恋愛革命81
面白い逆説的誘導尋問ですが、詐欺に使えそうな理論ですねと、講師が言った。
サラリーマンがうそぶく。
「それじゃ文明論から外れて、語彙の意味合に戻そう。ある研究成果を売る売国奴的研究員がいるとする。そいつは母親が鬱病で、親一人子一人の家庭で、企業秘密を売って、医療費を稼いでいるとして、この売りは善なのか悪なのか、どちらだと思う?」
ホスト亭主が答える。
「その企業秘密を売れば良いという発想は安直で、法に触れる悪であり、差別偏見の構造意識に抵触していると自分は思います」
サラリーマンが言う。
「だが、この研究員は母親想いの善なる人間じゃないか?」
ホスト亭主が言う。
「でも法を犯しているのだから、心情的には善でも、やはり悪としか言いようがありませんね」
サラリーマンが微笑んだ。
「ならば差別偏見の構造意識を使って暴力を行使せず人を虐め、ばれない奴も、逆は真で、法は犯していないのだから善だな」
お下げの女子大生が憤る。
「そんなのペテンです!」
サラリーマンが嘲笑った。
「ペテンなものか。この世なんて全て矛盾的理不尽世界であり、善は悪で悪は善ならば、文明論も差別偏見の構造意識論として受け止められるではないか。すなわち文明肯定論こそが、差別論の結末を示唆する最高の理論なのさ。違うか?」
お下げの女子大生がヒステリックに喚いた。
「そんなの詭弁です!」
サラリーマンが講師を促す。
「あんたはどう思う?」
講師が感想を述べ立てる。
「面白いひねりの効いた逆説ですが、詐欺に使えそうな誘導尋問ですよね」




