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はじまりの続き

私は基本的に珍しいことが好き。

旅行に行けば、現地にしかない観光地を見てまわるし、

食事に行けば、変なメニューを探して食べる。


そして私にとって、告白、というのも珍しいことだった。

珍しい、というか、初めてだったわね。

だから、そんな理由で交際を始めることにしたわけよ。


ただ、この瞬間まで、彼のことはあまり考えたことがなかった

名前は知っていたし、話したことはあった。でも、それだけ。

なんか賢そうな人って印象。

嫌いじゃないわ。嫌いじゃないんだけど。

でも、好きなのか、と言われてもどうなのかしら。


あの後の私は、有名な商店街を闊歩したわ

洋服店なんかに入って、そして目の前、いや上に、帽子がある。

彼が買ってくれたものだ。

フェアトレードのベレー帽みたいなの。

我ながら似合っていると思う。良いものだわ。


楽しかったし、満足してる。

一つ不満があるとすれば、それは私自身ね。

ミールの処理は明らかに状況に追い付いていなかった。

私は正しいタイミングで笑えなったし、正しい言葉が出なかった

フリーズを起こしてしまう。例外処理が間に合ってない

正しい応答が記憶されていないため、呼び出せないし、だからといって、考えつかない。

これは勉強が必要ね。

私の会話の本質は記憶にあるの。セリフを正しく考えられないのだから。

それを会話と呼べるのかという問題は別の機会にするとして。

ひょっとすると、"普通"のヒトの会話も、そんなものなのかしら。


そんな状態のミールだから、今日はシャルまで使ってしまったわ。

私のクラシックが鳴りやんだのはいつ以来だったかな。やるわね、彼。

軌道の乱れた私には関係なく、相も変わらず、セカイは回る。

ああ、回れ、回れ。回れ!

回ってしまえ、ミールとシャルが混じっちゃうくらい!


さて。

今はこの目の前の状況に向かわなきゃ。

インターネットによると、デートのあとにはメールを書かないといけないらしい。

特に今回私は帽子を買ってもらっちゃってるから。

文面はどうしたらいいのかしら。

こうして考えている間も彼はメールを待っているだろうし、早くしないと。

人の気持ちなんかわからない、当たり前だけれど、かと言ってわざわざ不快を招くようなことはしたくない。


『今日はありがとう。すごく楽しかったよ。帽子も大切に使うね』


ここまで打ってみて、早速手が止まってしまう。

気の利く言葉は私にはちょっと難しい。記憶に頼れないから。

これも勉強が必要ね。まぁ今日は疲れたし、明日からがんばろう。

私は送信ボタンを押して、それから部屋の明かりを消した。

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