27 ドワーフ捜索隊を捜索しよう
6000字ほどで主人公が近接戦闘をします。
「ここが、その遺跡ですか」
ブライアンに事情を説明した後、俺たちはドルトンを回収し件の遺跡へとやってきた。ドルトンは嫁に制裁を加えられることもなく、むしろ無事で良かったと泣きながら言われたとかで、少々照れくさそうにしていた。まあ、鬚面なのでいまいち、わかりにくいけどな。そして、ドワーフ集落にリリパットのランデン長老と、数名のドワーフを残して、俺たちは遺跡へと向かった。ランデン長老は高齢であり身体的にキツイという理由で遺跡探索に参加せずドワーフの数人は、個々に家庭の事情があるという事なので深くは追求しなかった。
そして、たどり着いた遺跡というのは地下室の跡を思わせる物で、四角くあいた穴に地下へと続く石造りの階段が伸びている。
「はい、捜索隊は奥に居るはずですから中にはいりましょう。あ、我々ドワーフは暗視能力がありますが、皆さんは見えませんよね、どうしましょう」
言われてみれば確かに地下遺跡には明かりがないだろうな。しかし、ここは俺の四次元衣嚢的な便利能力でLEDライトを召喚するのが良いだろう。
「いや、俺は明かりを持っているので大丈夫だ。ドワーフ以外は一人ひとつもってくれ。集団で移動するときは大きなライトだけでも十分だと思うから、小さいライトは逸れた時にでも使ってくれ。一番小さいライトでも3時間くらいは使えると思う」
ブライアンや一部のドワーフは俺の召喚を初めて見たため目を丸くしているが、ドルトンが何も言わずにいるので、能力を聞いては来ない。今は時間もないし一々説明はしなくても良いだろう。
LEDライトの光を頼りに遺跡内部へと入る。俺達にとっては初めて入る遺跡ではあるが、この遺跡に何度か入ったことがあるというブライアンが先頭なので、俺は警戒よりも遺跡内の様子に重きを置いて確認していく。この遺跡が消滅した魔法王国の関連遺跡とすれば、何らかの魔法装置や防犯ギミックが組み込まれている可能性もあるからだ。
「モーブ、この遺跡内には既にドワーフが入って探索しているから、彼らの身長で見えない位置にある壁の穴や隙間、あるいは模様などを重点的に確認してくれ。シデンは逆に足元や壁の低い位置を見てくれ」
「壁の穴というのはどんな物だ」
「そうだな、等間隔に開いた穴や隙間なんかは防犯用の罠が仕掛けられていたりする可能性があるな。例えば壁に触れると穴から矢が飛び出すとかな」
「それなら、ここにあるぞ。これは罠なのか」
「なに?」
言われモーブが示す場所を鑑定する。
アロースリット(故障)対応する壁石を押すと狭間から矢が射出される仕組みだが、魔法王国消滅時の衝撃で破損
「壊れているが、間違いなく罠だ。対応する石は・・・これだな」
石の設置高さは130~150cm程かな、ドワーフの身長からやや高い位置までの壁石配列が、他と少し違うように見える。人間が手をつきそうな、実にいやらしい位置に設置されている。
「ドワーフが遺跡に入っているときに罠が発動したことはあるのか」
「いや、ありませんね。しかし、部分的に床に穴が開いていたり石が落ちていたりする場所はありましたから、それらは作動済みの罠なのかもしれません」
なるほど。基本的には作動済みと考えて良いのかもしれないな。
「じゃあ、罠が残っているとしてもドワーフの背より高い位置と考えてよさそうだから、最初の方針通りに行こうか」
俺達は再び、遺跡内を移動する。
「なあ、ケントこの中でナビは使えないのか?」
オートマッピングか・・・。俺はスマホを取り出し確認する。
「お、周辺地図と自分の位置は表示されるな。というか、モーブもスマホを持ってるだろう」
聞く前に自分で確認したほうが早かろうに。
「・・・まだ、操作に慣れてないんだよ」
「そうか・・・でも逸れたりすることもあるかもしれないし慣れておいたほうが良いぞ。歩きスマホは危険だけど、こういう迷路みたいなところは地図があると無いじゃぜんぜん違うぞ」
『そうだな』と言ってモーブは懐からスマホを取り出し、アプリを起動させいじりだす。シデンも背中からスマホを下ろして操作し始めた。シデンのスマホは世界最小クラスのスマホらしいが、取扱店が違うのになぜか売っていた。それでもシデンの身長の半分程あるので、使用する場合は背中から下ろさなければいけない。まあ、中継アンテナも電話局も無いこの世界で、何故電話が使えるのかは分からない。神的な力か魔法の力か・・・使用台数が増えるとキャパオーバーとかあるのかな。
