第三章:標の残像(14)
食後の静かな時間、和真は約束通りスケッチブックを広げた。
結衣は、窓際の椅子に腰掛け、月明かりが差し込む中でじっとしていた。
「和真くん。……私の髪、いつかまた、あの頃みたいに長くなるかな」
「なるよ。……でも、今の短い髪も、僕は同じくらい大切だと思ってる」
和真は、鉛筆を走らせながら、彼女の輪郭を丁寧に写し取っていった。
「どうして? ……あんなに私の黒髪を褒めてくれていたのに」
「あの髪は、君が『完璧』であろうとしていた時の鎧だった気がするんだ」
和真は手を止め、真っ直ぐに結衣の瞳を見つめた。
「今の短い髪は、君が自分自身の痛みを受け入れた証拠だ。……だから、尊いんだよ」
結衣は驚いたように目を見開き、それから静かに目を閉じた。
「……和真くんにそう言われると、自分のことが少しだけ好きになれそう」
「少しずつでいい。……僕も、自分の描く絵を、少しずつ好きになっていくから」
シュッ、シュッ、という鉛筆の音だけが、夜の部屋に心地よく響き渡る。
かつての破滅的な共依存とは違う、静かで、確かな絆が、そこに芽生えていた。
二人は、明日への不安を抱えながらも、今この瞬間の「色彩」を信じ始めていた。
不器用ながらも温かな、二人だけの新しい日常が始まりました。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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