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11 ×知らない天井 ○知らない足

元おっさんがPT組んで探索に出ます

 「じゃあ族長、後は任せたよ」

 「はい、お任せくだされ。畑や狩は指導いただいた通りしかとやって見せます」

 「いや、そんなに気合入れなくても、良いんだけど・・・」

 なんか俺が支配者みたいになってるけど、モーブも族長も長老も、俺はイーブンな関係だと思っている。確かに大家と店子の関係だし、知識チートで色々指導している立場ではあるけどさ、せいぜいチームリーダー的な感じ? なんかさ、俺の拠点に皆を呼び込んだ、理由というか目的が変に誤解されてないかなあ。俺的には“俺一人で持て余している拠点”を友好的な種族に利用してもらえればそれでいいんだけどな。だって一人じゃ寂しいじゃないか。

俺は、族長に耳打ちするように、こそっと言ってみた。

「族長はコボルト族30数名のトップなんですから、そんなに畏まらないでくださいよ」

「な、何を仰いますか、おやかた様は何れ、この“魔の森”を支配されるべき御方、ただ一族の長である私など比べるべくもありませぬ」


 えーなんでー


 「いや、支配とか考えてないから。ま、まあ後はよろしく」

 えっと後は長老のリリパット班か。

 「長老、くれぐれも無茶はするなよ」

 「大丈夫ですじゃ。ワシらリリパットは実態を見せぬ白き影。ある時は五つ、またある時は一つ、ワシらを捕らえられる者などおりませぬ」

 「なんかどっかで聞いたような台詞だぞ。それ親父さんの言葉じゃないだろうな」

 「ほう・・・流石というべきですかな。正にワガ親父の言葉ですぞ」

 「親父さん、どこの忍者隊所属だよ・・・まあいいや。ドワーフだったらうまく言い包めてくれ。ドヴェルグで敵対されたら、うまくまいてこいよ」

 「了解じゃ。まあドワーフの好きな酒と食料を持っていけば、正に入れ食い釣り放題じゃよ。ドヴェルグだったら見つからぬようにする」

 なるほど、この世界でもドワーフは酒好きか。

 「アリスタンとコボルト達も気をつけてな」

 長老達リリパットの調査隊には、ハイ・コボルトのアリスタンと数人のコボルトが同行する。彼等は弓やクロスボウで武装し、野営道具や食料を持っていくが、主な役目は酒の運搬係らしい。偵察だけならリリパットだけの方が、身軽だものな。

 「お任せくだされ。ケント様も娘を頼みますぞ」

 「あ、ああ、大丈夫だ。問題ない」

 “娘を頼みますぞ”からの了承は、返事を返しにくくて、少し変な返答になった。


 エルフ調査チームは、俺とモーブ、黒足、レオノール、リリパットのシデン(長老の孫)というメンバーでで向かうことになった。俺としては拠点防衛の最大戦力(ミニショベル使用)としてレオノールを拠点に残しておきたかったのだが、本人が同行を強く希望したため、代わりに当初予定していた黒足チームの3人を拠点防衛に残すことにした。正直森を歩いて探索とか怖くて仕方が無いんだけど、一人で行くわけでもないし、最悪車両があればどうにかなる。レーダーで先手必勝できる限りは大丈夫だろう。

 シデンは長老から道案内と偵察の要員として指名され、俺達と同行することになった。長老いわく「大人しい子じゃから邪魔にはならんじゃろう」とのことで、実際無言で俺たちの前を進んでいる。

 


