恋愛革命4
おいらんの心よりも、現代人の心は醜いと講師は断定した。
サラリーマンが言う。
「俺はやはり教科書に売りという言葉を記載するのは反対だな。大体どのように記載するんだい。おいらんを現代人は売りという言葉でおとしめ、偽りの純愛概念を行使して、結婚詐欺等に使っていたと記載するのかい?」
講師が成る程と頷き言う。
「そういう記述方法もありますね?」
サラリーマンが焦る。
「ちょっと待ってくれ。俺は例を挙げただけだぞ。教科書に売りなんていう言葉は野蛮過ぎるじゃないか!」
ワンレンの女子大生が言う。
「野蛮なのは現代人であり、その人を傷付ける無思考な差別偏見の生々しい構造意識に毒され、病み、死んでいった人々の悲惨な末路を明記するのは急務だと、私は思います」
サラリーマンが反論する。
「ちょっと待ってくれよ。この教科書史実改訂問題は、端的に言えば、江戸期の民より現代人が野蛮で優れていないという前提のものじゃないか。それって比較論の最たるものであり、差別偏見の構造形式に他ならないじゃないか。そんなのは理不尽で、断定的過ぎるぞ。俺はそう思うが、どうだ?」
講師が答える。
「それは力学的に結論が出ており、おいらんの言わば心の美を現代人よりも優位なものとして結論し、教科書への改訂記載は織り込み済みなのです」
サラリーマンが怪訝な顔付きをする。
「力学的とは意味が分からん。具体的に言ってくれないか?」
講師が一度咳ばらいしてから答えた。
「つまりおいらんが命懸けで発信した純愛概念を、現代人は歴史の必然、流れとしておとしめ、おいらん自体の売春概念を蔑視したところに、誤った純愛概念を構築し盲信したわけです。その盲信で無知なところが、おいらんの心の美しさに劣り、力学的な部分の負けクジを引いたと結論されたわけです」
サラリーマンが訝りつつ注釈を入れる。
「つまり史実の中で、おいらんの心は美しく、現代人の心は比較論として醜いという結論か?」
講師が答えた。
「その通りです」
サラリーマンがやけくそぎみに言う。
「でもそれは酷いじゃないか。現代人よりも醜い心をしたおいらんだっていた筈じゃないか!」
講師がいなす。
「もうそれは結論が出ている事項なので議題を元に戻しましょう。現代人の心の醜さを立証するという意味合いの意見として、差別用語の売りとはと言うところに戻します」