第四章:不完全な色彩(10)
グループ展に向けた制作が始まってから、和真の指先は常に絵具に染まっていた。
仕事から帰ると、狭いアパートの一角をアトリエに見立て、彼はキャンバスに向かう。
背後で結衣が刺繍の針を進める音が、時計の秒針のように規則正しく響いていた。
和真が描こうとしているのは、救世主でも聖母でもない、今の「結衣」そのものだ。
「和真くん、あまり根を詰めすぎないで。……顔が、少し怖いよ」
結衣が、淹れたての熱いコーヒーを和真の傍らに置いた。
「……ああ。つい夢中になっていた。ありがとう、結衣」
和真は筆を置き、凝り固まった肩を回しながら、彼女の顔を見上げた。
部屋の蛍光灯の下で、少しずつ伸びてきた彼女の短い髪が、不揃いな影を作っている。
「結衣。……少し、そのまま動かないでいてくれるか」
「えっ、……また? 今日はもう、十分描いたじゃない」
「いや、今の君の影が……。過去の重みと光が混じり合っていて、すごくいいんだ」
和真は再び筆を手に取り、群青色にわずかな白を混ぜ、影の境界線をなぞった。
それはかつての強迫的な執着ではなく、彼女の存在を慈しむような、静かな動作だった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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