 「あ、ちょっと待ってくれ。そこに生えてる草を持ち帰りたい」

 森の中を歩いて進みながら、見慣れた葉の植物を見つけ、鑑定してみれば、それは“赤紫蘇”だった。

 「その植物はどうされるのです?」

 レオノールが、不思議そうに聞いてきた。

 「もちろん食べるんだよ。赤紫蘇には殺菌作用があって、食べ物を傷みにくくするし食べれば腹を壊しにくい。これの青いやつは種があるけど、この赤いのは無かったんだ」

 「まあ、そうなのですか、知りませんでした」

 「コボルトもお腹が丈夫なのか」

「いえ、私達は匂いで食べ物の判断をしていましたから、変な匂いがするものはなるべく食べないようにしていましたね」

 なるほど。嗅覚が鋭いから腐りかけとは直ぐ分かるんだな。


 「特に赤紫蘇と食塩を混ぜたもので漬物を作ると、腐りにくく長く持つんだ」

 日本では梅干がその代表格だったけど、塩付けした紫蘇で作るシソの葉寿司なんてのもあったし、刺身に青紫蘇が添えてあるのもそうした理由からだ。

そういえばエゴマの種もあったな。族長に栽培をするよう伝えておこう。食べれば10年長生きできるとまで言われる。あれは良い物だ。

 「お、そっちの木は南天みたいだ、これも殺菌効果があるんだよ。あ、よもぎも生えてる。これも食べられるし、傷に当てれば出血を止める効果があるぞ」

 「あっちに・・・・・そこの・・・・・これも・・・・」



 「すまん。ちょっとはしゃぎ過ぎた」

 採取に夢中になっていたら、2時間以上過ぎていた。もうじき昼になるというのにさっぱり進んでない事に気がつき、俺は素直に詫びていた。

 「そうですね、採取は大事だと思いますが、今は先を急ぎましょう。帰りにまた採取すれば良いですし、この辺ならいつでもこれますよ」

 レオノールの言葉に皆無言で頷いている。すいません俺が悪かったです。



 移動を再開し1地時間後、昼食を取ろうという時に接近警報があった

『警告、東方およそ150mに、未確認生物反応があります。ご注意ください』

 「この先に何か居るぞ」

 俺達の間に緊張が走るが、一人だけ例外が居た。

 「この先ならたぶん問題ないですよ。少し大きなのが居ますが、ほとんど動きません」

 動かない?何が居るんだろう。シデンはかまわず進んで行き、やがてそれが見えてきた。

 「でかいな、これは・・・・亀?いや、アルマジロか」

 地面から甲羅の頭頂部まで1m以上で、甲羅の長さも2m近いぞ。よく見れば、側面に仕舞われた足がないし、甲羅?がいくつかに分割している。この特徴はミツオビアルマジロ?いったい何食ったらこんなにでかくなるんだ。

 「時々草や虫を食べてますが、普段は全く動きませんよ」

 ナマケモノ的なアルマジロか? というか・・・・・。

 「なあ、こいつ食べられるよ・・・な!?」

日本では、すっぽんを食べる。見た目が何か亀に似てる気がして皆に尋ねてみたら、次の瞬間ミツオビアルマジロが猛スピードで走って逃げていった。

「なかなか早いですね」

「あの甲羅は丈夫そうだったが、斧なら壊せるか?」

「追いますか?今なら匂いが辿れます」

 「いや追いかけないけど、それより食べられるかと、俺が言ったとたん逃げたぞ、まさかあいつ言葉が分かるのか」

 「「「「 え! 」」」」

 全員が驚愕してるけど、それは「言葉が分かる」事か、「言葉が分かる説」を唱えた俺への驚きなのか・・・どっちだ?

 「いや、だってタイミング的にそうだろ?」

 俺そんなにおかしなこと言ったか?・・・・・・言葉の分かる動物・・・おかしなこと言ったかもしれないな。

 「いや、すまない。今の話しは忘れてくれ」

 「いえ、そうではなくて・・・」

 「ん?」

 「あの動物じゃなくてお舘様ですよ」

 「んん? どういう意味」

 「ですからあの動物が、言葉を理解しているのではなく、お舘様が理解させているのです」

 「・・・・・え? どいう事」

 「あの、自分らお舘様に会ったあの時から、お館様の言葉が分かったんですよ」

 「それは、会話アプリがあったからだろ」

 「いえ、既に瀕死で身動きできない熊を、私達が攻撃した後です。あの時服従の姿勢をお見せした私達に対して「腹はずっと見えていた」と、言われましたよね。ですが、普通なら人間の言葉を私達が理解できるはずないんです」

 「・・・・マジで?」

 「はい」

 「自分らの言葉はお館様には分からなかったようですが、自分ら何故か理解できてました」

 「俺も最初からわかっていたぞ。確か「こんにちは」だったか?その後、無言で芋を渡してきたり、芋を食い始めたりで、話しかけても来ないし、正直おかしな奴だと思ったぞ」

 「な、なんてこった・・・」

 全然知らなかったよ。俺、デフォで言語チート持ち?でも、ちょっと半端すぎじゃない? 相互に意思疎通できてこその言語チートじゃないかな。あれ?じゃあ、あの熊も俺の言葉を理解していた? 十数時間動かなかったのは、やっぱり、俺の油断を誘う為の狸寝入りだったのか。

