風が地球を運ぶ
掲載日:2025/11/01
突風がこの街の建物を次々に破壊していった。
高層ビルも病院も、何もかもが宙に舞った。
空にはコンクリートの粉塵と川や湖の水しぶきが、まるで壁のように飛んでいく。
動物も植物も人間も、抗うすべは何もない。
しかし、不思議なことにその生き物たちに外傷はなかった。
風が身体を守り、ありとあらゆる衝撃から生命を守っている。
どこまでも、どこまでも突風はすべてを運んだ。
風の速さは、もう時間の概念を追い越していた。
そして、すべてのものは一か所に集まっていく。
地球が何度も風に撫でられるうち、人々は気づいた。
「太陽から、遠ざかっている」
地球の重心は緩やかに偏り始め、
ゆっくりと太陽系から離脱していった。
風が地球を運ぶ。
木星も土星も地球を見送り、
空は見たことのないほど美しい惑星で彩られた。
しかし、急激な寒気は生物たちを襲った。
けれどそれに呼応するように、
何億年も太陽の熱を蓄積した月は、
胸の奥に灯をともすように熱を放ち始めた。
地球は宇宙を旅する。
生命を原動力に風に乗って。
生き物たちは問いかける。
「どこへ行くのか」と。
けれど地球は答えない。
ただ、生きるように、宇宙をまっすぐ進んでいく。




