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15-6



  ◆◇◆



 二人の記憶は合致していた。

 血にまみれた戦場に雨が降り、きっかり五分後。戦場の音を全て呑み込むほどの雷鳴が轟くことを。

 その時間が迫る。

 一人の戦士が勇猛果敢……とは程遠い声と共に無謀に剣を振り上げたところを敵となる男が槍で心の臓を無慈悲に刺し貫く。

 戦場に響き渡る断末魔。それからおよそ一〇秒……

 九……八……──────……二……一……

 ──『零』──

 その瞬間を告げる天をも裂く青白い(いかずち)が戦場へと叩きつけられあらゆる音を呑み込む。

「ウオオオォォォォ──────────ッッ!!!」

 復讐に疼いた溶岩のような感情がブラクスの喉を通り、獣のような咆哮となって吐き出される。

 赤銅(しゃくどう)色の巨躯を同色のレイが包むと同時にその巨大な戦斧を両手で振り上げたガランベルは一瞬にして距離を詰める。

 まるで映像がコマ落ちしたかのように突然目の前に現れたガランベルは、振り上げた戦斧を渾身の力と憎しみもって叩きつける。

 加減など微塵もない。戦斧をガリエンは右手に構えた半球状に流れた円盾の丸みを利用し戦斧の軌道を自身の体がない更に右へと流す。

「ぐぅっ──────」

 万全を期した構えでありながらも衝撃は盾を貫き、ガリエンを通じてジールにまで流れる。

 正面から受け止めればそれこそ盾ごと二つに割られ、そのまま力に任せて二つに裁断されていただろう。

「ぬぅっ!?」

 渾身の一撃は軌跡がずれ、青草が生え立つ大地に深々と突き刺さる。

 ガランベルの重心が武器の先端まで行き、体を引き戻すことの出来なくなった体勢。

 時間にしてみれば『刹那』と呼ぶにも等しいほどの僅かな瞬間だったがジールからすればそれは攻撃の機を得るに十二分に値する隙であり、ガランベルが見せた致命的な隙だ。

 考えうる最大の好機を前に左手に構えたランスが閃く。

「己で扱いきれない武器を使うなど愚の骨頂だっ!」

「扱い切れぬ武器だと……笑止っ! ふはぁっ!!!」

 大地に喰い込んだ戦斧をガランベルはブラクスの一喝とともに片手で軽々と引き抜くと同時に閃くガリエンのランスを弾く。

「ぐぁっ──!!!」



 信じることができない光景だった。

 大地に深く突き刺さった戦斧に大きく崩れた体勢。それは確実の隙だったにもかかわらず、まるで小枝を振るうが如く片手で雑に戦斧を振り切る。

 受けた盾ごとガリエンが、血と屍に穢れた戦場に転がる。その姿を見下したブラクスは笑うでもなく、ただ口を結び憤然とした表情だけを浮かべている。

「あの瞬間によく盾を構えられたものだ」

 褒めている言葉を吐くときもブラクスの表情は重たく決して笑うことはない。

 相手を礼讃とも嘲笑とも軽蔑とも判別のつかない不動の表情だけが顔に刻まれている。

「それだけ巨大な斧をそんな軽々と扱うことはさすがに予想していなかった」

 ゆっくりと起き上がったガリエンが再びランスを構えた。身を守る防具である円盾には戦斧が食い込んだであろう巨大な横一文字の傷がつけられている。

「皮肉なものだ。

 貴様に負け、全てを失った怒りがこのガランベルを目覚めさせるだけの怒りを俺に与えた。そしてそれが俺を更に強くして今、貴様の前に敵として再び立っている。」

 ブラクスはこの戦場に立つまでの人生においてただ一度の敗北を喫したこともない。

 たった一度の敗北。その記憶はいまだ昨日のことのように鮮明に覚えている。

 思い出すたびに顔面に刻まれた派手に横断した傷が疼く。血管を流れる血がジールへの殺意と怒りによって湧き立つ。

「今日まで俺を強くしてきたのはこの怒りが、消えることのない貴様への憎しみがあったからだ」

「貴様はオリジンに乗る前から強かった。それは私が保証する。それ以上の力を求めてなんと──」

「ほざくなっ!」

 純然たる怒りの一喝。衝撃波と見紛うほどの空気の振動がガリエン、そしてジールへと叩きつけられる。

 熾火のごとく赤く煌々と輝くブラクスの双眸には怒りだけがただ燃えている。目に映る全てを破壊し尽くさんほどに赤く危険に。

「勝者から敗者へ送る賛辞など同情以外のなにものにもならん。

 俺は貴様より弱かった。その一点の事実だけを俺は敗北によって思い知った」

 敗北。それも口が裂けても僅差とは呼べないほどの完敗だった。

 致命傷となりえる傷の一つもガリエンへと満足に与えることができなかった。

 万に一つも敗北など考えたことがない己への絶対の自信が瓦解した瞬間だった。

「だが負けたこと以上に腹立たしかったのは、貴様が一度としてあの戦いで全力を出してなかったこと。そして、俺が貴様に全力を出させるに足らないほど弱い存在であり、貴様の強さを否定できなかったこと」

 尽きることのない怒りが赤銅の輝きとしてブラクスからガランベルへと伝播していく。

 まるで痣のようにオリジンの全身に、そしてライダーの全身に浮きあがる幾何学模様。

共鳴回路(グリスフ)……」

 オリジンの意思をライダーが完全に凌駕し、己が手足として従属させた証の紋様。

 赤銅の輝きは雷となりガランベルの周囲を這い回る。

 知覚範囲が人間の限界領域を大きく超えたブラクスには、目に映るたった一人の男に内在する心の臓が奏でる鼓動すらも聞こえてくる。

「強さとは何かを守るためにある。そう説いた貴様に圧倒的なまでの力で俺が勝利を手にする。貴様の亡骸の上でな。

 力とは所詮自分のものであり、それ以外の何ものでもない。貴様が取っている行動はあくまでその強大な力の使い方に過ぎない。そしてその力の使い方を今度こそ俺の力が否定してやるっ!

