恋愛革命132
お地蔵さん信仰に見られるような、人情味溢れる、細やかで、雅やかな古典文化への回帰ですねと、講師は言った。
サラリーマンが言う。
「しかし反対派の意見が鎮静化しても、エリートは納得するかな。言わば自分の権益を脅かされる事だぞ?」
講師が断言する。
「それは間違いなく納得しますね」
サラリーマンが訝る。
「自信ありげだけど、その根拠はどこに有るんだ?」
講師が答える。
「細やかな気遣い優しさに満ちた、静謐なる心の美は、言わば日本人の原点ですから」
サラリーマンが腕を組み再度尋ねる。
「しかし、それって今流行りの右翼的発想か?」
講師が否定する。
「いえ、違いますね。戦後日本文化をリードして来た欧米流の唯物史観からの脱却という面は、国粋、右翼の臭いがそこはかとなくしますが、お地蔵さん信仰に根差す人情味溢れる心の美の原点回帰には、右翼という用語に含まれている破壊性のニュアンスは無いわけです。そこにあるのはつましい、人情味溢れる心の美しさであり、建設的な慈しみしか窺えないわけですから」
サラリーマンが言う。
「お地蔵さんに武器は似合わないものな?」
講師が笑い答える。
「そうですね。人情味溢れる、細やかな慈しみ文化は、実を言うと、力溢れているように見える唯物史観よりも、その不可思議なる分だけ、心への浸透性はあると私は思いますから」
サラリーマンが言う。
「言わば古典文化への回帰か?」
講師が答える。
「人情味溢れる、細やかな、日本独自の静謐なる古典文化への回帰ですね」