第二章:フルカラーの停滞(6)
その夜、結衣はナースステーションの片隅で、一人、報告書を書いた。
周囲の同僚たちは、彼女と目を合わそうともしない。
「良い子ぶるからよ」「結局、自己満足なのよね」
隠そうともしない私語が背中に突き刺さる。
ようやく勤務が終わり、更衣室に入ると、彼女は鏡も見ずに座り込んだ。
指先が震えて、ロッカーの鍵がなかなか開かない。
彼女は自分の頭に手をやり、きつく結び上げた髪を、乱暴に解いた。
ピンが一本、床に落ちて高い音を立てる。
ドサリと肩に落ちた黒髪。
いつもなら、これが自由への解放であるはずだった。
けれど今の彼女には、この重い髪そのものが、
自分が犯した「罪」の象徴のように感じられた。
「……和真くん」
彼女は膝を抱えて、暗い更衣室で一人、声を殺して泣いた。
私は彼を救っているんじゃない。
私はただ、壊れそうな誰かを利用して、
自分の正しさを証明したいだけの、醜い怪物なんじゃないか。
心の中のバケツが、真っ黒な泥水で溢れかえっていく。
このまま家へ帰れば、和真にこの泥をぶつけてしまうかもしれない。
彼女は震える手でスマートフォンを取り出し、
和真からの「駅で待ってるよ」というメッセージを見つめた。
その優しさが、今の彼女には何よりも恐ろしく、残酷な毒に思えた。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
指摘や感想とか頂ければ励みになります。




