恋愛革命8
現代社会では集団虐めをした者も、された者も、一夜経てばメディアを媒介にして突然変異した後、タレントになってしまう、狂った世の中じゃないか。ならばおいらん虐めもなんのその、したたかに生きるのが一番さと、サラリーマンは言った。
講師が言う。
「売笑をするのは所謂営業スマイルですよね。これは作り笑いですが、商売には欠かせないものだし。皆それを表面上は求めているのに、裏に回っては、自覚無しに蔑んでいる構造があるわけです。それが狂って、捩曲がった差別偏見の構造意識の恐さそのものなのでしょうね」
ホスト亭主が頷いた。
「そうですね。しているけど、実はそうされている恐さだと思います」
講師がしきりに頷き言った。
「売りをする馬鹿女と言うその蔑みが時代を超えて、江戸期のおいらんの純愛さえ侮辱しているのだから、ある意味凄い差別エネルギーですよね?」
講師の言葉を聞いて、サラリーマンがけたたましく笑い言った。
「ほら見ろ。差別偏見の構造エネルギーはセーフティー装置となっているだけではなく、現代人の生命力、生きる活力をも支えているのさ。それは言わば意気地でもあるじゃないか?」
ワンレンの女子大生がすかさず発言した。
「確かに毒を吐き出し、他人を陥れ、傷付けるエネルギーは甚大だと私は思います」
もう一度サラリーマンがけたたましく笑い言った。
「いいじゃないか。教科書には売りという言葉でおいらんを侮辱した現代人は、おいらんの性エネルギーを活用して元気にたくましく、したたかに生きたと記載すればいいのさ」
お下げの女子大生が糾弾する。
「そんな理論は論外ですよね!」
サラリーマンがずる賢く微笑み言った。
「論外なものか。第一、こうやって論戦を繰り広げていられるエネルギーを作り出しているのは、現代人がおいらんを売りのはしためと蔑んでいるからだろう。それは明らかにエネルギーの根源ではないか。素晴らしいバイタリティーではないか。そう思わないか?」
お下げの女子大生が言った。
「そんなの話しになりません。明らかに詭弁です」
サラリーマンがうそぶく。
「詭弁なものか。現代社会では集団虐めをした加害者も、その被害者も、突然変異してタレントになり、じゃれ合っている狂った時代じゃないか。そんな現代社会の中では正にしたたかさだけが物を言うのさ。だから虐められた者は、自分の愚かさを呪い、やけ酒でも飲んで諦めるしかないのさ。違うか?」