第二章:フルカラーの停滞(12)
和真の新しい職場は、予想を遥かに超える劣悪な環境だった。
初日から終電までの残業。帰宅した和真を待っていたのは、
疲れ果ててソファで眠り込む結衣の姿だった。
彼女の膝の上には、小児看護の専門書が広げられ、
その端には、彼女が必死に堪えたであろう涙の跡が、乾いて波打っていた。
和真は、彼女を起こさないように、そっとその髪を撫でた。
「……ごめんな、結衣。僕がもっと、早く立てればよかったんだ」
和真の呟きは、誰にも届かずに夜の静寂に吸い込まれていく。
小児科に異動した結衣は、日々、幼い命が消えていく現実に摩耗していた。
和真もまた、職場で「使えない新人」として罵倒され、自尊心を削られていた。
二人は、相手を心配させたくないという一心で、
家という名の密室で、お互いに「順調だ」という嘘を吐き続けた。
笑顔の裏で、心は叫び声を上げ、限界を知らせる悲鳴を上げている。
きつく結い上げた結衣の髪。
無理に締め上げた和真のネクタイ。
それは、二人を社会に繋ぎ止める命綱であると同時に、
自分たちの首をゆっくりと絞め上げる、死神の指先そのものだった。
地獄へのカウントダウンは、もう止めることができなかった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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