恋愛革命137
表現の自由、言論の自由についての熾烈な論争がなされて行く。
ワンレンの女子大生が書き込みをする。
「おいらんの純愛概念尊重をして、差別偏見の構造意識を正し、隣人を思いやり、皆でお地蔵さんのようになりましょう。そうすれば、きっと世の中は明るくなる筈ですから」
すかさずそれに対する反対派の反論がなされる。
「言論の自由があるからこそ、例えば間違いを冒した者を糾す事は出来るのだ。言わばクレームは言論の自由の証ではないか。差別用語に抵触して、この言論の自由を放棄する事は遺憾であり、とんでもない事だと思う。言論の自由こそ主権在民の証。それを放棄する程国民は馬鹿ではない。従って言論の自由を脅かす恐れのある、史実改訂には組み能わず、反対の意向を述べ立てるまでだ」
ワンレンの女子大生が反論する。
「言論の自由を標榜して、間違った差別用語で人を傷付け殺すのは民主主義ではないと私は思います。その人が間違いを冒した場合、優しい思いやりをもって接する事が肝腎であり、間違った差別用語で虐めるのは正に言語道断だと私は思います」
反対派による、反論を上塗りするような反論がなされる。
「主張する思いやり溢れる世界のイメージが曖昧であり、具体性を欠き、厳しい現実問題からノスタルジーに逃げているように受け止められる。桃源郷を説くならば、もっと現実的に実行可能な言葉を用いてはどうか?」
ワンレンの女子大生が反論する。
「あくなき論争を繰り返せば、犠牲者は増えるばかりです」
至って冷静沈着な反論が重ねられて行く。
「表現の自由、言論の自由は憲法で保障されている、言わば絶対概念であるのだが、過去それを獲得するのに血を見るような労苦が有ったわけであり、現在に至っているわけだ。だからその権利を手放す位ならば、言論の自由放棄を目指す所作は慎んで然るべきだと思うが、どうだ?」
ワンレンの女子大生が決着の糸口を見つけるべく書き込む。
「人をおとしめ、人を傷付ける権利行使など、真の意味での言論の自由ではないと思います」
事務的に反論がなされる。
「間違いを冒した相手を論駁する時の言論を、解釈拡大で差別用語と見做されたら、糾す言語が消失してしまうではないか。それが言論弾圧の契機になれば、国民の権利は脅かされる事に繋がると思う」