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第四章:不完全な色彩(1)
新生活の幕開けは、決して薔薇色ではなかった。
和真が勤め始めた看板制作会社での仕事は、想像以上に過酷なものだった。
冬の冷たい風に吹かれながら、高い足場の上で何時間もペンキを塗る。
かつてのオフィスワークとは異なり、身体は芯から冷え、指先は常にひび割れた。
「佐藤、そこムラになってるぞ。……ちゃんと集中しろ!」
現場監督の怒鳴り声が響くたび、和真はびくりと肩を揺らした。
かつての挫折が脳裏をよぎり、冷や汗が背中を伝う。
けれど、彼はそのたびに、胸のポケットに入れた結衣の写真を指でなぞった。
「すみません。……すぐ、塗り直します」
汚れた作業着のまま、彼は必死に刷毛を動かし続けた。
自分がここで倒れるわけにはいかない。
あの小さなアパートで、自分の帰りを待っている人がいるのだから。
泥臭く、不器用でもいい。
今の和真にとって、この一刷毛一刷毛が、二人の未来を塗る作業だった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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