 「あの、僕は普通にあの動物が言葉を理解したのかと思って驚きましたよ」

 「ほんとに?」

「えっと、曽祖父が日本語を広めたらしくて、僕達の言葉がだいぶ日本語混ざりみたいなんです。だからお館様の能力に気がつきませんでした」


なるほど・・・。


「じゃあ、相手が動物でも俺の言葉は伝わってしまうって事なんだな」

「そうだな、言葉を使わない動物でも、意味が理解できてしまって逃げたんだろうな」

「次からは迂闊な事を、言わないようにするよ・・・」


 


 「今日はここまでにするか」

 道草やらなんやらで、時間の無駄が多かったから、あまり進まなかったけど、どうにか半分は進めたかな。

 「お館様、あのあたりが少し広くなってますよ」

 「わかった、そこに建物をだすよ」

 ユニットハウスを一つとロフト付ログハウスを召喚することにする。

 「入り口を向かい合わせにして、設置しておけばいいか」

 召喚リストを確認し・・・・

 「あ!」

 「どうした?ケント殿」

 「いや、前に狩ったツノシシが、召喚リストにあった。これどうしよう」

 「前に狩った?それは食べられるのか」

 データー化して保存だから腐るとか無いよな。

 「食べられると思うぞ」

 「なら食おう」

 「わかった。じゃあ出すぞ」

 召喚でツノシシ肉とハリウサギ肉が入ったダンボール箱を取り出す。

 「既に肉になっているのか。ハリウサギもあるが、どっちを食う」

 「ツノシシにしよう。この一塊で良いよな、これを焼いて食おうぜ」

 「お館様はきれいに捌けるんですね」

 「以前熊をばらして毛皮取ったろ、あれの応用だ」 

この肉は資金化を利用して肉にした物なので、自分で捌いたわけじゃなからな。

包丁、まな板、カセットコンロと鉄板を取り出し、肉を薄く切る。

「召喚:調味料セット」

商品や休憩室にあった調味料を毎日集めてためた調味料を取り出し考える。

「醤油とインスタント味噌汁の生味噌と砂糖と・・・あ、あれ使おう」

「召喚:おやつセット」

唐辛子は苗があったけど育ててないからこれを少し砕いて。

「召喚:日本酒」

 呼び出したものをブレンドしていく。

「醤油・味噌・砂糖・100%りんごジュース・砕いた柿の種・日本酒を適量で混ぜてっと」

焼いた肉に作ったたれを少しつけて・・・・うんうまい。豚に比べて味が濃いな。でも、脂身もしつこくないし肉も柔らかい。今の季節ってうまい時期なのかなあ。そしてたれも思ったよりうまくできてる。少し作って商品化しておこうかな。商品は消費判定されなければ腐らないから店に常備できるし。

 「皆このたれを少しつけて食べてみてくれ、悪くないと思うぞ」

 モーブがトングで肉を焼き、フォークで肉をたれにつけ口に運び咀嚼し飲み込むと、無言でフォークを置いた。そして、真剣な顔で俺を見つめ言った。

 「頼む、これを食べるなら酒を飲ませてくれ」

 「何がいい」

 ふ、すっかり酒好きになってしまったようだな

 「冷えたビールがあれば冷えたビールがいい」

 俺は頷き、冷えた缶ビールが入ったクーラーBOXを召喚した。

 「お館様、自分も、ビールをいただきます」

 「私はワインを飲みたいです」

 「僕はさっきのりんごジュースを飲みたいです」

 「あいよ」

 

焼肉を食べていると葉物野菜が食べたくなるな。こんどは野菜も送還しておこう。

 

