先輩と僕は怨念のスパゲッティコードに巻き込まれる
超久しぶりの投稿になります。
私自身プログラムの仕事をしているわけではなく、少しプログラムをかじっているだけの人間です。
ニュアンス等違っていることもあるかもしれませんが、ご容赦くださいm(__)m
僕はいわゆるプログラマーという仕事をしている。
簡単に言うと、プログラムコードを書き込んでコンピューターに特定の処理やタスクを実行させるための「命令の集まり」を作成する人間だ。
プログラマーというのはとにかくヒット&エラー。実際に動かしてみてエラーがあればそれを直す。それを繰り返していき、正解を作り出す仕事だ。
僕たちプログラマーはコンピューターに飼いならされている。いや、飼い殺されている。
コードが少し間違っているだけで動かなくなり、上手くいかなければいかないほどストレスがたまってくる。
あそこにいる人を見てほしい。
「あ~…あ!(カタカタッ)」
悩んで何か思いついたのか、指を動かしている。
そして、何かを祈るように画面を見る。
「…フフッ…フフッ…もう終わりだぁ~…」
そう言いながら椅子にもたれかかって放心状態になってしまった。
あれが飼い殺された人間である。まさに現代社会を表している。
「うーん、ここがなんで動かないんだ?」
僕もプログラムに頭を抱えている状態である…まだ飼い殺されてはいない。
そしてそんな僕にも先輩がいる。
「先輩、ここが分からなく…って…」
「フッフッ…いいぞ…いけ…」
そんな先輩はモニターを見ながら何かをつぶやいている。
「…はぁ、またやってるんですか?」
僕は呆れながら、そんな言葉をかける。
「今いいところだから…よし…いいぞ…」
「そんなこと言って…また負けますよ?」
この人が何をやっているかって?
この画面を見てもらいたい。
モニターには馬に番号が付いていて、その馬の上に人が乗っている。
そして、どの馬が1位になるのか競争をしている。
ここまで言ったら分かるだろう。そう、競馬中継が映っている。
なぜか静かだと思ったら、競馬を見ていたとは。
「グゥゥゥ…」
唸るほど真剣に見ている。
「いけ、いけ! よっしゃぁぁぁぁぁぁ!」
買った馬券が当たったのか、勢いよくガッツポーズをしながら立ち上がる。
「うおっ、急に大きい声出さないでください」
思ったより声が大きくびっくりした。
一体いくら賭けたのだろうか?5千円?でも喜び方的にもっと上だろうか?
「当たったんだよ!これを見てみろ」
先輩はPCの画面と手に持っているスマホを見せてくる。
「配当金額の画面」
「そう!当たったんだよ!見事に的中したぜ!」
そう言っている先輩の画面をスクロールする。
さぞかし配当金をもらえたんだろう。昼飯でも奢ってもらおう。
何を奢ってもらおうかなぁ~ ん?
「払戻金1,500円…少なっ」
死ぬほど少ない。この人これでこんだけ喜んでいたのか?
「先輩オッズいくつなんですかこれ?」
「えっ?3倍だけど?」
「何番人気ですか?」
「2番人気。1番よりも2番の方がいいかなと思って」
「つまらない賭け方してますね」
賭け金500円で、2番人気って…
しかも喜び方が万馬券の勢いだったのに。
「それだけでよくそんな喜べますね」
「だって、なんでも当たれば嬉しいじゃん?自分は幸運な人間だと思えるし」
「それで外れればどうするんですか?」
「泣く」
「泣く!?たった500円失っただけですよ?」
500円失うだけで泣くなんて、どんな情緒なのか?
「だって、これ外したら俺の昼飯代はなくなる。俺の財産はこれのみだ」
「何してんすか」
何をしているのだろうか。
飛んだ、あほなことをしている。
「明日が給料日…それまではこの500円だったが…この競馬に賭けてみた」
「ほんとに何してんすか」
思っていたよりもギャンブラーだった。
全財産をこの競馬に賭けるなんて狂っている。
「つまらないなんて言ってごめんなさい。めちゃくちゃ面白い賭け方してますね」
「俺にとっては今日1日を賭けた勝負だったんだけどね。とりあえず明日まで何とか生き残れそう」
当たってからずっと配当金額の画面を見ながら鼻歌を歌っている。
そんな先輩を見ながらカレンダーを見るそこで気づいたことがあった。
「ん?でも今日って…」
僕がしゃべろうとした瞬間に、先輩が先に口を開いていた
「ってか、さっきから手が動いていない感じだったけど何かあったの?」
「あぁ、これなんですが…」
僕のPC画面を見せる。
「ありゃりゃ、スパゲッティコードになってんのか」
スパゲッティコードとはプログラムの処理がスパゲッティのように絡まり合っていることである。
こうなってしまうと、構造が複雑になってしまい、読み取ったり修正をするのがめんどくさくなる。
今回の場合は、何十行にも渡って同じようなことが書いてある。しかもなんか見たことないコードが入ってる。
「そうなんですよね…前任者がここまで最悪な組み方してるなんて思いもしませんでした」
前任者はストレスが原因で仕事を退職した。
そして、その前任者が作成していたコードを引き継いでいるのだが…
「これは…嫌がらせをされてるな」
