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第五部:再生のフルカラー(3)


 数年後、二人は海鳴りが遠く響く、坂道の途中の小さなアトリエ付きの家にいた。  

 春の訪れを告げる風が、窓辺に掛けられた風鈴を、チリンと微かに鳴らす。

 和真は、地元の漁師たちの船に名前を入れる仕事を終え、今、庭の桜を眺めていた。

 かつてのように、狂気に駆られて筆を振るうことはもうない。

 今の彼は、日常の中に潜む微かな色彩を拾い集める、静かな表現者となっていた。


「和真くん、お茶が入ったわよ。……今日は、お隣さんから頂いた桜餅があるの」


 看護師として一日を終えた結衣が、白いエプロンを外しながら縁側に腰を下ろす。

 彼女の髪は、かつてのように長く伸び、夕陽に透けて深い真珠色に輝いていた。


「……結衣。……君の髪、本当に綺麗になったな」


「ふふ。……今度は、無理に伸ばしたんじゃないから。……自然に、こうなったの」


 和真は、その長い髪に指を差し入れ、かつてのあの夜と同じようにゆっくりと梳いた。

 けれど、今の指先に伝わるのは、逃げ場のない絶望ではなく、確かな生の弾力だ。


「和真くん。……私たちが描いたあのフルカラーは、まだ続いているのかしら」


「ああ。……でも、それはもう、誰かに見せるための色じゃない」


 和真は、彼女の隣に座り、茜色に染まり始めた空を、共に眩しそうに仰ぎ見た。


「僕たちが、僕たちであるために、毎日少しずつ塗り重ねていく色なんだ」


 庭の桜が、風に誘われるようにして、一枚、また一枚と舞い落ちていく。

 その花びらは、二人の膝の上に落ち、静かに、けれど力強く、今という色彩を刻む。

 二人の瞳に映る世界は、もう二度と、真っ黒な闇に塗りつぶされることはない。

 混ざり合い、重なり合う不完全な色彩こそが、彼らの見つけた、唯一の正解だった。



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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