 「そういえば、モーブの子供はいつごろ生まれるんだ」

 「む、もぐもぐ・・・ごく。それが、俺にもよくわからない。ゴブリンならもう2回くらい生んでいそうなんだけどな」

 「人間なら、300日以上かかるから人間基準になったのかもな。出産に関しては俺たちにできることは少ないから、コボルトとリリパットのご婦人方を頼るしかないな」

「そうだな、皆が居て本当によかった。俺とモーナの二人きりで出産になっていたかと思うとぞっとする」

「だな」

 後でモーナを鑑定してみれば何かわかるかな?流石に何かちょっと分からないたびに神様にメールするのもどうかと思うしね。

 「ケント様、コボルトは70日弱なんですよ」

 「ん?何がだ?あ、出産までの期間か?・・・・って大丈夫か?少し飲みすぎじゃないか」

 レオノールに声をかけられ顔を向けてみれば、なんか顔がやばいです。

 元はボーダー・コリーみたいな顔だったと思うけど、進化後にノーズが縮んでマルチーズみたいになった。そして今、寝落ち寸前の子マルみたいになっている。ペット的な意味合いで言えばめっちゃ可愛いから、動画サイトにアップできたら凄いアクセスになるかもしれない。

 「何言ってるんですか、私はまだまだ平気ですよ」

 いや、確かに呂律はしっかりしてるんだけどさ、俺、今までに一度も“ケント様”とかよばれたこと無いぞ。そして、その眠そうな顔は絶対酔ってるだろ。

 「黒足、どう思う」

 問われた黒足は額にしわを寄せしばし考えている。


いや、額のしわは彼の標準装備だったな。ぶっちゃけ今の黒足はパグ似だし、父親の族長はブル系という厳つい顔立ちの親子だな。以前の黒足はスピッツみたいな感じだったような気がするんだけど、何でこんな姿になったのか謎だよ。

 「そうですね、自分にも酔っているように見えますね」

 なんか黒足が、小声でぼそっと告げてきた。こいつレオノールに聞こえないように小声で言ったな。案外危機回避能力が高いじゃないか。 

「もう肉も無くなったし、明日に備えて寝るのが良いんじゃないか」

おお、ナイスだモーブ。俺は君の勇気に賞賛を送りたい。

 「よし、モーブの言うとおりだ、明日もあるし寝よう。シデン君もそれで良いね」

 「はい。もう十分食べましたし、僕も眠いです」

 「という事で、レオノールもう寝るぞ」

 「え、そんな急に・・・・皆も居るのに・・・」

 ああ、なんかやばい事言ってるし。頭かなり茹ってんぞ。

 「いや、そうじゃないぞ、隣の建物で雑魚寝だぞ。妙なことは無いからな」

 「そ、そうですよね。ここじゃ皆が居るし、お風呂もありませんものね」

 「いや、そうじゃないぞ、そういう意味じゃないんだ。普段以上に今日はアレだからもう寝たほうが良いぞ。隣のログハウスにはロフトがあるから、そこで寝るんだ。俺たちは下で寝るからな」

 「え~~まだ平気ですよ~」

 「だめだ、さあ皆移動して寝るぞ」

 「え~~・・・・」

 ・・・・・・・・・

 チュンチュン・・・チュンチュン・・・・

 知らない天井・・・・じゃなくて、知らない足だ・・・・・

 「うお~い! レオノール。お前どんな寝相だよ」

 「ふぁい?・・・・ここ、どこですか~」

 俺が目を覚まして天井を見れば、上のロフトからレオノールの両足が、ぶら下がっていた。しかも、俺の顔の真上だ。

「お館様、何事ですか!・・・・・レオノール・・・・相変わらずだな」

俺の声に驚いた、黒足が飛び起き状況を把握し、レオノールの現状をみて呆れた声を出す。そういや従兄妹関係だったな、昔からこんな寝相という事か。俺が飼ってた猫も凄い寝相だったけど、ハイ・コボルトの寝相だとちょっとびっくりだな。




「さて、今日はエルフの村まで行くぞ~しゅっぱ~つ

「お館様、頭が痛いです・・・・」

「そうか、辛いか、じゃあ荷物と一緒に送還してやろうか? ただし、次の瞬間には拠点で、レオーネさんとご対面だぞ」

「ううう・・・お館様、意地悪です・・・」

 「黒足・・・」

 「自分も父も伯母には逆らえません。この醜態が知れたら、恐らくこちらに飛び火しますので、自分の足で歩かせましょう」

 ・・・・やはりレオーネさんが影の実力者っぽいな。

 「よし、じゃあ出発!」


次回、はたしてエルフは出るのか?

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