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第二章:フルカラーの停滞(4)


 その日の心療内科病棟は、朝から不穏な空気に包まれていた。


 低気圧のせいか、あるいは連鎖する不安のせいか、


 患者たちの苛立ちがナースステーションまで波のように押し寄せてくる。


「鈴木、二〇八号室の高木さん、また不穏よ。あなたが担当でしょ」


 先輩看護師が、投げやりな口調で指示を出す。


 高木は、重度のうつ病を患っている五十代の男性だった。


 かつての和真と同じように、仕事ですべてを失い、


 今は誰に対しても心を閉ざしている。


 結衣は「わかりました」と短く答え、いつものように髪をきつく結い直した。


 それは彼女にとって、自分という個を消し、


 無機質な「看護」という装置に成り代わるための合図だった。


 病室に入ると、高木はベッドの上で丸まり、死んだような瞳をしていた。


「高木さん、お薬の時間ですよ。少しだけ、身体を起こせますか?」


 結衣は努めて穏やかな声で語りかける。返事はない。


 彼女は高木の傍らに座り、その痩せ細った手に、そっと自分の手を重ねた。


「……大丈夫ですよ。私が、ずっとここにいますから」


 本来、看護師が特定の患者に過剰な約束をすることは禁忌だ。


 けれど、今の結衣には、その境界線が見えなくなっていた。


 家で和真を救っているという全能感が、


 彼女のプロとしての理性を、少しずつ侵食していたのだ。



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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