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イリエの情景~被災地さんぽめぐり~  作者: 今田ずんばあらず
終章
108/110

旅のしおり(既読)

依利江:三ツ葉、元気?


三ツ葉:久しぶり。元気だよ。


依利江:あ、ひさしぶり!

依利江:赤貝食べたい! 名取の!


三ツ葉:また?


依利江:いーじゃん、赤貝!


三ツ葉:この前も食べに行ってたよね? 私は仕事で行けなかったけどさ。


依利江:うん。でももう再発しちゃった

依利江:職場の飲みで刺身が出てさ、それが原因

依利江:フラッシュバック!


三ツ葉:というか赤貝の旬は12月~3月だ。


依利江:こりっこりで、最高じゃん!

依利江:あれ、赤貝、旬ってあるんだ・・・

依利江:ならセリ鍋! シャキシャキだよ!


三ツ葉:セリは春の七草なんだけど。


依利江:知らなかった

依利江:じゃあじゃあ海行こう、海!


三ツ葉:閖上(ゆりあげ)海岸? 好きだねえ。


依利江:三ツ葉だって好きでしょ?


三ツ葉:否定はしないよ。

    依利江、今印刷会社に勤めてるんだっけ?


依利江:うん。地元でヒイヒイ働いてるよ!

依利江:で季節が変わったら東北遊びに行くの

依利江:恒例行事? みたいな?


三ツ葉:もはや日課となりつつあるよね。

    頑なに東北へ越さないところが依利江らしいよ。


依利江:東北遊びに行くために働く人になりつつある怖い

依利江:ま、毎度課長からのお小言を聞くハメになるんだけどね・・・。

依利江:頑張って働きます。


依利江:空いてる日ある?


三ツ葉:今ブラジルなんだけど。


依利江:マジ?


三ツ葉:マジ。

三ツ葉:リオだからすぐ戻れるけどね。


依利江:その距離間隔よくわかんないです

依利江:感覚だった


三ツ葉:来週日曜日の13時から19時20分までならいいよ。


依利江:これまた細かい時間指定を・・・


三ツ葉:日曜は朝から盛岡で舞台の打ち合わせなんだ。

    翌日は早朝から名古屋を撮る。

    20時8分名取発の電車に乗れば間に合うから。


依利江:そんな時間の電車で間に合うの?


三ツ葉:中央新幹線なら品川から40分で着ける。


依利江:文明の利器


三ツ葉:松実も誘いたいところだけどここしばらくは忙しい日が続くって。


依利江:そっかあ。

依利江:会いに行こうと思ったんだけどなあ


依利江:てか、三ツ葉と松実、ほんとなかよしよね。

依利江:この前も会ってなかった?


三ツ葉:仕事がらみで女川行くこと多いからね。

    行ったら松実と会うくらいするさ。


依利江:いーなー

依利江:三ツ葉も忙しいんじゃない?

依利江:最近仕事の幅広げすぎな気がする・・・


三ツ葉:ありがたいことに方々から仕事の依頼が来ててね。

    大事な時期なんだよ。


    写真家、ライター、イベントプロデューサー、

    地域振興サポーター他諸々。


    名刺の肩書だけで三行使ってるの気づいたときは

    さすがに自重すべきだと思った。


依利江:うわあ・・・


三ツ葉:多すぎる肩書は不審の種だからね。


依利江:あっ、三ツ葉今ブラジルって言ってたよね?

依利江:時差あるでしょ。今何時?


三ツ葉:時差12時間。今こっちは午前11時だよ。ブランチとってた。


依利江:ごめんね、長々と。

依利江:明日仕事だからそろそろ寝ます。


三ツ葉:おやすみ。次の日曜日ね。


依利江:楽しみにしてる! おやすみなさい!



   φ



「さて、と」


 タブレットをバッグに仕舞う。

 そろそろ取材先の店へ挨拶しに行く時間だ。


 サン・ジョゼー通りのカフェテラスで飲むエスプレッソは格別だ。

 リオデジャネイロに来たら必ずここで一服することにしている。


 モザイク模様の通りには、ブラジル特有の熱気と活気が溢れていた。



 ブラジルから日本までは27時間もあれば辿りつける。


 あっという間だ。

 今や遠さの指標は物理的な距離ではなくインフラの充実度だろう。



 来週の日曜日。

 頭のなかでスケジュールを追加する。


 依利江と会うのは何年振りだろう。

 前回会ったのが遠い昔のように思える。

 でも実際は半年ぶりくらいで、きっと再会した途端つい先日会ったような感覚を抱くのだろう。



 私たちは大人になった。



 依利江とは相変わらず仲良くやっている。



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