第三章:標の残像(10)
採用が決まった日の夜、和真は新居の床に座り、結衣への手紙を書き始めた。
スマホの画面越しではなく、一文字ずつ、万年筆で紙に刻んでいく。
「結衣。……今日、新しい仕事が決まったよ」
和真は、ペンを止めて、窓の外に広がる夜の街並みを見つめた。
「以前のような大きな仕事じゃないけれど、看板に色を塗る仕事だ」
一文字書くたびに、結衣のあの短い髪の感触が指先に蘇る。
「君を迎えに行くための場所も、もう用意してある」
書きかけの手紙の横には、結衣のために買っておいた、新しいヘアブラシがあった。
まだ彼女の髪は、これを使うほど長くはないかもしれない。
けれど、いつか必ずその日が来ることを、和真は確信していた。
「和真くん、無理はしないでね。……私、あなたの笑顔が見たいだけだから」
ふと、結衣の声が耳元で聞こえたような気がして、和真は微笑んだ。
「無理はしないよ。……君が、僕のブレーキになってくれるんだろう?」
和真は、独り言のように呟きながら、手紙を封筒に納めた。
二人の再生は、まだ始まったばかりで、足元は不安定だ。
それでも、和真はもう、真っ黒な闇に怯えることはなかった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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