 さあ、俺にお前の真の力を見せろっ!」

 屹立する怒りがブラクスを突き動かす。

「貴様は初めて相まみえたときから変わらない」

 呆れるような呟きとともにジールはこれみよがしのため息を一つ吐いてみせた。

「個の力に(いだ)く偏執を信じ、周囲を省みないその孤独のうえで手に入れた強さ。

 教えてやる。人一人では決して手に入れることのできない領域の力を。

 守るものがあり、仕えるべき主君があってこそ届く境地にして私の全力を!」

 煌く蒼白のレイがガリエンを、そしてジールを覆っていく。

 ブラクス同様に全身に共鳴回路(グリスフ)を刻んだジールが清涼なる蒼き輝きを携えた瞳で目の前の銅の輝きを睨みつける。

 拡大された知覚がガランベルの周りを這う(いかずち)の一本から弾ける火花の一つすら見逃すことない。



 憤怒の赤銅(あかがね)の輝き。

 高潔の蒼白の輝き。


 (はた)から見ても対極的な輝きを持つ二体のオリジンは、模造品であるレイ・ドールが辿り着けない『オリジン』の名を冠する者のみが扱える輝きを放つ。

「このレイが貴様の真の力か」

 拡大していく二つの輝きが触れ、境界を作り、空間を奪い合うように(せめ)ぎ、拮抗する。

 その中央は人が介在することのできない力場を作り出し、そこから放たれる衝撃にブラクスは陶然としてみせた。

 ついぞ想像のなかでしか見ることのできなかったガリエンの……否、ジールの真の力。

 それはブラクスの想像していた姿を一足飛びで超えていくほどのものだ。

「この日を、この時間を、この瞬間をどれだけ待ち望んだかぁ」

 語る言葉は次第に溢れ出る喜色を抑えきれないものとなり、ブラクスの顔が歪んだ笑みを浮かべる。

「さあ()くぞっ!!!」

「来いっ! 貴様の強さを私は否定する!」

 まるで互いの意思を確認するかのような言葉尻には既に二体のオリジンは動いていた。

 音を置き去り、光すらも超え、決して揺らぐことのない二つの信念を携えた武具。

「ぬぉぉぉ────────帝方雷打ぁ!」

「蒼の閃耀(スペリア)っ!」

 あらゆる物を砕く猛り狂い迸る赤き雷。

 あらゆる物を刺突し貫く蒼き輝き。

 二つの輝きが交差するとき発生する未曾有の衝撃が形成していた境界を容赦なく、微塵として原型を留めず吹き飛ばす。



  ◇◆◇



「はえぇ~~」

 リンダラッドは目の前に映し出された二人の戦いを前に開いた口が塞がらない。

 蒼き閃光の如く、残像すら満足に見えないガリエン。そしてあらゆるものを容易に破砕してしまうであろう荒れ狂う赤銅の雷を全身に纏い、放つガランベル。

 それはリンダラッドの知るところのレイ・ドールの戦いをゆうに超越したものであり、その戦いを前にリンダラッド以外もまた、目の前に広がる苛烈極まる、それでいて人智を超え神々しくすら見えてしまう戦いに陶然とした思いを抱くことしかできない。

