恋愛革命98
その戦前の教育の名残が現況の英才教育にも残っていると、貴女は言いたいのですかと、講師は尋ねた。
サラリーマンが反論する。
「俺が言い出しっぺで、こんな事を言うのは変かもしれないが、偏差値を中心にした教育が子供に残酷性を植え付けるというのは、全部が全部では無いだろう。女の子は同じように教育を受けても、優しくなる子もいるし、戦前の画一化教育じゃないのだから。違うか?」
講師が頷いた。
「それはそうですよね。各家庭の捉らえ方もあるし、個人差がある事も確かに頷けますから」
サラリーマンが続ける。
「それにゲームをやる頻度にも、残酷性というのは関連しているだろう。ゲーム脳の度合いもあるし。そう思わないか。そして付け加えれば、本当に偏差値教育が残酷性を形作る事が有ったならば、とっくに専門家が分析して問題視している筈だろう。違うか?」
講師が言う。
「あなたが言い出しっぺで、あなたが自身の理論を引っ込める展開を面白がっているようにも見えますが。どうですか、自虐趣味でもあるのですか?」
サラリーマンが自嘲ぎみに笑い言った。
「そんな趣味は無いが、俺も保守の身。自分で自分を批判して、その自己批判を反芻したら、このような反省になってしまったわけだ。悪しからずと言ったところかな」
ワンレンの女子大生が口を挟む。
「残酷性の問題は、個々の問題になれば、個人差がある事は確かに否めないと思います。でも、先程戦前の全体教育という言葉が出ていましたから言うのですが、戦前は国家に忠誠を誓う、言わば戦闘ロボットを製造すべく、教育はなされていたわけです。逆に言えば、戦地に赴く戦闘ロボットに情けは無用、残忍さだけが必要だった事が窺えるわけです」
講師が頷き言う。
「その戦前の教育の名残が現況の英才教育にも残っていると、貴女は言いたいのですか?」
ワンレンの女子大生が言った。
「そうです。この論法だと、教育には残酷性を育む必然性があるという事に繋がりますから」
サラリーマンが反論する。
「ちょっと待ってくれ。戦後の教育は平和憲法の下、戦前の教育勅語を排した形を取っているわけだ。それにGHQというか占領軍の影響もあり、教育から徹底的に攻撃性や残酷性は抜かれている筈じゃないか。違うのか?」
ワンレンの女子大生が答える。
「ですから、私が言っているのは、その残滓が残っているという事なのですが」




