14 魔法?
小出しです
3300文字程です
幅1~2m程の川に沿って北上する。上からの映像で木に隠れてしまう川なので、石の転がる河原があるような川ではなく、細い沢という感じかな?水深も10~20cmぐらいのようだ。
「襲撃者はゴブリンなのか?」
「どうだろうな。何か複数の生き物が取り囲んでいるのは見えたんだが、流石にその生物の正体までは分からなかった」
「・・・・」
流石にそろそろ誤魔化すのも限界だろうか・・・・。
「・・・俺のことが気になるなら、良い機会だから説明しようか?」
「ん?あ、いや、そうじゃないんだ。気になっていたのはエルフの方だ。エルフの村というのは弓や剣で武装しているんだろう? 少しぐらいゴブリンが集まったからといってそんなに危険な状態になるのか?」
あ、そか・・・確かに今までに見たゴブリンだったら数十匹いたとしても、村を落とせるか怪しいよな・・・そして、俺の事はさほど興味が無いと・・・・色々聞かれるのも困るけど、全く聞かれないというのは、それはそれで気になるんだけどなあ。
「なあ、例えばゴブリンには魔法を使える者が居てそれが襲撃してたりしないか? あと、モーブは何か魔法が使えたりしないか?」
確かモーブは土魔法1があったはずだ。今まで聞かなかったけど、良い機会だから確認しておこう。
「数は少ないが、確かに魔法を使える者も居るな。とはいっても小さな火の玉を出して薪を燃やしたり、飲み水を出したりとかそのくらいだぞ。俺は地面を魔法でへこましたり硬く固めたりできるが、俺とモーナがやっと入れるくらいの大きさの穴を作るのが一日にできる限界だな。戦いの役にはたたない」
「へえ、魔法は、どうやって使うんだ?やっぱり呪文とか魔法陣とか使うのか」
俺が死んだときは、術式や魔法陣が云々と女神様がいってたから、何らかのルールがあると思うけど・・・ゴブリンは呪文を誰から習うんだろうか?
「呪文? いや魔力を込めて“凹め”とか“硬くなれ”というだけだぞ」
え?
「何か決められた言葉を言うとかないのか?」
「無いぞ。よし、見てろ・・・・・凹め」
ベコッ
え~~~~~地面がすり鉢状に凹んだけど直径50cmぐらいだぞ。・・・なんかショボイ
・・・・一応試すか・・・・鑑定、今の魔法。
【鑑定:今の魔法】
今の魔法=簡易魔法 術式を用いず自身の魔力とイメージのみで、世界の理に干渉する魔法。つぎ込まれる魔力量が多いほど世界の理への干渉力が増し、イメージや言葉が正確で在るほど望む結果に近い効果となる。
うん?魔力量とイメージや言葉で結果が変わるのか? モーブの“凹め”を違う言葉にするか、イメージを変えさせれば結果が変わるのか?
「う~ん・・・・・召喚、大ハンマー」
俺は店の商品の一つである大ハンマーを召喚する。そういえば、この召喚もイメージと言葉で召喚の結果が変わったな。もしかして、これも魔法と同じなのか?
「よっこい~~しょっと」
おっさん流の掛け声で大ハンマーを振り上げ、地面に振り下ろせば、ベタンと音をたて、地面にてハンマーが食い込む。そして再び送還すると小さな凹みが地面に残った。
・・・・・
「何してるんだ?」
お、皆不審げな視線を俺に向けてくるね・・・・いや、レオノールさん。憐憫の視線は要りませんよ。俺、残念な人じゃないからね。
「なあ、モーブ。こうやってハンマーを振り下ろせばへこむよな。モーブならもっと重くて大きなハンマーでも使えて、そのハンマーならもっと大きく凹むと思わないか?」
「・・・まあ、そうだろうな。俺なら、大きくて重いハンマーを使えて、大きけりゃたぶん大きく凹むだろうな」
「じゃあ、それを想像しながら、もう一度魔法の力を使ってみてくれ・・・」
「・・・何の意味があるのか分からないが、やってみる・・・・・」
「そうだな、一抱えあるような大きくて重い鉄ハンマーを地面に打ち付けたら大きな穴が開きましたって感じで、魔力を込めて人の居ない方に向かって、はい、ドカン」
「? ドカン」
ベコン
お、直径1m深さ40cmぐらいか?魔術無双とかのレベルじゃないけど、最初のベコッと比べれば大分ましだな。
「やっぱりな」
「・・・どういうことだ?」
【鑑定:今の魔法】
今の魔法=簡易魔法 自身の魔力をエネルギーとして、世界の理に干渉し望む結果を導きだす術。つぎ込まれる魔力量が多いほど世界の理への干渉力が増し、イメージや言葉が正確で在るほど望む結果に近くなり効率の良い術となる。
「今のやり方の方が正しい魔法らしいぞ。まあ、それでも簡易魔法らしいけどな。魔力消費はどうだ?」
「そうだな・・・最初の時と変わらない感じだな」
実は鑑定でみても1回目も2回目も魔力を1しか消費してなかったんだけど、本人の体感的にも変わらないみたいだ。
「術を使う時にどうしたいのかを、確り考えて使うと効果が高まるぞ」
と、いいつつ俺は使えないんだよな。
「わかった。後で色々試してみる」
「そろそろエルフの村だと思うから、ちょっと休憩して準備しよう」
Mgr viewで周辺を確認する。スマホ画面を見れば少し離れた場所にうごめく一団が表示されている。赤い火は見えなくなっているが、これはリアルタイム映像なのだろうか?