「これが……オリジン同士の戦いでござるか」

 目の前で丁々発止を行う二体のオリジンを前に輪蔵が何とか捻り出せた言葉はその一言だけだ。

「綺麗やな」

 清涼にして煌く蒼白の輝き。

 憤怒にして猛る赤銅の輝き。

 互いの武器が幾度と交差するたびに、その輝きを纏った粒子が宙を舞う。

 蛍のように大気を舞う二色の粒子は、蒼白のランスが振るわれるたび、赤銅の戦斧が雷を放つたび、踊るかのような二体のオリジンの周囲を幻想的に彩る。

 星々を想起させる粒子に包まれた輝きのなかで二体のオリジンは舞蹈(ぶとう)を大地に刻み、指揮棒(タクト)の如く互いの武器をその空間に振るう。

「はぁぁぁぁ──────────っっっっ!!!!」

「ヌオオオォォォォォォ────────っっっ!!!!!!」

 戦いを続ける二人の声だけが幻によって作り出された戦場の音すらも圧する。

『最強』と言う妄執にとらわれ、その称号を奪還するために全てを捨てた男。

 己が守護すべき存在を守り抜くために全ての障害を排除する男。

 互いの譲れない思い。決して揺らぐことのない信念だけがレイとなり輝き、放たれる。

「二人の力が互角だからこれだけ綺麗に輝けるんだろうね」

 戦いを眺めるリンダラッドをリビアは一瞥してみせた。

 特徴的な緊張感のない緩んだ口角に宝石をそのまま嵌め込んだかのような碧眼の双眸。

 愛して止まない少女が体を失い、幻として奇跡とも思える状態で目の前にいる。

「でもこれでジールが負けちゃうとお嬢様は……」

 語るまでもないリビアはその先の言葉を口にはしなかった。

 語らずとも全員が状況は十二分に理解していた。ジールの敗北が意味するところを。

「大丈夫じゃないの? ジールが勝つでしょ」

 戦場の轟音だけがリビア達の沈黙に被さるなかで当事者であるリンダラッドだけが気落ちなど見せない、天真爛漫な笑顔を浮かべていた。

「いやに自信ありやな」

「僕を護るときのジールは無敵だからね」

 屈託のない笑みでリンダラッドは応えてみせる。その言葉に気後れも、躊躇いも、逡巡すらない。

 事実から成り立つ疑いようのない信頼。百、千、万にも及ぶ戦いの全てに黒星を知らないジールの『無敗』をただ無垢な赤子のように疑うことを知らずにリンダラッドは信じている。

「そ、そうよ! あんたが負けたらお嬢様が助からないんだから! 最強のライダーだって言うならそんな奴、バシッとやっつけてさっさとお嬢様を助けなさいよっ!!!」

 戦う二人の姿もまた幻であり、ここで叫んだところで声など届くはずもない。それを承知したうえでリビアは声をあげる。

 応援とは違う。それは叱咤に近いものであり、願望でもあった。



  ◇◆◇



「吹き飛ぶがいいっ!

