恋愛革命25
無理ですと、お下げの女子大生は言った。
サラリーマンが言った。
「俺の心は現代人の心だから、おいらんよりも汚いので、あんたは俺とアフターしないと言うが、あんただって現代人なんだから、俺と同じじゃないか。違うのか?」
女子大生がサラリーマンの肩に回した手から擦り抜ける動作をして、言った。
「私はおいらんを尊厳しています。でもあなたはおいらんを尊厳なんかしていない。その差が心の溝を作っていると思います。そしてその溝はけして埋まらないものだと感じているから、私はアフターに応じないのです。そしてもう一つ言わせてもらえば、あなたの言葉は的を射ていると思います。確かに私は現代人で、おいらんの心意気に恥じる側面を持っていますが、でも私はおいらんを遊女として侮辱なんかしていません。そこだけは譲れない私のポリシーですから」
サラリーマンがむきになる。
「俺だっておいらんを馬鹿になんかしていないぞ。尊敬もしていないが、馬鹿にもしていないぞ」
「でもあなたの本音は純愛概念の中にある潜在化した売春概念の存在を否定しているではありませんか。違いますか?」
サラリーマンが口笛を吹く真似をして白を切る。
「まあここはセミナー会場ではないのだから余り固い事は言うなよ。ここでの立場は俺が客であんたはホステス。もう少し営業スマイルで接してくれないかな?」
女子大生は商売を忘れ、硬直した態度を崩そうとはしない。
「そういう言葉も心が開けない響きがあるのですよね」
サラリーマンが破顔した。
「勘弁してよ。俺は金払っているのだから客じゃない。もうちょっとサービス精神旺盛に頼むよ」
「おいらんはその接客術において、客を対等の人間として扱っていたからこそ、客の心意気を洞察したと思うのですよね。私もそれは同じなのです。私はホステスである前に一人の女、人間なのです。だから私を人間扱いしてくれないお客さんとは付き合いません」
サラリーマンが水割りをがぶ飲みしてから、強気で言った。
「俺はあんたを一人の女として見ているぞ。だから誘っているのじゃないか?」
女子大生がサラリーマンをしげしげと見つめ言った。
「でも人間とは見ていないですよね?」
サラリーマンが頭をかき言った。
「いやーそんな事は無いさ。あんた十分いい女しているし、蘊蓄溢れる人間らしい人間じゃないか。俺はそう思うわけよ」
女子大生が言った。
「酒に酔っている客の言葉は嘘ばかりじゃありませんか?」
にやける風情でしきりに頷きサラリーマンが言った。
「嘘じゃねえよ。俺はあんた可愛いと思っているし、付き合ってよ今夜さ?」
「無理です」




