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俺は君にとって価値があり、君は俺にとって価値がある。俺も新品じゃないし君もマリアじゃない。つまり誰かが一度は要らないと判断した存在だ。
そいつがどうにかこうにか呼吸をして生き永らえて、その結果としてここにいる訳だ。愛してるって?奇遇だな、俺もだよ。その指輪を見せてくれ。よく磨かれているね。綺麗だ。指輪じゃない、君の指の話だよ。
指輪はその形をしているから価値がある。金槌で叩いて変形したそれは同じ物質であっても価値が無い。まぁ、したり顔の先端芸術屋がやればそれなりの値段になるのだろうが。
車も同じだ。剥がしてパーツにしたら買う奴は少ない。価値の減少が発生するからだ。
指輪はその形であるが故に価値がある。デザインに価値を付与するブランドがあり、そのブランドが付与する価値を共通認識として持っている人間の間ではさらに価値が付く。だから形状を保っていなければならない。その金属物質に価値を見出している訳ではないからだ。
つまり俺が君に与えた指輪や、君が俺につけたチョーカーの価値はそこにある。その指輪やチョーカーに付属する思い出(海の見えるレストラン?いや、あれは美術館の帰り道にある公園だったはずだ)は俺たちだけのものでしかなく、それは金銭的な価値には変換されない。
俺や君を憎む存在からすると、金を出してそれを破壊できるならやるかも知れない。ただそれは金銭的な価値とは呼べない。欲しいのは破壊と言う結果であり、物質や記憶、思い出の類では無いんだ。




