第二章:フルカラーの停滞(15)
深夜、病院の更衣室に、一人の女の姿があった。
結衣は鏡の前に立ち、自分の顔を、自分ではない何かを見るように凝視した。
彼女はゆっくりと手を上げ、頭を締め付けていたヘアピンを抜き取った。
一本、また一本。床に落ちる金属の音が、彼女の理性の崩壊を告げる。
ドサリと肩に落ちた黒髪。けれど、そこに自由の風は吹かなかった。
「……あはは」
乾いた笑いが、狭い更衣室に響いた。
彼女は化粧ポーチから、眉を整えるための小さな剃刀を取り出した。
そして、鏡の中の自分を見つめたまま、迷いなくその刃を、
誇りであり、呪縛であった自慢の黒髪の根元へと滑らせた。
ジョリ、という嫌な音が静寂を切り裂く。
艶やかだった黒い束が、力なく床へと落ちていく。
結衣は狂ったように剃刀を動かし続けた。
自分を縛っていたもの。和真が愛してくれたもの。
その全てを、この手で無残に切り裂いてしまいたかった。
数分後、そこには無惨に刈り取られた、異様な姿の女が立っていた。
彼女は切り落とされた自分の髪の山を踏みつけ、
何も持たずに、雨の降りしきる外の世界へとふらりと歩き出した。
もはや彼女の中に、誰かを救う心も、自分を愛する心も、残ってはいなかった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
指摘や感想とか頂ければ励みになります。




