虚構の帝国に落ちる影 — ロシア極東の静かな崩れ
ロシアは巨大な国だ。
だが、その巨大さは時に脆さでもある。
極東は広すぎ、
中央は遠すぎ、
兵力は足りず、
経済は疲弊し、
政治は混乱し、
情報は歪み、
忠誠は揺らぐ。
そして今、
モスクワ防衛のために極東から兵力が引き抜かれ始めた。
それは、
ロシアの内部崩壊が静かに始まった
という合図だった。
◆ ロシア極東・軍管区司令部
薄暗い司令室。
地図の上には赤い線が引かれ、
極東からモスクワへ向かう部隊の移動が示されていた。
司令官が低い声で言った。
「……本当に、極東から引き抜くのか?」
参謀が苦い顔をする。
「中央からの命令です。
モスクワの防衛が最優先だと。」
司令官は机を叩いた。
「極東はどうなる!
中朝人民共和国との国境は不安定だぞ!」
参謀は沈黙した。
◆ モスクワ・国防省
国防省の会議室では、
焦りと混乱が渦巻いていた。
「中朝国が弱っている今こそ、極東を固めるべきだ!」
「いや、モスクワが危ない!」
「FSBが粛清を始めた!」
「オリガルヒが逃げている!」
「軍の忠誠が揺らいでいる!」
誰も状況を把握できていなかった。
そして、
極東の部隊が“トロール”と“オーク”と呼ばれるほど荒れた兵士で構成されていることも、
中央は理解していなかった。
◆ 中朝人民共和国の影
以前、中朝国はロシア極東に対して
“友好”という名の圧力をかけていた。
経済協力
資源取引
軍事演習
国境の共同管理
だが、影の日本が中朝国の虚構を暴き、
国際包囲網を作り上げたことで、
中朝国は極東への影響力を急速に失った。
その結果――
ロシア極東は“支え”を失い、
内部の不満が一気に噴き出した。
◆ 秋田・川反の料亭
阿久津博は、
ロシア極東の兵力移動の報告を聞きながら、
静かに冷や酒を口に運んだ。
詩織が言う。
「ロシアが極東から兵力を引き抜いています。
モスクワ防衛のためだとか。」
阿久津はため息をついた。
「あいつら、また目先のことしか見てないな。」
詩織が首を傾げる。
「極東が空くと、中朝国が……?」
阿久津は笑った。
◆ ロシア極東・兵士たち
兵士たちは、
モスクワへの移動命令を聞いてざわついていた。
「なんで俺たちが中央の尻拭いを?」
「極東はどうなるんだ?」
「中朝国がまた国境で動いたらどうする?」
「FSBの粛清が怖い……」
彼らは忠誠心ではなく、
環境と事情で立場を分けられただけだった。
そして、
その不満は静かに積み重なっていった。
ロシアは、モスクワ防衛のために極東から兵力を引き抜いた。
それは、国家の内部崩壊が静かに始まった合図だった。
中朝人民共和国は、影の日本の文化・情報・経済の侵食によって
国民の心が揺らぎ始めていた。
ロシアは極東を守れず、
中朝国は国民を守れず、
世界は静かに変わり始めていた。
影の日本は、国家を壊さない。
壊せば混乱が生まれるからだ。
望むのは――
国家の心を変えること。
影の戦争は、まだ続く。
だがその影は、未来を壊すためではなく、
未来を作るために落ちている。