 天雅雷走っ!!」

 獅子吼をあげるブラクスの総身から噴出す韓紅(からくれない)の輝きが(いかずち)と化し大地を穿ち巨大な奔流を作り出す。

 幾百へと枝分かれを起こす雷。その雷の矛先は例外なく、清涼にして蒼白の光と化し、宝石と見紛う輝きを放つガリエンの一点へと収斂していく。

「蒼の円盾(フィアンマ)っ!!」

 迫り猛る赫雷を前にガリエンは腰を落とし左手で握りこんだ円盾の曲線が駆け抜ける轟雷を弾く。。

 視界を奪う二色の輝きが収まり、濛々と立ち込める煙すらも払いのけた先に立っているは、無傷のジールとガリエンであり、雷を直撃したであろう盾にすら焦げ痕一つ残っていない。

 優雅にして絶対の不遜を許された力を持つが、そのうえで慢心や油断を欠片として見せない、騎士としてかくありたいと望む多くの者達の願いが具現化したようなその姿を見てブラクスは込み上げてくる笑みを抑えることができない。

「素晴らしいな。その輝き! それこそが貴様の本当の力か?」

「絶対の防壁にして、如何なる力からも守り抜く。貴様が見たがっていた私の、高潔のオリジンであるガリエンの力だ」

「オリジンの力のことではない」

「ん?」

 笑い慣れないブラクスが喜色を隠せない歪な笑みを浮かべ、総身から放たれる赤銅が更に濃くなる。

 纏う雷は既に銅に浸食され赤銅色と化している。それに包まれ狂気すら帯びたその双眸で、眼前に立つ清涼の輝きを持つジールを睨み付ける。

「それだけの力を持ち、微塵の慢心も油断もない。オリジンすら容易に従える精神力。まさに最強の名を持つにあまりに相応しい男だ。その貴様を倒す日が来たと考えるだけで、あの日、敗北を知り、与えられた絶望すらも超えていけると言うもの」