「皆ちょっとこれを見てくれ、これはこの周辺を空から見下ろした状況なんだが、ここにゴブリンらしき生物が見えるんだ。ここまでの距離は大体200mぐらいだからもう目と鼻の先なんだけど、ここからこいつ等の匂いや音が聞こえるか?」
俺の問いかけに黒足とレオノールが耳や鼻をひくひく動かして周囲を調べている。レオノールは耳垂れてるけど、よく聞こえるのかね?
「お館様、匂いも音もあります。確かにこの先に居ますよ」
「今は戦闘中ではないようです。しかし、接近すればこちらの方が気付かれる恐れがありますよ、どうしましょうか」
「それは・・・・状況を確認できないと、なんとも言いようが無いな。ゴブリンに気付かれずに後どのくらい接近できると思う?」
「そうですね。周囲警戒の部隊が居なければ、ナビ?の警告が出るあたりまでは問題ないと思います」
「そうか、ナビを使えば楽に接近できるな」
スマホをサイレント・バイブにしてナビを表示する。画面の縮尺はよく分からないけど、とにかく拡大表示で映してみれば、画面の村方向に光点がいくつか確認できる。
「村の外は赤表示だから敵だな。村の中には緑色の表示が・・・・ん?」
なんか村内の半数は黄緑色っぽいし、いくつか明らかに赤いのが居るぞ。これ信号の赤・黄・青でたしたら黄色系は注意って事か?
「どうした」
「う~ん、よくわからないんだけど、村の中に味方表示と敵表示っぽいのがあるんだ。これ、接触する相手を間違うと俺たちが敵認識されるかもしれない。とりあえず、誰もいなそうな方に移動してみよう」
俺たちゴブリンの囲みが薄い方向に回り込み、静かに村へと接近する。そして、残り50m地点あたりまで、どうにか接近したが、森の木が邪魔で意外と視界が悪い。敵や村から見つかりにくいのは良いけど、村の様子も分からない。再びMgr viewを起動し最大拡大表示で村を確認すると。
「村の周りに防壁と水堀があって、どうやらこっち側からは進入できないと考えてるみたいだな」
敵の表示が一方に集まり、村の中もその方向に多数の表示がある。橋か何かあってその攻防をしている感じかな。
「シデン、日が落ちたら単独で村の様子を見てきてくれないか」
「偵察ですね」
「ああ・・・あの兄妹に会ってなければ、普通に尋ねたんだけどな。とりあえず村の様子を見てきて欲しい。潜入できそうな場所や村内の建物や人の様子など見てきてくれ」
「分かりました。日暮れにあわせ潜入し・・・・・」
「シデン? どうした」
なんだ?シデンが急に言葉を止め、固まってしまったぞ。
「お館様、拠点にいるリリパットからの連絡です。祖父のチームが例の髭もじゃを発見したそうですが、祖父からの伝言で『酷く嫌な感じがするので、接触せずに拠点に戻る』との事です」
「どういうことだ?」
「祖父にも、正体が分からないそうですが、発見後に観察していたら、急に姿が変わったそうです。祖父は『あれはドヴェルグでもドワーフでもない。もっと危険な化け物だ』と言っていたそうです」
姿が変わる? ドヴェルグでもドワーフでもない? 危険な化け物? 姿が変わる・・・・あ、まさか!




