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令和の赤ひげ先生と、十二所の攻防

とうとう、鹿角・大館方面でも戦闘が始まった。 実戦部隊を率いるのは、中朝国から身分を隠して潜入していた現役士官。 東北出身の若者たちは、歩哨程度しか任されず、発砲も部隊行動も未経験。 それでも、進軍には意味がある――当初の目的は、大館市の主要施設の占拠。 交渉のための人質確保だったはずが、皮肉にもその施設から負傷者を救うため、 現代の伝説が出動することになる。


令和の赤ひげ先生と呼ばれる医師・柳貞明。 彼は、哭く者に敵味方の境界を設けない。 戦場に響く銃声の中、命を救う者の物語が、今始まる。

東北義勇軍は一部を103号線バイパスを、主力を旧道十二所経由で進軍することに決定した。

なぜならバイパスは直線で進軍しやすい反面、民家が少なく山が迫っていてトラップの恐れが大きいと判断されたからである。一方、旧道はもともとの集落が有る以上、大規模な陥穽を設置することは無いと見なされた。

先遣部隊は複雑な街道(県道66号より別れ集落へのメインストリート)をスリーマンセル3組で侵入した。

撃たれたのは民家の屋根からだった、一気に負傷者が増え、反撃しようにも射線が通らない位置に敵は隠れたようだった。

「再編する。負傷者には衛生兵を付けて、待機。残りは威力偵察継続」

先任の士官が命令を発し、無事なものは物陰に隠れながら進んだ。

「おかしい。住民はどこだ」

違和感を感じたのは、やはり一番経験を積んでいる士官だった。

情報ではこの集落でも1500人程度の住民が居るはずだが、人影として見えるのは武装している者ばかりである。

「誘い込まれたか?」

彼は、この情報を後方に伝えるべきと通信を試みる。

無線は、何故か通じない。

携帯電話は?

通じた。「この集落は、すべてが罠になっている」

相手を確かめずに、彼は報告をした。

返答には間があった。

「それは、そうでしょ。そこのお年寄りたちは、今、温泉に出かけているの。だから、人影を見たら撃った方が良いけど。どちらの弾が、届くか?まあ、頑張ってみて!」

電話の相手は、聞いたことの無い女性の声だった。

「なんだこれは?」

彼は後方と完全に途絶された自分を知るに至った。



☆☆☆☆大館市立総合病院☆☆☆☆

ここに令和の赤ひげ先生と呼ばれる医師が居た。

故郷の三哲神社を尊崇するあまり自身も医者になった、という経歴を持つだけに反骨精神に富んだ名医と言うことになっている。

旧知の詩織からの依頼で、彼は往診の準備を整えていた。

トリアージ次第では、ドクターヘリと救急車の手配も辞さない覚悟は済ませていた。

「熊撃ちで銃創者多数とは、何が起きてるんでしょうね?」

男性の看護師が、器具を詰め込んだバッグを背負いながら、医師 柳貞明に尋ねる。

「何か、大規模なサバイバルゲームのイベントと輻輳して、誤射が起きているらしいよ」

ひげ面を歪めて、彼は困った表情を見せる。そう言いながらも、柳は詩織から明かされた事情はごまかして、負傷者発生の事実だけを病院に報告して非常態勢を取らせていた。

「先生も熊に間違われて、撃たれないようにしてくださいよ」

看護師は、冗談めかして、柳の風貌を指摘する。

確かに190㎝を超え、筋骨隆々の体型では、黒い服を着てはいけない人の範疇に入る。

「俺は刺客に逢わない限り大丈夫」

柳は、故事にちなんで自ら尊崇する先達と、同じ生き様への決意を露にする。

「さあ、いくぞ。けが人は哭いているだろう」

医療行為を描くのは、本当に難しい。 戦場という極限状態で、命を扱うということ。 それを物語にするには、技術も知識も、そして覚悟も要る。 …と、書いてしまったけれど、正直なところ、描けるかどうかは分かりません。


柳貞明という人物が、どこまで私の筆に付き合ってくれるか。 彼が「哭く者に境界はない」と言い切るその先に、 私がどんな場面を描けるのか――それは、これからの話です。


読者の皆さんが、彼の背中を見守ってくれるなら、 その声が、私の筆を支えてくれるかもしれません。

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