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30 家を建て居住区を作ろう

「そういうわけで、わしは引越しを提案するわけなんじゃが、皆はどうじゃ」


現在ドワーフ集落の引越し検討会議が行われている。第三次遺跡探索ドワーフ組みはドワーフの集落に戻り、ガイアンたちエルフ遺品捜索組みは、エルフ村へと報告に行った。


「どうじゃと言われてもな・・・確かに今回何人かの犠牲者が出ているし、安全を考えるなら、他の種族と共存したほうが良いだろう事はわかるよ。今回大分お世話になっているし、信頼できる方たちだと思うけど、集落の引越しなんてそんな簡単なもんじゃないだろう。大体ここを捨てて住む家をどうするんだよ、200人近く居るんだぞ」


うん。至極真っ当な意見だな。ヤドカリじゃあるまいし家ごと引越しなんて、普通できないだろう。


「それなら問題ない。ちゃんと策があるぞ。ケント殿なら集落まるごと引越し可能じゃ」

「「「「え?」」」」


俺も実際やった事があるわけじゃないんだけどな・・・。



「家屋を支えし大地よ、鉄板のごとく硬く薄くなり家屋と一体となれ」


まず、移動する家の土台をドワーフが加工し、硬い基礎にする。


「召喚、駐車場」


次に俺が、家の近くに駐車場を召喚する。


「商品化、家屋」

「送還、家屋」


で、俺がドワーフの家を商品化し、送還する。

後はこの繰り返しで全ての家を送還し、ホームセンターの周囲の希望の場所に召喚すれば引越し完了だ。


「どうじゃ、いった通りじゃろう」


ドルトンが自慢げに言うが、あんた殆ど何もしてないだろう。

そして、現場を見ていたドワーフの多くが、顎を落とさんばかりに口を開いて驚愕していた。




「お帰りなさい、おやかた様」

「やあ、族長変わりは無いかい」

「ええ、特にトラブルもありません。畑も順調です。シツジーの餌になる燕麦も少し植えてみましたが、そちらも育ちが良く餌もどうにか足りていますよ」

「そか、ドワーフの家を設置したら、また外に出るけどよろしく」

「わかりました、お任せください。家はユニットハウスですかな?」

「いや、今まで住んでいた家を持ってきた。設置場所を決めるから族長もきてくれ」


族長を連れ、ドワーフの元へ行く。耕作地やエルフの居住スペースとのすり合わせが必要だからな。


「わしらの要望は、工房関係をこの店の近くに設けたいが、家はその外側でもかまわん」

「建築資材や布などの運搬でか? それならトラックやフォークを使えるようになってもらったほうがいいな。専用の搬出路を作って車優先にすれば危険は無いだろ。そして、工房は音や匂いが出るから少し離して、居住区はある程度、まとめたほうがいいんじゃないか」


その方が都市開発に有利だろう。


「現在の耕作地の近くに我々の耕作地を広げてよいのですよね。でしたら、あのあたりに家をまとめてはどうですか。自転車があれば工房も耕作地もすぐですし」


村から戻ってきたガイアンからも要望が出てくる。


「少し家が店から遠くないか」


自転車に乗って畑仕事に向かうエルフか・・・・ファンタジーぶち壊しだな。


「遠いと言っても1kmも離れとらんぞ。それに駐車場は召喚される恐れがあるから家は建てられまい」


確かに駐車場は最近良く使用しているからなあ。以前みたいに上物を置けないんだよな。


「じゃあ、あの辺でいいか」


俺は測量ロープを取り出し、長さを測る。一軒あたりの30m×30mにする予定だが、日本の住宅街のように前後の家を並べずに道で仕切る。まあ隣と隣接するのは仕方が無いよな、日本の町場の住宅地としてはかなり大きいと思うんだけどどうかな。

起点になる場所が決め辛いな、駐車ラインにあわせるか・・・・起点を決め境界杭を打ち込む。

測量ロープを3個取り出し、近くに居たブライアンと二人のドワーフに協力してもらい基準となる線を二本引く。トランシットという角度を測れる、測量用望遠鏡があれば楽なんだけど、うちの店には在庫が無かった。中国メーカー製でも15万円以上するから、流石在庫で置いたりはしないよな。測量した地点に杭を打ち。基準になる三点をだした。


「今の杭が基準になるから、100mの標識ロープ(トラロープ)を杭の間に張ってペグで固定してくれ。今後家を建てるときはこのラインを基準に区画割していく」

「ちょっとまってくれ、今のは何じゃ。その長さで三角を描くと直角になるのか。他の長さだとどうなるんじゃ」

「5:3:4を同じ比率で倍数にすれば常に同じ角度だな。例えば1.2mの輪を今言った比率で三角にすれば、必ず一箇所直角になる。まあ、その辺りの検証は後日ゆっくりやってくれよ、60mの方は今のラインに合わせて10mぐらい延長しておいてくれ」



