恋愛革命90
見栄と虚飾が国家の威信になっており、誰も真実の教科書改訂など望んじゃいないのさと、サラリーマンは言った。
反対勢力優勢のままセミナーは再開された。
サラリーマンが攻勢をかける。
「例えばの話をしよう。金余りの現況、何処の家庭も核家族化が進み、家族間の意思疎通は無いわけだ。皆自分の好き勝手に振る舞い、一緒に食事などもしない。冷えきった家庭には逆に家庭内暴力もないわけだ。家族は皆金に魂を売り、心汚れ、貪欲に目先の損得勘定でしか動いていない。しかしだ。彼らは対面だけは保つのが上手い。つまり外面だけは良いわけだ。これが今の世間を要約した姿と言い切れるだろう。そしてこの家族の姿、これこそが我が国の姿であり、内情はバラバラだが、金の勢いだけはあり、それが国の威信になっているわけだ。つまりみっともない恥さらしはしたくないという、見栄と虚飾がこの国の威信でもあるのだが、それが現実だから仕方あるまい。ぼんくらな子供も金の力でコネをフルに使い見栄で一流大学に行かせる。それが国家の威信であり、見栄と虚飾の威信なのさ」
ホスト亭主が言う。
「そんなのは崩壊するだけですよね?」
サラリーマンが、これみよがしに頷く。
「だが、それが現実だから仕方ないではないか。温かい家族の団欒よりも、見栄と虚飾の強欲を選択したのだから」
ワンレンの女子大生が言う。
「それが例え話の現実でも、余りにも憐れな話ですよね?」
サラリーマンが嘲笑い言った。
「右傾化を加速する中、質実剛健、富国強兵のキャッチフレーズの下、内実は貪欲賛美、見栄優先が実質的な曲げられぬ国家の威信になっているのさ。つまりよく歴史ドラマに出て来る平安朝のぼんくら貴族集団がこの国の見栄威信を支えているのだが、それも現実ならば仕方ないではないか。そう思わないか?」
お下げの女子大生が言う。
「思いませんね。情熱的な人だって沢山いますから、この国には」
サラリーマンがうそぶく。
「これはあくまでも例え話をしているわけだ。だがこの例え話が国家の総意にもなっており、教科書改訂など望んじゃいないわけさ」




