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円卓の女王 佐伯静子の場合その2

円卓の女王たちは、それぞれ異なる「強さ」を持っている。 今回は、佐伯静子――政略を司る女王の、もう一つの顔が描かれる。 阿久津との邂逅に筆が取られた前回とは打って変わって、今回は彼女の“えぐい”実力が本領を発揮する。 円卓が動くとき、静子はいつも一歩先を見ている。 その冷静さと政治力が、物語を静かに、しかし確実に動かしていく。

静子の父と祖父は、丸の内界隈の主――五菱商事の重鎮であり、政財界にも隠然たる影響力を持つ。 静子自身も一流の政治学者として知られ、円卓では政略面を担当している。 今回も、上層部からのバックアップを取り付けるなど、彼女の手腕は健在だ。


しかも、ボランティア(?)とサバイバルイベントを配置することを提言したのも、彼女だった。

「あの人たちが動く前に、こちらが動いておくべきなの。そうすれば“偶然”に見えるから。」


阿久津だけは、その滑稽さに思わず笑ってしまったが、他の三名はその悪辣さに震えを感じていた。


阿久津詩織を除くと、最後の一人である熊谷真美は、思わず「黒い…」と口にしてしまい、静子の氷の視線を浴び、思わず口をつぐんだ。。


こうして、東北義勇軍からの内部情報は「カリスマ」「女コング」の横田恵が入手し、上司の許可も得て彼女の信奉者で非番の隊員を各地に配置することが出来たし、静子は政治力を駆使して直前まで情報を封鎖し続けた。信頼できる大臣、議員には、十分な根回しを父と祖父に行わせることも当然であった。


熊谷真実は後述するが、SNS界とIT業界で「ヒメ」とも「発想キチネキ」とも呼ばれている影響力で、サバゲーイベントの大量集客と「ガチ勢」(海外助っ人含む)のチーム配置、SNSのトレンド誘導を行っている。


阿久津詩織は、目立たないが彼女自身と実家のパイプを使った工作を指示し続けていた。


佐伯静子が電話を終えると、三人に向かって話し出す。

「この際だから、あの総理総裁も含め、中朝シンパにはご退場いただく方向性らしいわ」

横田恵が、思わずガッツポーズを作る。よほど、鬱憤が溜まっていたのだろう。

「SNSでも、当然その流れです」と、熊谷真実が付け加える。


「ちょっと後悔してもらうことに、なるわね」

最後に詩織が締めくくる。

彼女の場合は、暗部を司る関係者が居るので冗談には聞こえない。


「それなら、この人の場合は、この情報なんだけど・・・」

臆することなく、嬉々として具体案を出してくる静子。

「詩織ねえと静子姉と、怖さの質は違うのに、闇を感じるのは静子姉って…不思議だよね」

「それはちょっと、理由はわかるけど…」

残りの二人は、出来得る限りの小声で語り合うのだった。

佐伯静子の“えぐさ”は、感情ではなく構造で動くところにある。 彼女が円卓に座る理由は、誰よりも冷静に、誰よりも遠くを見ているから。 そして、彼女の背後には、父と祖父という“丸の内の主”たちが控えている。 今回はその一端を描いたが、まだ彼女の全貌は見えていない。 次回、円卓の空席がまた一つ埋まる。 それぞれの女王が、何を背負い、何を選び取ってきたのか――その答えは、少しずつ明らかになっていく。

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