 ジールの凛然としたその態度を、そして操るガリエンを、屠りその肉を()み更に高みへと上がれるであろうことを想像するだけでブラクスの狂気が高まっていく。

「力の妄執に呑まれた愚かな男。しかしそれを生んだ一端が私にあるのならば、責としてそれを処理するのも私の役目だ」

 先細りにして鋭い、刺突のみにこれ以上ないほどに特化した銀色に輝く円錐形のランスを構えたガリエンの操縦席で、力に狂う男を前にジールは一つ息を吐く。

「強大な力を持つ者に問われる資質はいかにそれを律することができるかどうか。それだけだ。貴様も一度は王族に仕えた身ならばノブレスオブリージュの意くらいわかるだろ」

「……ああ。よく知っている」

 その言葉はブラクスがかつて仕えてきた王女、メルリアの考えそのものだ。

 脳裏に自分を呼びかけるその声が再生されると同時にブラクスの喜色に満ちた顔が僅かに曇り歯噛みしてみせた。

 生まれたときから一国を治める立場の王女として育て上げられたメルリアの口癖であった。

「強き力、立場を持つものにはそれ相応の責務と品格が求められる……とあいつは言っていた」

 若くして滅私奉公の旨とし、常日頃から己の欲望を戒め、市井の者達を第一に案ずる彼女の姿をブラクスは、復讐に狂うその瞬間まで傍で見届けてきていた。

 ゆえに自分とは歩むべき道が違うことも疑うことがなかった。

「強い力を持つ者は何にも御されることなく、己のあるがままに振るうことを許されている。それこそが力の真理だ」

「仕えた主君を裏切るように国を捨てたのも、その考えが根幹にあったからか」

「そうだ!」

 躊躇いなどなくブラクスは言い放つ。

「復讐のために強くなり、復讐のために動く私が王女を受け入れることはできない。

 王女は弱い、ゆえに私を止めることが出来なかった」

 思い出すは自身の復讐への思いを告げたときに受け入れることのできないメルリアの涙に塗れた顔と、引き留める声だ。

 しかし、それでブラクスの復讐心が収まることはない。

「力無き者の思いや願いなど所詮そよ風の如き存在。人を動かすにはあまりに無力っ!」

 オリジンを手に入れられたことも全ては復讐のためであり、この瞬間のためだけだ。最強への執着。そして復讐。その溶岩のようなどろっとした感情だけがブラクスを突き動かす。

「力無き者の言葉は届かないか……それならば貴様以上の力をもってしてその考えを私が是正してみせよう。

 貴様がそよ風と称した声を持つ弱き者達を護るための力を貴様に示してやろう」

 全身に刻印として駆け巡った幾何学模様を通じ、伝播し蒼白のレイがガリエンへと流れ込んでいく。

 これまで同様に蒼白の輝きがジールを包み込む。

「フフフ……ハッハハハハハッ!!」

 快哉な声をあげて大口を開けたブラクスを前に睨み付けるジールの瞳に怪訝の色が宿る。

「本当の力か……ならば見せてもらおう。私の復讐心を、全てを捨てて得た私の力を、更に超える貴様の力とやらをっ!」

 刻まれた共鳴回路を駆け抜ける赤銅の輝きとともに再びガランベルはその巨大な戦斧を振り上げる。

 黒を孕んだ赤銅の雷が総身を這うように迸り、大地を駆け抜ける。

「貴様との戦いを終幕としよう! 

 ハアアァァァァ──────」

 体内に吸い込んだ酸素を一喝でもって吐き出した。顔面を横断した傷痕が開くかのように両端から血の筋が流れる。

 吐き出された声はもはや衝撃波にも近く、映し出された戦場の幻影が大きく揺らぐ。

「……蛇」

 可視化されるほど太い二本の赤銅色の雷がガランベル、そしてブラクスの体を巨大な大蛇のように這い回る。

 これまでに放ってきた雷とは比較にならないほど巨大な二本の雷。それは生物のように不気味にうねり、絡み合い、生み出したブラクスの体すらも侵し焦がしていく。

「はあ……皇雷双蛇。

 妄執にとらわれ命を賭して力のみを追求した私の力を見るが良いっ!」

 肩で息をし、額に浮かんだ汗が、頬を伝う血と混じる。目元に浮かんだ隈。それは紛れもなくレイ欠乏の証であり、ブラクスの限界を大きく超えている。

 体内におけるあらゆる箇所の生気が吸い出されるような途方もない倦怠感だけがブラクスを襲う。一度を目を閉じれば二度と覚めることはないほどの徒労感のなかでブラクスを支えるものは、メルリアではなかった……


 ──最強への執着と妄執だ。そしてそれに届かなかった自身への憤怒──


「高潔の騎士っ! 我が最大の力を受けてみるがい────────っ!!」

 大地を抉り、大気を焼き払い、あらゆるものを飲み込む轟雷がブラクスの言葉すら呑み込む。

「騎士としての矜持を失い、力を己が欲望のままに振るう醜悪の戦士に、私が、騎士としての絶対の力を示そう。

 ガリエンッ──────」


 赤銅色の雷。

 蒼白の煌き。

 二つの輝きが交わる。

 それは白のレイによって作り出された戦場の幻影を、微塵として残留することをできないほどの二つの欲望の衝撃。


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