占領事件の3反撃
ようやく異能が登場。
「....よしっ」ぎゅっと紐を思い切り絞め俺は立ち上がる。ちょうどこの男を見下ろす形となる。彼はまだまだグースカグースカ寝ていて暫く起きそうにもない。....大丈夫。ちゃんと生きているはずさ! そう納得して俺は、その場から立ち去った。
さて、今の自分の格好と言うと色で言えば、真っ黒だ。見るからに暑くるしい。しかしこのチョッキがなければライフル一発KOだろう。とはいえ暑いものは暑い。俺は、ハンカチで汗を拭いながら、歩き。とうとう、目的地についた。標識にはーー
「ここか。」オレは、探知機を手に持ちながら見上げる。そこにはロッカー室と書いてあった。恐らく、ここに隠れている筈だ。オレは、扉を開く。中にはロッカー室の文字通りロッカーが陳列されていた。ロッカーの大きさは、人が一人入れるくらいで、隠れるにはうってつけだと思う。そして迂闊にも、ネットを使ってしまい、オレに探知されてしまったわけだ。クックックといかにも悪役っぽい笑いをしながら反応があったロッカーに向かう。 「ここか」 オレは、銃を構えながらロッカーを一気に開けた!
いない!? 中に入っていた物は人ではなく、スモッホだった。
しまった。エサに引っかけられたのはオレだった!と思い、直ぐに銃を構えようとしたが、その前に、何者かに棒のようなもので腕を思い切り叩かれた!「いってぇー!」と苦痛に顔を歪めながら扉側に後ずさりした。オレは、左腕を擦る。これは、もう...左腕が折れている。高校生の癖に、躊躇ない一撃を放てるこいつは、多分喧嘩慣れているのだろう。あの重そうなバットを振り回せる辺り、かなり筋肉がある。素手では負ける。だが! 「オレには、こいつがある!残念だったな糞ガキ!」とライフルを構えた。そして、やつに一発放とうと引き金を引こうとしたときーー
「う、ワァァァ!!!」彼は、いままでかんじたことのない痛みに顔を歪ませた。そして、左腕を押さえながら俺に対し、「て..テメエ、オレに...オレに何をしたぁ!」。彼は、痛みに耐えられず、悶絶しながら、そう怒鳴る。 俺は、フゥ。と一息ついてバットを引き摺りながら彼に近づく。彼は、「うわ、うわぁぁ!くるな!ヤメロォォ!」と余りの恐怖に膝を床についた。俺は、カラカラと音をならしながら引きずられているバットを持ち上げ、その対象に一気に
降り下ろした。
ブクブクと泡を吹いて気絶しているテロリストの脇を手に持つ。うわぁ、あせびっしょり。よっぽど恐かったんだなぁと、同情した。俺は、ぷらんぷらんと彼を引き摺り、ロッカーに押し込んだ。 さて種明かしの時間だ。もちろん彼は死んでいない。恐怖で気絶しただけだ。さて、彼の何が恐かったのかを説明する。彼の恐れていたものは、尋常じゃない「痛み」だ。痛みは、体の中で最も敏感な「感覚」で、一旦覚えるとなかなか忘れられないものだ。一度受けた「痛み」は脳に伝わり、そして警戒する。それを再び繰り返そうとするならば、脳は、危険信号を発令し、「恐怖」となる。そして、その恐怖が絶頂に達して、結果「気絶」したわけだ。しかし、いくらなんでも、腕を折られた痛みが繰り返されても、人は「気絶」、までの結果には至らない。ましてや一度だけ放っただけでは。さて、突然だが質問しよう。この世界において「異能」というものがあると言われた時、君は、あると答えるだろうか?ある人は、「そんなもの、存在するはずがない。夢に浸るのもほどほどにしておけ」等と答えるだろう。それは、大変現実的な答えにして至極全うだろう。さて答えは、「ある。」「存在する」のであるさて、正直に言うと自分は、「異能力者」である。しかし、勘違いしないでほしい。自分は、決して、目からビームだとか口から炎だとか他の異能を無効化する!とかの王道ものではない。それどころか、普段こっそり使える。便利アイテム的な能力でしかない。そもそも、いまいった能力では、今のこの状況、つまりは、「テロリストが、余りの恐怖と痛みに、気絶した。」というものに対して、説明できない。さて注目していただきたいのはこの「痛み」である。痛みとはなにか。さて先ほど「腕が折られるくらいでは気絶しない。」と言った。更に「ましてや一度だけでは痛いだけ。」とも言った。しかし彼は、「余りの恐怖と痛みに対して、気絶した。」のである。ではどれ程痛かったんだ?と思うだろう。バットで叩く程度では気絶しない。痛みが足りない。ならばーー 「痛覚」を「足して」やればいい。さて、ここまで説明すれば分かるだろう。多分。 そう。自分の異能は、「痛みを強くする。」更に言えば、「対象の感覚を強くさせたり弱くさせたりする能力」である。.....がっかりしただろうか?そう人間こんなもんである。異能を無効化したり、手から波動が出たり、背後霊が出たりしない。しょせん才能の問題なのだ。さて、この能力の名前は、俺は「strongth+sense=change」(強弱+感覚=変える略して変感!)と呼んでいる。なかなか素晴らしい名前だろう?
