第二章:フルカラーの停滞(1)
新しい生活は、朝食の匂いと共に始まった。
六畳二間の小さなアパート。
僕が独りで住んでいた頃は、ただ眠るためだけの灰色の箱だったその場所が、
結衣さんが来てからは、驚くほど多種多様な色で溢れかえっている。
ベランダに干された色とりどりの洗濯物。
キッチンに並ぶ、二つの揃いのマグカップ。
そして、朝の光を浴びて鏡の前で髪を整える、結衣さんの後ろ姿。
「和真くん、お味噌汁、少し味薄かったかな?」
キッチンから顔を出した彼女は、まだ髪を下ろしたままだ。
仕事に行く直前まで、彼女は「鈴木看護師」ではなく、僕だけの「結衣」でいてくれる。
「いや、ちょうどいいよ。……美味しい」
僕は焼き魚を口に運びながら、心からの言葉を口にする。
一ヶ月前まで、僕の朝食はコンビニの冷めたおにぎりとエナジードリンクだった。
それに比べれば、今の生活は奇跡のような幸福に満ちている。
「よかった。……あ、もうこんな時間。急いでまとめなきゃ」
時計を見た彼女が、慌ててヘアピンとゴムを手に取る。
さっきまで柔らかく揺れていた彼女の黒髪が、
手際よく、そして隙間なく頭の上にまとめ上げられていく。
彼女の表情が、一瞬で「プロの顔」へと切り替わる。
その瞬間、僕は自分だけがこの温かな部屋に取り残されるような、
微かな疎外感を覚えるのだった。
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この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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