第四章:不完全な色彩(8)
作業を終えた和真は、駅のホームで電車を待ちながら、自分の手を見つめた。
爪の間に入り込んだ青や琥珀色のペンキは、もう彼にとって「汚れ」ではなかった。
それは、自分が世界に再び色彩を投げかけたという、誇らしい証だった。
「和真くん、今日もお疲れ様。……何か、いいことあった?」
帰宅した和真を、結衣が玄関の明かりの下で迎えてくれた。
彼女は、パン屋の失敗から少しずつ立ち直り、今は部屋で静かに刺繍を始めていた。
和真は、まだペンキの匂いが残る指先で、彼女の頬を優しく撫でた。
「……看板を描きながら、君のことを考えていたんだ」
「えっ、……私のこと?」
「そう。……絶望も、悲しみも、全部混ぜれば新しい色になるんだって」
和真は、鞄の中から一枚の小さなデッサンを取り出した。
それは、仕事の合間に、看板の裏にこっそり描いた彼女の横顔だった。
「君がいたから、僕はもう一度、筆を握ることができたんだ」
結衣は、そのデッサンを両手で受け取り、じっと見つめた。
和真の描く線は、もはや狂気に満ちた執着ではなく、
未来を共に歩もうとする、穏やかで強い決意に満ちていた。
「……綺麗。……私、こんなに穏やかな顔で笑っていたのね」
「ああ。……僕には、いつもそう見えているよ」
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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