13 兄妹の事情
書置きが尽きてしまったので小出になり、通常の半分程度の文量です
「お館様、その飲み物は何ですか?」
「これか? 店の商品の一つで栄養ドリンクってよばれてるものだけど、どうも回復薬に似た物みたいだな。で、こっちがその回復薬(似)を薄めたものだな。そのままだと効果が強すぎて体に悪いから、レオノールにも飲ませたスポーツドリンクで薄めてみたんだ」
説明をして、皆を見渡せば何やら妙な顔を向けられる。聞かれたので説明したのに、何だろう?えらく困惑している・・・・ まあ、説明している俺が分かってないんだから聞いたほうもさっぱりだよな。
俺達は二人の子供を起こさないように、別の建物内で現在の状況について話をする。
「それにしても、何故こんな所にエルフの村の子供が居たんだろうか」
「コボルトは成人が近づくと一人で森に入って、薬草を探したり獲物を捕まえてきたりする“課題”に挑みますが、エルフも似たような事をしているのでは?」
レオノールから己の種族の“常識”に基づく説がでるが、それは、バンジー成人式みたいな過酷な奴じゃないのか?仮にその通りだとしても、この子達は小さすぎないか。
「エルフの村から子供だけでこんな所に来るなんて、普通じゃありませんね」
「僕らの村に来ていたエルフは何時も2~3人で武装してましたよ。もちろん戦える人たちです」
だよなあ。ハーフ・エルフが人間より成長が遅かったとしても、この子らはまだ子供だろう。
「兄の意識が戻って話を聞けば分かるだろう。俺達も休もうぜ」
モーブの言葉で一時休憩することになった。もっともな意見ではあるんだけど、何かのんびりしていいのか?と気が急いてしまうな。
2時間ほど休憩した。
「レオノール、子供達の様子はどうだ」
「まだ寝ていますが、大分顔色がよくなりましたし、肌も張りが戻ってますね。口に含ませた、お薬が効いたのでしょうか」
「へ~ どれどれ。鑑定してみるか」
【鑑定:ライムート】
名前 :ライムート
種族 :ハーフ・エルフ族(男)
年齢 :10歳
職業 :エルフ村の子供
レベル:2
生命力: 8+1/12+1
魔力 : 25/25
筋力 : 15
敏捷 : 12
知力 : 40
状態 :空腹(初期)
スキル:
魔法 :土魔法1 風魔法1
ギフト: 森の守り
所持品:布の服
備考 :
【鑑定:ユリアンニ】
名前 :ユリアンニ
種族 :ハーフ・エルフ族(女)
年齢 :8歳
職業 :エルフ村の子供
レベル:1
生命力:7+1/10+1
魔力 : 20/20
筋力 : 12
敏捷 : 10
知力 : 37
状態 :空腹(中期~末期)
スキル:
魔法 :
ギフト: 森の守り
所持品:布の服
備考 :
生命力は大分回復したけど、空腹は相変わらずか。まあ食べてないから仕方が無いな。兄のほうにも回復薬を与えたんだな。そろそろ兄を起こしてみるか・・・
俺がライムートをゆすってみると、まもなく彼は目を覚ました。
「やあ、気分はどうだ?妹はまだ寝ているけど顔色もよくなったし直に目を覚ますと思うよ。おなかが減っていれば先に食べるといい」
「助けてくれて、ありがとう。おなかは減ってますが、妹が起きるまで待ちます。起きたら二人分いただけますか」
「ああいいよ、それじゃあ少し話を聞かせてくれないか。先ずは君達があの場所に居た理由を聞かせてくれ」
しばしの逡巡の後、彼は事情を話し始めた。
彼の話によると、彼らは両親と共にエルフの村で生活していた。父親は人間の元冒険者で、多少村中での反対などあったが、男の真摯な態度で村に認められていたらしい。
ある時彼らの父親が、二人のエルフと共に狩に出かけ、数日戻らないことがあった。その後三人は怪我も無く戻ってくるが、それ以降父親は人が代わったようになり、母エルフと口論の末、大怪我を負わせて姿をけしてしまう。幸い母エルフは命を取り留めたが、混乱がひどく魔法で眠らされているらしい。兄妹は母親の看病をしていたが、ある日兄妹が家に帰ると父親がいて、村の外へ連れ出された。(拉致)
