恋愛革命129
俺は保守だけど、人殺しの片棒だけは担ぎたくないわけだと、サラリーマンは言った。
講師が言う。
「差別偏見の構造意識は連綿と培われた、人心を一つにしない言わば革命阻止装置なのですよね。そして現代に眼を転じると、その自動装置振りというか個の分断振りは、ほぼ完璧に機能しているわけです。差別偏見の構造意識に裏打ちされた言葉で人を侮辱すれば、その人は窮地に追いやられ、下手をすると殺されてしまう可能性もあるわけです。つまり毒が新たなる毒を生むただれた構造ですね。殺す事を善意と錯覚してしまう、ただれた構造ですね。そしてそれはほぼ完璧に出来上がった破壊不能の堅牢なる概念装置でもあるわけです。エリートはその自動装置を死守していますから、正に難攻不落の城のごとしですかね」
サラリーマンが息巻く。
「そんなのは変革あるのみだろう。売りという言葉を付記して、さっさと改訂しろよ。エリートのご機嫌さえ損なわれなければ問題はないのだし。違うのか?!」
講師が言う。
「いや、やはり今の反対派の強硬姿勢では無理でしょう。彼等は差別偏見の構造意識を奪われたら、エリートのご機嫌を損ない、逆に弾圧されて自由を奪われ、利益、ひいては個人のアイデンティティーを損なうと思っていますから、手をつけられません」
ホスト亭主が言う。
「完全に洗脳され、個が分断し、エリートの力を恐れ、不安かっているのですね」
講師が頷いた。
「そうですね」
サラリーマンが苛立つ。
「俺は保守だけど、人殺しの片棒は担ぎたくないわけだ。何とかならないのか、何とかよ?!」
講師が改めて事務的な口調で言った。
「何とか打開策を練り上げましょう。はい」