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自衛官の懺悔と中朝本国の決断

このエピソードでは、蜂起の初動に対応できた理由と、その裏にあった“情報の痛み”を描きます。 洗脳サイトの分析だけではなく、義勇軍に参加せざるを得なかった自衛官たちのリークが、事態の予測を可能にしました。 彼らの覚悟は、反逆ではなく“国を目覚めさせるための犠牲”でした。 そして、彼らの苦悩は、明治以降の軍人たちのそれと、何ら変わらないのかもしれません。

蜂起初日に阿久津らが対応できたのは、洗脳サイト等への分析もさることながら、義勇軍側に参加せざる負えない自衛官からのリークも大きかった。

横田恵の元には、かなり早い段階で中朝国の恫喝に抗えない立場の自衛官からの極秘情報が上がってきていた。阿久津の調査を加味すると、東北の巨魁と言われる南部敏行らの暗躍も有り、この度は実力行使に至るものと推測されていた。


個々の自衛官の事情は様々であったが、彼らに共通するのは「自分は反逆者になっても良い。しかし、この暴挙に日本が耐えられたら、危機感を持って政治も行政も動いてくれるのでは無いか」という国に殉ずる覚悟であった。


思えば軍人の蜂起は、明治以降もいくつか起きていたが、その根底には社会情勢に対するどうしようもない憤りがあった。それを誰かに利用されたことも有ったろう、社会の潮流を歪めてしまったことも有ったろう、しかし、その時その時の個人の思いは「防人」の一人として、どうにかしたいと言う絶望と愛国の志に支えられていたことに疑問は無い。


そして、この度の蜂起に参加せざるを得なかった者と、それを阻もうとした者たちの間に、国への忠誠心の多寡はほとんどなかった。 ただ、環境が、家族関係が、そしてそれぞれの事情が、彼らの立場を分かち隔てただけだった。


☆☆☆☆中朝国、副都☆☆☆☆

当然、情報は上に上がる。

そして、そこで変容し、政治的なスパイスを振りかけられることになる。

大将軍様のブレインは、すでに損切りの体制で有った。

偽装漁船の呼び戻し、潜水艦の公海への転進。

パズルのピースが一つ見つからない場合、それを無暗に探すよりは、パズル自体を机上に放置して時期を待つのがこの国の処世術であった。

また連邦を組む友邦も、サラミスライス戦略を得意とする、冒険を行わない国家である。

今回の失策もどこかに意味を見いだせれば、最高指導部の失敗とまではいかないであろう、


老練な政治将校たちが、会議室に入った瞬間、その予想は甘かったことが判明した。

大将軍の席が空位なのだ。

中堅の将校が嬉しそうに、高齢の将校らに告げる。

「大将軍様は、この度の作戦の成功、まあかの国での戦略リソースをずいぶん浪費しましたが、それなりに衝撃を与えたであろうことを殊の外お喜びになり、執行の皆様を慰労されることに指示が有りました」

廊下に大将軍直卒の隊員が続々と詰めだす様を見て、ある高齢の将軍は自分の行く末を正確に予想していた。


「総理総裁も変わるそうだな」

さらなる情報が大将軍の元に届いていた。

「まだ流動的ですが、現総理では、後始末を付けられないでしょう」

「あまりに、たやすい作戦と分析されていたな」

「はい、この総理と内閣であれば、押せば譲歩するであろうと」

「自衛隊も大したことが無いと言っていたが」

「それは、総力戦では我々に対抗することも難しい、ボランティア軍隊のようなものです」

「しかし。今回は?」

「日本に埋めていた奴らの戦闘力を見余っていたようですね。おそらく、我が国の最低レベルだのかと」

「ヤクザには勝てても、自衛隊は崩せなかったか」

大将軍の顔が曇り、ワイングラスを飲み干す。

「しかも非正規部隊だったと?」

「なぜ、彼らがそこで防衛線を構築していたか?どの所属かは調査中です」

大将軍にとっても不可解な進展で有った。責任は、ロートルどもに取らせるとしても、当初作戦に穴が有るようには彼も思っていなかったのだ。それほど、脆弱な政府を抱く隣国は無防備に思えた。


つまりは、美味しそうに見えたのだ。

北東北の一部でも割譲出来れば、最高だったが、何らかの政治条件との交換で撤退しても美味しい作戦で有ったはずだ。


何が、障害となったのか?

サバイバルゲームとの混淆?残念なことに中朝国の常識では、そのようなイベントに無許可で戦闘力の有る個人が参加するなど、想像の埒外で有った。そのため、イベントを主導したインフルエンサーへの調査も、その関係者である阿久津個人も調査対象にすらならなかった。


南部敏行も、たまたま襲撃を避けれただけとされ、他の作戦の大失敗の陰に埋もれてしまった。

と言うか、詳細なシナリオを描いた将校はすぐに存在すら失っていた。

「仕切り直しか」

大将軍は呟くが、遠く日本国の東北で二人の男が息巻いていたことは知らない。


「南部さん、まずは愚連隊系から純日本人化を始めるべきです」

「うーん、ケツ持ちのヤクザにも半島由来が多いからな」


「そこは暴力団の再編ですよ。実は家内が神農香具師系の伝手がありまして、こちらにちょっと便宜を図っていただければ?」

「いや、それは佐伯とか他の連中の範囲だな。申し訳ないが、儂の力なんぞ大宮駅で降りてどこに行けばいいか?わからない、程度のものだぞ」

「じゃ、五菱から頼んでみます」

阿久津と南部の悪だくみは夜半まで続いていた。


(あえて軍人とします)軍人の蜂起は、歴史の中で何度も繰り返されてきました。 利用され、歪められ、それでもなお、個人の思いは「防人」としての志に支えられていた。 今回の蜂起もまた、忠誠心の多寡ではなく、環境と事情が立場を分けただけ。 それでも、彼らの選択は、国を動かすための“痛み”だったのです。ところで今回の騒動は終結していません、中朝国が損切りの方針でも、国内勢力は簡単に踏みとどまれないということで。

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