あまりにも父親の様子がおかしいため、兄妹は逃走し空腹で動けなくなっていたのを俺たちが発見したということだ。
「よく逃げられたな。穴に隠れて何日めくらいだったんだ?」
「エルフには森の加護があるんです。ハーフの僕らにも弱い加護があって、外敵から見つかりにくくしてくれます。穴に入ってからは二日くらいかな。その前からあまり食べてなかったから逃げて直ぐ動けなくなりました」
そういや、ギフト:森の守りっていうのがステータスにあったな。確認していなかったけど、認識阻害系の効果かな。
「そうか。辛いだろうけどもう少し聞かせてくれ。母親の看病は誰かしていたのか?それと、父親の名前を教えてくれないか」
「一応、母さんの兄がお世話してくれる人を手配していてくれたよ。僕達にはあんまり・・・でも、母さんのお世話はしてくれてた。後、父さんの名前はヨルンだよ」
「そうか、ありがとう。話して疲れたろう、少し休むといい」
俺はログハウスを出て別のハウスに移動した。
話を聞いて気になったのは、数日行方不明になって人が変わったという部分だ。日本でよんだ小説や映画などでは、そうした場合だいたい偽者なんだよな。母親と揉めたのも、別人と気がついたからじゃないのか?そして、それは傍目には母親が混乱しているように見えただろう。
・・・・・・
悪い結果の場合どうしようと思いつつ、意を決して鑑定する。
「鑑定、エルフ村に居た元冒険者のヨルン」
【鑑定:エルフ村に居た元冒険者のヨルン】
名前 :ヨルン
種族 :人族(男)
年齢 :34歳
職業 :エルフ村狩人:(元冒険者:戦士)
レベル:15
生命力:30/80
魔力 : 15/15
筋力 : 30
敏捷 : 25
知力 : 50
状態 :両足骨折
スキル:剣術2 盾術1 槍術2 気配察知1
魔法 :火魔法1 水魔法1
ギフト:
所持品:硬革鎧 収納袋(1立米)
備考 :一週間前に魔物に襲われ負傷。他種族の助けを得て療養中。
!! 生きてる!?
「ライムート! 起きてるか?」
「え、あ、はい」
ログハウスに駆け込むと3人の視線が俺に注がれた。ユリアンニも気がついたようだな。
「ライムート、ユリアンニ、お前達の本当の父親は生きてるぞ!怪我をして動けないようだが生きている」
「「「え?」」」
「村から僕らを連れ出した父さんが怪我?」
「いや、そいつは偽者だ。本物は七日前に魔物に襲われて動けないから村に居たはずが無い。たぶんその偽者に襲われたんだな。今は他の種族に保護されて怪我の治療中らしいぞ。母親を怪我させたのも偽者だな」
「本当に?」
「ああ、間違いない」
「父さんが偽者・・・じゃあ、あれは父さんじゃなかったの?・・・」
「おとうさん偽者なの?」
「ああ、悪い父さんは偽者で、悪い魔物が君達のお父さんのふりをしていたんだ」
「偽者・・・よかった偽者だったんだ・・・うう・・ぐすっ・・・うぅぅ」
「ううぅぅわぁぁぁ こわがっだ、こわかったあぁぁ・・・」
その後しばらく兄妹は泣き続け、落ち着いた後食事してまた眠りについた。
休憩中、俺はスマホに“Mgr view”をインストールして森の写真をながめる。何かチラリとでも人口物が見えれば、ヒントになるかもしれないからだ。
Mgr viewを起動すると例によって見知らぬ星が表示され、現在地表示で一点が拡大されていく・・・・えっ? 今一瞬赤いものが表示された。なんだ?何が写ってたんだ・・・・。
「黒足、レオノール、何か燃えているような匂いはするか!?」
俺はユニットハウスを飛び出し、周囲の空を見回す。俺の様子に感じるものがあったのか、皆も直ぐ出てきたので、鼻のよい二人に確認する。
「いわれてみれば、木の燃えるような匂いが少しします」
「まずい、今すぐ移動するぞ。子供はログハウスごと送還するから、直ぐに出発準備してくれ」
「ケント、何があった」
「川沿いに行ったところで火事だ。子供がここに居たのと何か関係があると思う」
「エルフの村か?」
「たぶんな。そして、火事の原因は・・・・襲撃だ」




