恋愛革命11
知の道を深化、進化させるのが人間存在の宿命だと、ホスト亭主は言った。
サラリーマンが開き直る。
「人は愚かしいし、ミスを冒すから魅力的なのだろう。完璧なんて貴方が言う通り、無味乾燥でちっとも面白味がないぞ。第一おいらんを侮辱したっておいらんは過去の人。関係無いではないか。それに差別用語をいくら禁じたって、それは法制化出来ない、言わば治外法権。それが証拠に売りという言葉を使って死刑になった奴なんかいないのだし。毒出しには持って来いの言葉じゃないか?!」
講師が言う。
「だからこそ、各自の純粋な心の問題に帰結して行くのでしょうね」
ホスト亭主が対決姿勢を鮮明にする。
「いや、ある程度の愚かしさは許されても、打たれ弱い人もいるわけで、それを悪気が無かったと言って誹謗中傷して死に追いやるのは、例え刑事罰に臥されなくても、立派な犯罪だと思います」
サラリーマンが薄ら笑いを浮かべながら抗弁を繰り返す。
「でもそれってやっぱり差別偏見の構造意識を野放しにする世間が悪いのだろう。各機関の情操教育なんかまるで杜撰だし。無意識に差別用語使っているのも、ある意味コミュニケだし。それって知性の限界なのだから、仕方ないよな」
ホスト亭主が静かに告げる。
「知の道とは深化し進化を遂げるものだと僕は思います。例えばニュースで集団虐めにより人が自殺したのを視聴した後、それを経験値とすれば、無意識だからと言って、人を傷付け罵り、差別用語を口に出すのは、知の進化の道から外れる愚かしさだと自分は思います」
サラリーマンが再度開き直る。
「でもやっぱり無意識なのだから、仕方ないと俺は思うよ。だって世界各国のどんな政府も、皆物を深く考えさせない、記号吸収羅列型の知性を奨励している衆愚政治を敷いているのだし、一般市民は畢竟愚かになるのは仕方ないんじゃないの。違うかね?」
ホスト亭主が否定した。
「違いますね。知の道を進化させるのが人間存在の宿命だと自分は思っていますから」