「わしの家を、この位置に出してくれ、敷地が余るなら左隅に寄せて、玄関が手前方向で頼むのじゃ」


俺は指示通りに出してやる。


「「「「「家が出た!」」」」」

「え、前から家は出してたじゃないか」


ガイアンたちエルフとコボルトが当たり前のことを言う。


「いや、この家はドワーフさんの家ですよね、今まで住んでいた家を持ってこれたんですか」


ああ、そういうことか。


「数日前に発見した移送手段だ。後でエルフの家も運んでやるから安心していいぞ」

「是非、お願いします。ついでに畑はどうにかなりませんか」

「・・・畑の土を運ぶだけならトラックで運べるけど、作物が植わった状態でと言うの現状無理だな。むしろ魔法でどうにかならないか」

「もっと小さければできるが、畑は無理じゃな」


「まあ、出来る事と出来ない事はあるさ。それに家を建てればそれで完成と言うわけじゃないぞ。少なくとも上下水を設備しなきゃいけないんだからな」

「上下水?なんじゃそれは」


ドルトンが首を捻りつつ聞いてくる。


「ドワーフの集落では飲み水をどうしていたんだ?トイレや生活排水はどうしていた」

「川が近かったから川に行って・・・んん?ここは水をどうしているんじゃ」


ドルトンが慌てて周囲を見回し、周囲に水源が無いことを指摘する。


「今はあの店から水を汲んでいるんだ。あの店は魔法的な力で無限に水を供給する仕組みがある。その仕組みを使ってこの居住区に水を引くことも可能なんだが、訳あってそれはしたくない。そのあたりの事情は後で説明するから今は流してくれ。いずれ池から水を引くつもりだが、今日明日というわけには行かないから、とりあえず貯水タンクを設置しておくよ。まあ、この貯水タンクも無限に水を出すから大差ないんだけどな」


ドルトンの家を皮切りに、ドワーフ一族の家を次々建てていく。中には工房兼用の家もあるが、匂いや大きな音が出る職種は強制的に工房エリアに工房を構える様依頼する。いずれエルフの集落も移動してくれば、ここは大きな住宅街になるな。


「そういえば、依頼していた大き目の建物は建築始まったのか」


俺はドワーフやエルフに依頼していた建物について、たまたま近くに居た黒足に尋ねた。残念ながら依頼した相手を良く覚えていないので・・・いや、アバウトに“作れる人よろしく”的にざっくりとした依頼をした気がするので、代表者が定まっていなかっただけだよ。だから黒足に頼んだわけじゃないけど、黒足は居残り組みだから何か知ってるかと思い聞いてみたんだ。


「いくつか建築し始めていますよ。大きめな建物から作ってますけど、あれはお舘様の家ですよね。ドワーフたちがレオノールを巻き込んで、なにやら妙に気合を入れて作ってますよ」

「いや、違うから。あれは集会場というか公民館というか、大人数が集まった時に会議や宴会場として使う建物だよ。俺が住むのに平屋で40坪超える家は要らないよ」

「・・・・・ドワーフたちが“領主の館としては小さすぎる”と言って、倍以上の大きさで作り始めてますが・・・止めますか?」

「・・・まじで?」

「ええ、嘘偽り無く。まあ、目的の建物とは違ってしまいましたが、ドワーフの家があのサイズなら、どちらにしても小さすぎましたよ」


確かにドワーフの家はそこそこ大きい。平屋でも40坪あるし、更に二階建ても少なくない。彼らが生活する家のサイズを基準にしたら、俺の依頼した大きさは大きな建物とはいえないのは分かるが・・・何ゆえドワーフがレオノールを巻き込んでる。


「ドワーフの暴走はともかくそこにレオノールが加わってる理由は?」

「それはですね・・・・・ここでは不味いので少し移動しますね」


少し口篭もった後、黒足は人の輪から離れ、周囲に会話が漏れないであろう位置まで移動する。おれもそれに従いついていく。


「俺はともかく他の若いハイ・コボからすると、レオノールはアンタッチャブルな存在でしてね、別に嫌っている訳ではないですが、伯母に似た所のある彼女には頭が上がらない部分がありまして。まして今や進化の最上位に居ますからね、俺以外に対等な相手が居ないんですよ。しかし、俺には他に相手が居ますし、レオノール自身の希望が・・・ね。そして、周囲がその辺の事情を敏感に感じ取って今回のような事態に・・・」


うん、わかった。俺もそこまでの事態なら、建物の否定や建築中断は色々不味いと理解できる。レオノールも人族と言えるレベルまで人化してるので、今となっては彼女と所帯をもつのはやぶさかではない。


「わかった、俺が考えていた建物は別口で頼む事にして、今回の建物は単に大きくしてくれた事を感謝する感じで話をまとめるよ。情報ありがとう」

「いえいえ、日頃お世話になっていますので、まだまだ感謝される程ではありませんよ」


人が増えれば色々と俺の予想しない方に物事が動くもんだね。まあ、それはそれで退屈しない生活になって、悪くないね。


次回8月3日20時です

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