「ドルトン、何故お前までそれを持っているんだ」
「ふ、良いじゃろう。わしもドワーフの長じゃからな、連絡用に一台譲ってもらったんじゃよ。なに、そう高い物ではないから、おぬしは自作の革鎧を売って金をこしらえて譲ってもらうが良い」
ブライアンがドルトンの会話に目を向ければ、ブライアンはスマホを見て羨ましそうにしている。・・・ただでも良いが、ドワーフ間で不公平が出るのも良くないな、ドルトンの様に理由が無い限りは販売にしておくか。
「じゃあ、代金は後で良いから先に渡そうか?この遺跡内ではあったほうが楽だろう」
その後、拠点に電話し充電済みのスマホを数台用意してもらい、本体のみ召喚して同行するドワーフに渡す。その場に居る全員の電話番号を登録し、電話とナビの使い方を説明した後、再び探索を開始する。
「この遺跡はどの位の広さで何階層あるんだ」
「今のところ三階層まで発見している。一階層はそこそこ広いが二階三階は段々小さくなっていると思うが、道に矢印をするだけで特に地図は書いてないからわからないな」
いや、地図は描こうよ。魔法王国とはいえ日本の地下街程の大きさがある分けないだろうけど、それでも変化の無い地下通路だから迷ったらどうするんだよ。
「地図描かないで、迷ったとき困らないか?」
「迷ったら自分の場所がわからなくなるんだから地図があっても無意味じゃないか。それに矢印を探して逆走すれば戻れるぞ」
ああ、ゲームやナビのように現在地がわかる訳ではないから意味が無いということか。しかし、矢印逆走ってそんな非効率的な方法なのか?道が行き止まりになる度戻って分岐に行き止まりとでも書くのか?現在地は工夫ひとつで地図と照合できるぞ。
「なら、こうすればいい」
俺はショートスピアで床にゴリゴリと◎印と△印を刻む。
「で、書いている地図に、この二つのマークも記入しておく。これで、この場所が地図上で確認できるし地図の向きも判断できる。次回通る時は地図で道を確認できる」
「「「・・・・・・・」」」
「どうした、何かおかしいか?」
ダンジョンもののTRPGや一昔前のゲームとか小説では、ダンジョンと言えばマッピング、マップの出来が生死を分ける位の重要度の場合もあったぞ。特に初期の3Dダンジョンのゲームはオートマップなんて無いから、自分でせこせこ地図を描かないとクリアできなかったぞ。しかも移動の歩数を数えて方眼紙に描き込むレベルだし。
「て、天才か!」
「・・・いや、冒険者とか普通にやってる事だと思うぞ」
途中にある部屋を覗き込み確認しながら進んでいるが、流石に500年前に滅びた国の遺跡だけに調度品等は傷みが激しく、価値のありそうな物は見当たらない。
まあ、ドワーフの捜索隊が部屋に入っているし、捜索中とはいえ価値のありそうな物があれば持ち帰っているだろうな。
その後順調に探索を進めるが、三階層に着いても一人のドワーフにも出会わなかったし、物音一つ聞こえない。これは、四階層を発見し先へと進んだのだろうか。
「三階の捜索はどのくらい進んでいたんだ」
俺はブライアンに情報を求める。
「そうですね・・・二階と同じ大きさとしたら七割と言う感じですかね」
「なら、どう考えてもこの階には残ってないよな。既に七割どころか三階層の端に達しようとしているし」
そして。
「どこにも居ないぞ。階段も見当たらない。いったいどうなってる」
三階層を全て調べて周りドワーフ捜索隊と四階層への階段を探すが、どちらも見つからない。
「階段が無いなら隠し通路か、あの扉でもあるんじゃないか」
「隠し通路はともかくあの扉って魔道具のか・・・・・ん?ちょっと待ってくれ」
よくよく考えてみれば、階段というのは普通同じ場所で上下階をつないでいる物じゃないか? ゲームや物語の都合で階段が離れていたり隠されていたりするが、ここはどうだろうか。それなりに重要な施設で侵入者用の罠が仕掛けてあるのはまだ良いとして、こんな迷路のような構造や離れた位置にある階段とか、外敵侵入時以外は明らかに不便で無駄だよな。どこかに施設関係者用の隠し階段があるんじゃないか?
