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第二章:フルカラーの停滞(9)


 その日の夕食。結衣はいつにも増して明るい声で、和真に語りかけた。


「ねえ、和真くん。私、来月から小児科に行くことになったの」


 箸を動かしていた和真が、驚いたように顔を上げた。


「え……? 急だね。どうして?」


「うーん、私のケアが丁寧だって、評価されたみたい。


 人手が足りないから、経験のある私に白羽の矢が立ったんだって」


 結衣は、自分でも驚くほど滑らかに嘘を吐いた。


 和真を安心させるための、そして自分を守るための、真っ赤な嘘。


「そうなんだ……。凄いじゃないか。結衣なら、子供たちにも好かれるよ」


 和真の安堵したような微笑みが、結衣の心臓を抉った。


 自分が吐いた嘘が、和真の重荷を少しだけ軽くしたのだという事実が、


 彼女に歪な満足感と、耐え難い自己嫌悪を同時に与える。


 結衣は、ヘアピンに指をかけ、一気に髪を解いた。


 パラリと落ちた黒髪が、食卓の灯りに照らされて不気味に蠢く。


「……髪、梳かしてくれる?」


 彼女の懇願は、もはや甘えではなく、溺れる者が藁を掴むような悲鳴だった。


 和真は戸惑いながらも、クシを手に取り、彼女の背後に回った。


 一筋ずつ、丁寧に。


 けれど、その指先に伝わるのは、以前のような命の輝きではなく、


 今にも千切れそうな、ギリギリの緊張感だけだった。



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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