恋愛革命26
一番の犠牲者は、狂った差別偏見の構造意識を受け継いで行く子供達だと、ホスト亭主は言った。
ワンレンの女子大生が言う。
「あなたは生活の為というか、お金の為に恋愛感情を犠牲にして来たのですか?」
ホスト亭主が頷いた。
「世の中の掟は、お金を得た者が勝者ではありませんか。ましてや必要な生活費の為ならば、恋愛感情も何もありませんよね?」
「子供と奥さんの為に自分の恋愛感情を押し殺して来たのですね?」
おもむろにホスト亭主が頷いた。
女子大生がしみじみと言う。
「お金の為に命が損なわれる世の中というのは悲しい世の中ですよね、本当に」
ホスト亭主が頷き尋ね返す。
「貴女の言う命というのは恋愛感情の事ですか?」
女子大生が頷いた。
「そうです。それって本来はお金よりも大切なものなのに、お金を皆優先にする世の中というのは狂っていませんか?」
ホスト亭主が頷き言った。
「と言うよりも、今も昔も貪欲強欲が最優先であり、恋愛感情なんて何処吹く風ですよね。犠牲になって当たり前ではありませんか?」
「生活の為とか言う美名の本に強欲貪欲が美徳とされる世の中ですね?」
ホスト亭主が頷いた。
「それも正に狂った差別偏見の構造意識の為せる業と言えるわけです。生活の為にと言いながら、悪魔的な貪欲強欲の為に、どれだけの人命が損なわれたか分からないというのが現実ですよね」
伏し目がちに憂いを湛えながら女子大生が頷いた。
「保険金殺人などがその最たるものでしょうね。でもどうでしょう、おいらんの時代にもこのような狂った現実は在ったのでしょうか?」
ホスト亭主が速答する。
「それは在ったと思いますよ。遊女は借金の型に遊郭に連れて来られて、強制的に身売りをさせられたわけですからね。そして梅毒や妊娠などをすると、やり手に撲殺され棄てられたのですから。それもこれも全て人の強欲貪欲の為せる業でしょうね」
沈痛な面持ちをして女子大生が頷き言った。
「現代のように、当時には人権などありませんでしたからね…」
ホスト亭主が言葉を添える。
「今だって生活の為とかいう欺瞞的キャッチフレーズの為に、どれだけの人命が損なわれているか分からないでしょう?」
「皆、自分の強欲貪欲の権利主張しかせず、損得勘定でしか動きませんからね。その為に人が死んでも、それは仕方ないという世情ですね。そんな薄汚い心しか大人が持っていないから子供達は狡さを学び大人になり、保険金殺人等、人を欺き、裏切って、勝ち誇る世の中が続くのですね」
ホスト亭主が頷いた。
「そうですね。こんな狂った現実の一番の犠牲者は差別偏見の構造意識を受け継いで行く子供達ですよね。子供達には何の罪も無いのに」
女子大生が頷き言った。
「私もそう思います」