「モーブ、三階層の地図を表示してくれ、シデンは二階層を頼む」
俺は、一階層の地図を表示させ、三人の地図を見比べる。そして予想通り不自然な一角があった。
「この壁の向こう側が怪しい。全員周囲を調べてくれ」
やがて、
「ケント、足跡がこの壁に向ったまま戻っていないみたいに見えるぞ」
500年も放置されていた遺跡だけに、床にはそれなりの量の土埃が積もっている。しかし、歩き回る足跡が壁の一箇所に向ったまま戻っていないように見えた。そして、付近に床から突き出ている小さな石を見つけ、その仕掛けを作動させる。
すると。
「壁が消えた」
「魔道具か?」
「そうみたいですね、奥に階段が見えます。行ってみましょう」
俺が開いた空間に入ると同時に。
『警告、後方およそ40mに、敵性生物反応があります。ご注意ください』
俺とモーブ、シデンは一斉に後ろを見るが、後ろは10mも行かずに壁だ、改めてスマホを見れば地図の表示が周囲の状況と違っている。俺は身振り手振りで皆に下がるよう指示をする。
「この先の下階に敵が居る。すまないがライト片手では戦えないから、ドワーフの何人かはこのランタンタイプを持っていてくれないか」
「ケントも戦うのか?状況的に飛び道具は使え無いぞ、近接戦で戦えるのか? あまり無理をしなくてもドワーフもいるしケントが戦わなくても何とかなるんじゃないか」
「ああ、正直俺も戦たくはないが、現実はこの森に来てからというもの、戦ってばかりだからな。この先も戦わないでどうにかできるとは思えないし、近接戦に慣れるならむしろ戦力が多いときの方が良いだろ、それに俺だって自分なりに戦い方を考えていたから、それを試してみたいんだ」
あまり戦闘が得意ではないと言うドワーフに大型のLEDランタンタイプを渡し、戦闘中の明かりを頼む。ランタン型なら明かりは全方位に広がるから戦いやすいだろう。そして、準備を整え改めて隠し通路に向かう。ドルトンたちも各々斧などの武器を構えている。
隠し通路に再度入る。
すると・・・・。
『うお~~~』
階下から聞こえた叫び声に、俺達は一斉に駆け出し階段を駆け下りた。聞こえた声は、あまり良い感じの声ではなかった。どこか覚悟を決めたような、例えるならせめて相討ちにという死を覚悟した者の声だった。まあ、映画で見たそんなシーンに似ていたと言う話だけどな。
階段を降りた先はホールのような部屋になっていた。30人ほどのドワーフが床に倒れている。しかし血を流しながらもまだ数人のドワーフが抵抗をしている。相手は巨人化スプリガン5匹で、戦況はあまりにも悪い。今は怪我人を介抱するよりもスプリガンを倒すほうが優先と考え、一気にスプリガンへと肉薄する。
俺は、スプリガンに向け60cmのリーマ付きパイプを上段に振りかぶり、走る勢いを乗せ思いっきり振り下ろす。彼我の距離は2m弱で当然60cmのパイプが届くはず無いのだが。
召喚、十字槍
「ガアアアアア」
振り下ろすパイプの先に小さな魔方陣が展開し、次の瞬間パイプから伸びた十字槍が巨人化スプリガンの胸元に突き刺さる。スプリガンは俺に気がつき警戒はしていたようだが、いきなり武器の長さと形状が変わって、防御できなかったようだ。スプリガンは槍を掴み引き抜こうとするが、ここで槍を押し引きして槍傷を広げてやる。掴んだ槍を力任せに俺から奪い取ろうとするスプリガンの動きに合わせ、思考で送還を発動させる。
送還、十字槍
十字槍を送還する。再び槍が消え短いバトンのようなパイプだけが俺の手に残り、スプリガンは掴んでいた槍が無くなった為に、槍を引いた勢いのまま後ろに倒れる。
そして再び
召喚、十字槍
今度は倒れたスプリガンの腹に向けて十字槍を振り下ろす。
「ゴアアアア・・・・グブッ」
