第二章:フルカラーの停滞(27)
二人は、たった数キロメートルしか離れていない場所で、
お互いの存在を渇望しながら、同時に絶望していた。
和真は、自由になった右手で、枕元に置かれた一枚の紙に指を走らせた。
それは、退院の手続き書類ではなく、精神科医からの「診断書」だった。
彼は、自分が描いたあの絵のことを思い出していた。
絶望の中で描いた、短髪の結衣と、背景に絡みつく鎖の桜。
あの絵だけが、二人の愛が狂気ではなかったことを証明する唯一の欠片だった。
けれど、そのスケッチブックも、あのアパートのゴミと一緒に処分されたのだろう。
自分たちの生きた証は、誰の目にも触れることなく、
社会の「正常」という荒波に飲み込まれて消えてしまった。
夜が更けるにつれ、病棟の静寂はより一層深まっていく。
和真は、暗闇の中でかつての結衣の声を、幻聴のように聞き続けていた。
「和真くん、貴方は貴方のままで居て」
あの日、病室の外で初めて会った時の、あの透き通った声。
今の自分は、一体何者なのだろうか。
愛する人を失い、自分を失い、ただ白い壁に囲まれただけの肉塊。
和真は、閉ざされた瞼の裏に、もう一度だけあの満開の桜を思い描こうとした。
けれど、そこに現れたのは、ただ真っ黒に塗りつぶされた、底なしの深淵だった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
指摘や感想とか頂ければ励みになります。