俺は、ロッカーの扉を閉ようとしたが何かが挟まって閉められなかった。その正体は、例の電波探知機とか言う奴だ。俺は、それを拾い上げた。そして、ボタンを押す。またミュっと電波音がなる。そして画面が浮かび上がる。最新式だ。なにか、ないかと見るとなんと近くに反応があった!どこかと見ると、ちょうどこの部屋のロッカーの隅っこだった。
「あああ。」来る来る来る...!こちらに足音が近づいてくる...!
香取晴斗は、スモッホを割らんばかりに握りしめた。
(どうしようどうしようどうしよう
もしもこのロッカーを開かれたその時、間違いなく、体育館に連れていかれ、みんなの見せしめに殺されるだろう。いや、もしかしたら、その場で撃ち殺されるかもしれない......どちらにしよ酷いことをされるのは間違いなかった。 しかしなぜばれたのだろう?いくら立ちっぱなしとはいえ、足なんか震えてなんかいないし、スモッホで、情報集めをしているときなるべくタッチ音が聞こえないように、心がけてきた。しかも僕は、隠れることの天才だと自負している。なぜかと言うと.....いやここで話すことではない!とりあえず.....とりあえず、このまま行ってくれるのを祈るしかない!)香取は、汗をポタリポタリと流しながら足をぶるぶる心臓ドキドキと身を小さくした。(お願いだぁ!ここには、ここには来ないでくれぇ!)しかし無情にも足音は、ロッカーの前に消え、影が見えるくらい近くまできた。香取は、息を潜めながら(嗚呼、神様....)と祈った。そして、ガッチャというドアの開閉音と共に光が香取の目を眩ませた。それは、同時に扉が開かれたという結果を意味した。そして、香取は、呆然とした顔で扉を開けた主を見た。香取は、光で顔が見えなかったが。なんとなく、その体格と、ボサボサの髪で開けた主が分かった。主は、言った。「あれぇ?香取じゃん。」と。香取は、その声を聞いて、思わず、尻餅をついた。そうーー開けた主は、亘だったのだ。
さてご存知の通り、亘は、電波探知機というアイテムを持っていたからこそ、見つけたのだが、そんなことは、露知らず、香取は、「よく、見つけられたなぁ亘ぅ~ほんと助かったよ~」と言いながら、亘から渡された水筒を飲む。ちなみにこの水筒、すでにテロリストが飲んでいる。
さて亘は、ロッカーに背中を預けながら、香取にあることを聞いた。内容はもちろん、香取は、何故助かったのかについてである。それに対して香取は、「まぁなんと言うか?あれだよあれあれうんあれだ~」と言うと、亘は、にっこり笑って、そうかあれか。と頷いた。香取が隠れた理由..それは、香取の性格に関係がある。香取は、臆病者である。カタツムリを見ただけでその場から離れるような奴である。今回隠れた理由は、そんな香取がたまたまこの学校の唯一の不良と言われる人物に、因縁をつけられ、追われ、で、たまたまロッカーに隠れていたところにサイレンが鳴り、それに対して香取は、罠だ。と解釈してしまい、スモッホを見ると、学校が占拠されているのを知り、下手に逃げるよりこのまま待つ方が安全だ。ということである。それはある意味、正解だったにちがいない。しかし、見つかるのも結局は、時間の問題でもあった。見つけてくれたのが石橋ではなかったら間違いなく死んでいた。香取は、そう思った。
石橋は、さてと。と体勢を直し、落ちているライフルを拾った。それを見た香取は、質問をした。「これから、どうするの?」香取は、てっきり警察に助けを乞うのだと思っていた。期待していた。しかし、亘がいった言葉は、彼の予想だにしていなかった。「これから、体育館に行くぞ。」と。香取は、思わず「えっ?」とポカーンとした顔で言葉を洩らす。正気か?こいつ大丈夫か...?と思った。しかし彼の目を見るとどうやら本気のようだった。香取は、「駄目だよ!」と止めた。しかし今度は、石橋が、ポカーンとした顔をしながら、えっ?と言う。まるでぼくのいっている言葉がおかしいと言うかのように。そこで香取は、あることに気がついた。とんでもないことに。そう石橋と言う人物は、行動がいつも現実から一線を脱しているようなやつだと。はたからみればただの阿呆。また違う方向から見ると実は、正しいことをしてるような奴。また、違う方向から見るとこいつは、「なにもかんがえてないやつだよ、お前は!」と僕は、石橋に対してそう言った。
「変感」!なかなか、便利そうな能力。えっ?主人公にしては、弱そう?それは、言わない約束です.....