スプリガンは悲鳴を上げた後、口から血の泡を吐いたが、まだ止めには至らない。巨人化スプリガンは、力だけでなく耐久力だか生命力だかも、跳ね上がっているので、生半可な攻撃では倒しきれない。それでも、血の泡が邪魔をして呼吸がままならないのか、その動きは大分衰えてきている。
一気に止めを刺してやる。
俺は十字槍を刺したまま、スプリガンの側面に回りこむ。腹に刺さった槍の刃が90度向きを変え、腹を抉られスプリガンが絶叫を上げる。それでもまた槍を掴み抵抗しようとするが、再度十字槍を送還。そして直ぐに召喚し振り下し、送還の連打をスプリガンの腹に打ち込む。
そして、
召喚、ロングモーニングスター
十字槍に替わって短いスパイクを生やした鉄球を鎖でパイプにつないだ、打撃武器モーニングスター(ロマン武器型)を召喚する。
「おらぁぁぁぁ」
モーニングスター(ロマン武器型)をスプリガンの頭やら体やらに、とにかく全力で打ち付ける。この武器が何故ロマン武器かというと、実は実在していない空想上の武器だといわれているからだ。棒の先に棘鉄球を付けたモーニングスターや城防衛で使われたフレイルは実在したとされるが、その中間になる鎖付のモーニングスターは後世において、飾りや創作の品を再現した物ではないかといわれている。まあそうだよな、現実的な話として、棘鉄球で鉄を殴ったら跳ね返って、自分や味方にあたる可能性が高いから、危なくて使えない。乱戦なんてもっての外だ。
なので改良したわけだ。パイプを1m以上にして鎖は短めにして、跳ね返っても自分に当たらないようにね。そして長柄の繰り出す遠心力を加えた一撃を弱っているスプリガンに叩き込む。パイプに直接鉄球を付けるのと何が違うのかは気にしない。きっとそれもロマンだ。
抵抗がなくなったところで十字槍に戻し、喉を目掛けて突き下しを放つ。
鑑定・・・よし、死んだ。
周囲を見回す。モーブは一匹倒し二匹目に向かうところだな。うん一人で問題ない。ドルトンは数人のドワーフと一匹を囲んで凹って居る。後一匹居るはずだが・・・居た、旧捜索隊のドワーフ数名が満身創痍で戦っているので、加勢に向かう。
召喚、ニードルスピア
長柄の先に細工を施したリーマを付けた手製のスピアで、先端部の20cm程は差し込み式になっている。
「離れろぉぉぉ」
ドワーフに警告を発しスプリガンの胸に向かってスピアを突き刺す。
軽くスピアを捻りそして柄を抜く。するとスプリガンの胸にリーマがついた穂先が刺さったまま残される。
そして、リーマで抉った傷から出血した血はパイプから排出される。スプリガンの耐久力は些細な刃物傷なら見る間に塞ぎ、出血を止めるほどだが、傷口に刃物とパイプが残っていては傷がふさがらない。パイプには複数の穴が空けてあり、より出血しやすくしてあるし、リーマには釣り針のような反しが作ってあるので抜くに抜けない。・・・我ながら作る武器が、卑怯とか邪悪とか反王道的な方向に向いている様な気がするが、戦闘の素人が小技でどうにかしようと考えて戦えば、そういう方向になるのも仕方が無かろう。
やがて、出血多量のスプリガンは動きが緩慢になり、先に戦っていたドワーフの一人が打ち込んだ鶴嘴のようなピックに貫かれ絶命した。
他の戦いも既に決着がついているし、俺と一緒に来たメンバーには大きな怪我はなさそうだな。
「召喚、駐車場。ドルトンとブライアンさん達は動けるドワーフと怪我人をその黒い部分に運んでくれ。俺たちと来た者以外は全員送還する」
正直疲れたし、もう帰りたい。怪我はしていないけど返り血で服も真っ赤になっているし、ヌルヌルして非常に気色悪い。とりあえずタオルと水を出して可能な限りぬぐっておく。原因究明しないと安心して眠れそうに無いから、もう少し頑張るかな。
ドワーフの捜索隊全員を送還した後、俺達はこの第四階層を調査する。ここにスプリガンが居たなら何か手がかりがあるはずだからな。
次回28日20時です