「それは知ってます。だって…」
僕は画面をスクロールする。
「ほら…」
/*ここから先は怨念が含まれます。注意してください( ´∀` )
「こんなこと書いてあったら誰だって気づきますよ」
「この最後の( ´∀` )がなかなかに腹立つな」
「僕は殺意を覚えました」
こんな注意書きがあったら誰だって殺意が湧く。僕があんたに何かしたかと問いただしたくなるぐらいには。
動きはするけど一目では何をしているか分からない、長いコードになっている状態だった。
動かなければ一気に消してしまって組みなおすのだが、動いている分消しにくいのが今の状態だ。
そして上司からも消さず、分かりやすいコードにしておいてくれとの指示になっている。
「これはねこうなってるから、こうしてと…」
これだけ長くて読みにくい内容なのに一目見ただけでよく分かるよな。
僕は一つずつ読み取っている状態だったのに。
先輩はこの会社のプログラマーとして、かなり優秀な人間だ。
何かあればみんなすぐに先輩に聞きに来る。そして、毎回的確なアドバイスをしては完璧なプログラミングを行う。まさにプロの仕事をしている。
「これはね、考えすぎるからよくないんだよ。見づらい長ったらしいコード使ってるから分かりにくくなってただけだな」
「分かりやすくなりました。ありがとうございました」
何十行もあるプログラムコードをリファクタリングしてくれた。
「これなら処理速度も格段に速くなりますね。しっかりと動くはず」
「俺がやったから大丈夫だとは思うけど、絶対デバッグは忘れんなよ。自分が思っている動きと違う動きをするのがプログラムだからな」
先輩はデバッグを必ずやるよう声を掛ける。そして、細かいところまでよく見てデバッグを行う。
誰も気づかなかったところを唯一指摘して、すぐに直して提出をする。
「ありがとうございました。とても分かりやすかったです」
「良いってことよ。ってかそんなことより、全然現金振り込まれないんだけど」
「あ~そのことなんですけど」
さっき言い忘れていたが…
「今日日曜日ですよ?」
「だな。なんで会社にいるんだろうな。定休日とは?」
至極単純な理由だ。
仕事が終わらないため、休日出勤をしている。
クソだ
「それはそうなんですが、今日って休業日じゃないですか?」
「それが問題が?」
「競馬って土日はすぐに振り込まれることはないんじゃないですか?」
「え」
「え」
競馬をやったことはないが、友人が
「土日だから配当金が月曜だな~」
と言っていた記憶があった。
「ちょっと調べてみては?」
「う、うん。ちょっと待てよ」
先輩は焦りながら調べている。
そして、だんだん青ざめた顔になっていく。
「やっぱ月曜日でした?」
僕は先輩に聞いてみる。
そして先輩はこちらをゆっくりと向く。
「うん…」
「残念でしたね」
そういい、僕は仕事に戻る。
どちらにせよ自業自得なのでなにも言わないことにした。
「ねぇ」
「なんですか?」
先輩は床に膝をつき僕の方を見る。
そして、頭をゆっくり床にくっつける。
「お金…貸してください…」
「いやです」
「即答か」
「先輩としての尊厳はないんですか?」
「ない。今日を生きる方が大事」
全くこの人は。
仕事以外になると全然だめになる人間である。
「絶対に嫌です」
「そこをなんとか」
「いやですが?」
「さっき仕事教えてやったろ?」
「それとこれとは話は別です。公私混同しないので」
僕は公私混同はしない。
それも仕事だと思っている。
「じゃあ僕お昼行ってきます」
「…(スタスタスタ)」
土下座しながら僕についてくる。
「怖い怖いキモイキモイ」
マジでキモイ。
ゴキブリのような動きすぎてキモすぎる。
「本当に頼みます。何でもします」
「何でも?ですか?」
「なんでも。明日…いや明後日絶対お金返すので」
何でもか…それなら
「僕の仕事やっといてください」
そう言って。5千円札を渡す。
「え」
「先輩、競馬やるぐらい暇そうでしたもんね?」
「いや、暇では…」
「でも競馬やってましたもんね」
そんな人間が暇じゃないわけない。
暇な人間にあとは仕事を投げちまおう。
「さっき公私混同しないって」
「そんなこと言いましたっけ?」
そんなこと言った記憶がない。
いつ言ったか教えてほしい。
「たった数分前に」
「何時何秒、地球が何周回ったとき?」
「そんな小学生みたいな」
録音すらしていないのだから、証拠なんてない。
「こちらに証拠が」
『公私混同しません』
「なんで撮ってんだ」
怖い。ただの会話なのになぜ録音を。
「何かあった時のため」
こんなところで社会人を出してくるのが小賢しい。
というか普通の社会人でもこんなことはしない。
「とにかくあとは頼みました」
「え」
そういって先輩に前任者の怨念のスパゲッティコードを先輩に押し付け、僕はスパゲッティを食べに家に帰った。
ご覧いただきありがとうございました。
折角だし1話だけ上げてみよ、そんな気持ちで上げました。少しストック作ってから次の話を出そうと思います。
結構突発的に書き始めたので、予定が合えば書いていきます。




