表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/77

第三章:標の残像(7)

 施設内の談話室は、外の喧騒から切り離されたような静寂に包まれていた。


 和真と結衣は、色褪せたソファに肩を並べて座り、スケッチブックを広げた。


「……これ、あの雨の日のこと?」


 結衣が、ページの中央に描かれた、荒々しい鉛筆の線を指でなぞった。


「ああ。君が髪を切り落として、僕たちがすべてを失った夜だ」


 和真は、その時の記憶を呼び起こすように、静かに言葉を返した。


「あの時の僕は、絶望を描くことでしか、君に触れることができなかった」


 結衣は、スケッチブックの隅に小さく描かれた自分の横顔を見つめた。


「私、あの夜に自分を殺したつもりだった。……でも、和真くんが私を描いてくれていた」


 彼女の指先が、紙の凹凸を確かめるようにゆっくりと動く。


「この絵の中の私は、生きてる。……すごく苦しそうだけど、確かに生きてるわね」


「今の君の方が、ずっと生き生きとしているよ。その土のついた指先も」


 和真は、結衣の泥が残る手を、自分の手でそっと包み込んだ。


「和真くん。私……もう一度、筆を握るあなたの隣にいたい」


「ああ。僕も、君という光がなければ、何を描けばいいのか分からないんだ」


 結衣は、短く刈り揃えられた自分の頭を、和真の肩に預けた。


「私の髪、いつかまた、あなたにかしてもらえる日が来るかしら」


「毎日梳かすよ。……ミリ単位で伸びていくその時間を、僕が全部記録する」


 結衣は、今日初めて、少女のような無垢な笑い声をこぼした。


「ふふ、そんなの退屈じゃない。……でも、あなたなら本当にやりそうね」


「退屈なことなんて、一つもないさ。君と一緒にいられるなら」


 二人の間に流れる時間は、かつての「救済」という重圧から解き放たれていた。


 窓の外では、一番星が静かに瞬き、二人を優しく見守っている。


この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

指摘や感想とか頂ければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