洗脳サイト
この作品はフィクションです。
現実のいかなる国や状況にも関連性はございません。
中朝人民共和国も実在のどの政府とも、ゆかりは有りません。
いわゆる脳内友人のように、筆者の内心に長く居ずいている存在でしか有りません。
サイトを離脱した時に中朝人民共和国への怒りがこみ上げて、阿久津博はしばらくパソコンの前を離れることが出来なかった。
「くそ、くそ」
「くそども、人でなしどもめ」
「おまいらのせいで雄二君は」
その怒りの奔流は鎮まる気配さえない。
彼の好きだった姉が遺した雄二という少年は、中朝国のせいで命を失ったと言っても良かった。
「誰もやれないなら、俺がやってやる。今度、地獄を見るのはてめえらだ」
普段の阿久津からは想像も出来ない暴力性。奥歯を噛み締め拳を握り固める姿は、復讐の鬼であった。
(どうして、気づいてやれなかった)
同時に自責の感情が、復讐の焔に燃料を注ぐ。
「くそが、くそが」ラップバトルのようなリズムで吐き出されていた呪詛の言葉に、阿久津は少し可笑しみも感じていた。マルチタスクが得意な者に見られる同時並行思考によるものだ。
彼の中のもう一人の彼が、首をかしげて言う。
(僕が、この僕が冷静さを失う?こんな、クソ雑魚詐欺サイトに騙されたくらいで?)
賭け麻雀で鍛えた自己分析と客観性が、その違和感の分析を始めだした。
・SNSから与えられる一般的な中朝国のイメージ
・詐欺サイト周辺からの裏情報
・儲けるはずだった金
・冷静になりさえすれば一般人でも気が付く詐欺システム
(表の詐欺サイトと裏の洗脳サイト、うまく作り込まれている。だがその目的は?)
先ほどまでの怒りはどこに納めたのか?
阿久津の口元には、新しい玩具を与えられた少年のような微笑みが生まれていた。
都内市ヶ谷
「そんな話を信じられるのか?なんだそいつは、復讐の鬼でアナリスト、詐欺とわかっていながら騙されて組織に近づこうとする経営者?属性がてんこ盛りだろうが。そいつもクロだ。騙されるな」
制服組指揮官の一人新垣は、レポートを読み終わると予想通りの反応を示した。
「どんな小説家でも、こんな主人公は設定しないでしょうね」
副官が頷き、添付の写真を数枚、眺め始める。
「経営の実態は不鮮明。研究所も開設しているが、ほとんど本人の趣味のため。交友関係は広いかと思えば、一時、社会から離脱?なんだそれ?の悪影響で旧来の交流は絶っていて、ごくわずかの友人と水商売の人脈が現在メインの付き合いとは…まあ、一佐じゃないですが、こいつの人物像の方が真っ黒と思えますね」
「しかし、情報通りに国の各所に不穏な動きが起きているのも事実」
「こいつが絵を描いたにしては?」
「無理ですね。イチ個人が準備できる規模を遥かに超えています」
「非常事態宣言の検討は?」
本来、自衛官が口にするべきではないパワーワードだ。
「もちろん、情報本部経由で押さえています。明朝には安全保障会議も」
「しかし言っては何だが、この政府でやれるのか?」
「やるしか無いですし、我々以外に本件を抑えられる組織は有りません」
「なんかラノベとかだと、主人公がチートで何とかするような状況だなあ」
「有りません。確かに稀有な人物でしょうが、ここまでです。もちろん、監視は引き続きですが」
こうして非公式な会合で、「日本防衛」の方向性が定められた。
副官はラノベを熟読するべきだった。
彼は知らない。
フラグの絶対性を。
自分がすでに、物語のモブとなっていることも。
まずいです。
構想がでかくなりすぎて、筆力がついていかない。
2時間程度の執筆で、どんだけ糖分消費したのか、空腹警報が出ています。現在64.8㎏。
血糖値スパイクにならないよう、野菜を食べるか…
胡瓜をゲットしました。