第二章:フルカラーの停滞(3)
一方、病院に到着した結衣は、ナースステーションに入るなり、逃げ場のない「柵」の中に身を投じていた。
「鈴木さん、昨日言った資料、まだできてないの?」
すれ違いざま、不機嫌そうな医師から声をかけられる。
「申し訳ありません。緊急の入院対応が入ってしまい、今すぐ仕上げます」
「要領が悪いのよ。和真くん……あ、佐藤さんだっけ?
あの患者が退院してから、あんた、集中力落ちてんじゃないの?」
医師の心ない言葉に、結衣さんは一瞬だけ指先を震わせた。
和真との関係が周囲に疑われているわけではない。
けれど、「救った患者」との接触が禁じられているこの世界で、
彼と暮らしているという事実は、彼女にとって常に背負い続ける爆弾のようなものだった。
「……関係ありません。私の責任です」
彼女は深く頭を下げ、ステーションの奥へと向かった。
同僚たちの冷ややかな視線が背中に突き刺さる。
家では和真を支え、職場では罵倒と孤独を耐え忍ぶ。
彼女のバケツは、すでに溢れんばかりの泥水で満たされていた。
それでも彼女が倒れずにいられるのは、
家に戻れば、自分の長い髪を解いてくれる「彼」がいるから。
その「救い」が、同時に彼を追い詰めていることには、
まだ二人とも、気づかないふりをしていた。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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