ぼけっと、殿下たちを見送っていると、モーブが話しかけてきた。


「ああ、皆が協力してくれるおかげだ。俺がここに来てまだ二ヶ月経ってないのに、大きく変わった。正直一人で熊に怯えていた頃は、こんな所で一人生きるなら熊と戦って死んでもかまわないと思っていた。モーブならわかるだろ」


あのときの精神状態は、自分でもおかしいと思うが、現実的な話としてこの森に一人住むのはつらすぎる。まあ普通の現代人の自分の感覚でしかないから、修行僧の方や俗世を嫌う方なら嬉々として引きこもったのかもしれないけど、俺は生きる意味を感じられなかった。


「そうだな。状況は違うが、俺も異端者だったから周囲から孤立し、モーナに会うまでは一人で生きていた。モーナを教えてくれたこの世界の神様は、いずれ状況は変わるから、あと少しだけ我慢して欲しいといっていたな。それが何を示すのかその時はわからなかったが、きっとケントがこの世界に現れる事を言っていたのだろう」

「・・・なあ、モーブ。お前・・・・・記憶が、戻って無いか?」


この街にいるものとしては、モーブは古株だ。しかし、同じように古株のコボルトは事あるごとに、今も新鮮な驚きを伝えてくる。エルフやドワーフにしてもこの世界に無い技術などには驚きを示すが、モーブはリアクションが薄い。単に気にしないたちなのかと思って、流してきたが“この世界の神様”という言い回しは不自然だ。・・・リリパットは長老の親父さんに感化されてるのか、妙な知識を持った者が多いが、今転生者は居ないはずだ。


「いや、記憶という程ではないんだ。しかし最近何かこう“知っている”様な気がすることはあるな。スマホは馴染みがないから似た世界なのか時代が違うのか、そのあたりの事はわからない。DVDなど見ていると、別の世界の驚きより、内容やアクションのほうに目がいくし、ケントの行動や店の商品を見ても“ああそうだな”って妙に納得してしまうんだ」

「そうか、記憶が戻ったわけではないのか。いや、記憶が戻ったなら何か知ってることがあればと思ってな」

「残念だが、記憶というほどではないし、示せる知識はない。期待に沿えずすまない」

「いや、すまないなんて言うなよ。モーブにはいつも助けられているんだ、感謝こそすれ不満なんてないよ。これからもお互い協力していこう」

「おう、これからもよろしくな」


俺たちは自然、握手を交わす。


「じゃあ、改めて飲もう。ナラ公国の建国に乾杯しようぜ」

「まだ飲むのか、俺はそこそこいい感じなんだが」

「なにいってる、さっき飲みなおすと言っていたじゃないか。それにこんなお祭り騒ぎに飲まないでどうする」

「俺はそんなに強くないから手加減してくれよ」

「おう、夜は長い。ゆっくり楽しもうぜ。・・・あ、飲める飯屋も良いけど、女性がお酌してくれる店・・・客が女なら男の方が良いのかな? まあそんな店があっても良いんじゃないか」


ジーー


「ああいいかも・・・・!? 街開発という視点では悪くない話だな。住民や客にも、需要があるだろう。まあお互いその店に縁があるかわからないが。・・・・あとで、バラルやヨルンも交えて検討する価値はあるな」


俺は言いつつ、ちらっと目配せをする。


「そうか?何かのDVDで見たシーンが気に入ってな、是非・・・・・!?・・・そうだな、俺も自分では必要と思わないが、DVDを見た感じ、似たような店を求める者はそれなりにいると思って提案してみたんだ」

「そうか、ありがとう」

「なに、ほんの思い付きだ」


ジーーーーーー


「よし、じゃあ『乾杯だ』」


俺たちをじっと見つめる二対の視線には気がつかないふりをして、俺たちは朗らかに笑いあう。

(・・・やっべー、レオノールいつの間の戻ったんだ。モーナも並んでじっと見てきてるぞ、どうすんだ。)

(すまん、目配せされるまで全く気がつかなかった。別に浮気の相談じゃないんだけど、どうしてこうびくびくしてしまうかな)

(いや、おまえかなりアウトっぽかったぞ)


「何をこそこそ、話しているんですか?」

「モーブは進化した私に不満なのかしら」

「「いえ、何も問題ありません」」

「では、花火会場に行きましょう。途中で何か食べ物とお酒を分けてもらいながら、向かえばお酒も飲めますよ」

「そうだね、そうしようか」


俺たちは、二人に連れられ、花火(店販売のレジャー用品)会場へと歩いてくのだった。


次回15日20時です

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