第二章:フルカラーの停滞(20)
「……和真くん、お腹空いたね」
結衣が、掠れた声で呟く。
彼女の髪は、無残に切り刻まれたまま、中途半端に伸びていた。
かつての艶やかな黒髪の面影はなく、鳥の巣のように乱れ、
彼女の美しさを無慈悲に奪い去っている。
和真は、僅かに残った貯金を崩して買ってきたパンを、黙って差し出した。
結衣はそれを、感情を失った機械のように口に運ぶ。
「ねえ、和真くん。私たち、このまま死んじゃうのかな」
「……いいよ、それでも。結衣と一緒なら」
和真は、彼女の短く、ザラついた髪を撫でた。
かつての絹のような感触はない。けれど、この壊れた結衣こそが、
今の自分に相応しい唯一の「世界」なのだという、歪んだ充足感があった。
外の世界では、新しい季節が巡り、人々は忙しなく未来へと進んでいる。
けれど、この部屋だけは、あの日散った桜の残像に囚われたまま、
ゆっくりと、確実に、腐食へと向かっている。
お互いを救おうとしたはずの手は、いつしか互いの首を絞め、
逃げ出すことさえ許さない、強固な枷へと変わっていた。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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